東京大学 文系 2006年度 第4問 解説
問題編
【問題】
$\theta$は、$0^{\circ} \lt \theta \lt 45^{\circ}$の範囲の角度を表す定数とする。$-1\leqq x \leqq 1$の範囲で、関数$f(x) = |x+1|^3 +|x-\cos 2\theta|^3 +|x-1|^3$が最小値をとるときの変数xの値を、$\cos\theta$で表せ。
【考え方】
問題をパッと見た段階では、絶対値が3つも入っていて場合分けが大変そう、という印象を受けます。しかし、範囲が限定されているので、見た目ほど大変ではありません。1つ目と3つ目の絶対値は、場合分けをすることなく外すことができます。
2つ目の絶対値は、通常であれば、場合分けをして外さないといけません。しかし、今の場合は「最小値をとるときのx」だけを考えればいいので、場合分けをしなくても計算することはできます。
$f(x)$の中に$\cos 2\theta$が入っているので、どこかで倍角の公式を使うというのもヒントになっています。
解答編
【問題】
$\theta$は、$0^{\circ} \lt \theta \lt 45^{\circ}$の範囲の角度を表す定数とする。$-1\leqq x \leqq 1$の範囲で、関数$f(x) = |x+1|^3 +|x-\cos 2\theta|^3 +|x-1|^3$が最小値をとるときの変数xの値を、$\cos\theta$で表せ。
【解答】
$-1\leqq x \leqq 1$の範囲では、
\begin{eqnarray}
|x+1|^3 +|x-1|^3
&=&
(x+1)^3 +(1-x)^3 \\
&=&
(x^3+3x^2+3x+1) \\
& & +(-x^3+3x^2-3x+1) \\
&=&
6x^2 +2
\end{eqnarray}となる。これは、$x\leqq 0$の範囲で単調減少、$x\geqq 0$の範囲で単調増加である。
また、$y=|x-\cos 2\theta|^3$のグラフは$y=|x|^3$のグラフを$x$軸方向に$\cos 2\theta$移動したものであるから、$x\leqq \cos 2\theta$の範囲で単調減少、$x\geqq \cos 2\theta$の範囲で単調増加である。
以上から、$f(x)$の最小値をとるときの$x$の値は、$0$以上 $\cos 2\theta$以下となる($0^{\circ} \lt \theta \lt 45^{\circ}$なので、$\cos 2\theta$は正である)。
$0 \leqq x \leqq \cos 2\theta$のとき、$f(x)$は
\begin{eqnarray}
f(x)
&=&
(\cos 2\theta -x)^3 +6x^2 +2 \\
&=&
-x^3 +3(\cos 2\theta)x^2 -3(\cos^2 2\theta)x +\cos^3 2\theta +6x^2 +2 \\
&=&
-x^3 +3(\cos 2\theta +2) x^2 -3(\cos^2 2\theta)x +\cos^3 2\theta +2 \\
\end{eqnarray}となるので、
\begin{eqnarray}
f'(x)
&=&
-3x^2 +6(\cos 2\theta +2)x -3\cos^2 2\theta \\
&=&
-3 \left\{ x^2 -2(\cos 2\theta +2)x +\cos^2 2\theta \right\} \\
\end{eqnarray}となる。
よって、$f'(x)=0$の解は
\begin{eqnarray}
x
&=&
\cos 2\theta +2 \pm \sqrt{ (\cos 2\theta +2)^2 - \cos^2 2\theta } \\
&=&
\cos 2\theta +2 \pm \sqrt{ 4\cos 2\theta +4 } \\
&=&
(2\cos^2\theta -1) +2 \pm 2\sqrt{ (2\cos^2\theta -1) +1 } \\
&=&
2\cos^2\theta +1 \pm 2\sqrt{ 2 } \cos\theta \quad\cdots (A) \\
&=&
( \sqrt{ 2 } \cos\theta \pm 1 )^2 \\
\end{eqnarray}となる(複合同順。また、(A)では、$\cos\theta$が正であることを用いた)。
ここで、$\sqrt{ 2 } \cos\theta +1 \gt 1$なので、$(\sqrt{ 2 } \cos\theta + 1)^2$は$\cos 2\theta$以下となることはない。
一方、$( \sqrt{ 2 } \cos\theta -1 )^2$については、(A)を使って
\begin{eqnarray}
& &
\cos 2\theta -(2\cos^2\theta +1 -2\sqrt{ 2 } \cos\theta) \\
&=&
(2\cos^2\theta -1) -2\cos^2\theta -1 +2\sqrt{ 2 } \cos\theta \\
&=&
2\sqrt{ 2 } \cos\theta -2 \\
&=&
2\sqrt{ 2 } \left(\cos\theta -\frac{1}{\sqrt{2} }\right) \\
\end{eqnarray}であり、$0^{\circ} \lt \theta \lt 45^{\circ}$だからこの値は正である。よって、$0 \leqq ( \sqrt{ 2 } \cos\theta -1 )^2 \leqq \cos 2\theta$がなりたつ。
以上から、$0 \leqq x \leqq \cos 2\theta$の範囲での増減表は次の通りとなる。
\begin{array}{c|ccccc}
x & 0 & \cdots & ( \sqrt{ 2 } \cos\theta -1 )^2 & \cdots & \cos 2\theta \\
\hline
f'(x) & & - & 0 & + & \\
\hline
f(x) & & \searrow & & \nearrow &
\end{array}
よって、$f(x)$が最小値をとるときの$x$の値は、$( \sqrt{ 2 } \cos\theta -1 )^2$となる。
【解答終】
【解説】
序盤で、「$0 \leqq x \leqq \cos 2\theta$の範囲だけを考えればいい」ことを示していますが、これがなければ、$|x-\cos2\theta|$の絶対値は場合分けをして外さなければいけません。ただ、この範囲以外で最小値をとらないことはすぐに分かるので、省略できる計算は省略した方がいいでしょう。
$\cos$が入っていると計算しにくいので、別の文字で置き換えて計算してもいいですね。ただ、途中で倍角の公式も使うので、どこかのタイミングで$\cos$に戻さないといけません。別の文字で置き換えると、倍角の公式に気づきにくくなる可能性がありますね。