東京大学 文系 2006年度 第3問 解説
問題編
【問題】
nを正の整数とする。実数$x,y,z$に対する方程式\[ x^n+y^n+z^n = xyz \quad \cdots ① \]を考える。(1) $n=1$のとき、①を満たす正の整数の組$(x,y,z)$で、$x\leqq y \leqq z$となるものをすべて求めよ。
(2) $n=3$のとき、①を満たす正の実数の組$(x,y,z)$は存在しないことを示せ。
【考え方】
(1)の$x+y+z=xyz$は、左辺は1乗で右辺は3乗なので、各数字が大きいときに右辺がすごく大きい値になります。よって、ある程度小さい数字じゃないといけないことが分かります。右辺が大きくなれないことを利用して、制約を考えましょう。
逆に、(2)の$x^3+y^3+z^3=xyz$は、$x,y,z$の最大値が、左辺には3乗の形で登場するのに、右辺では1乗しかありません。なので、左辺の方が大きくなりやすいことが分かります。左辺が大きくなれないことを利用して、制約を考えましょう。
解答編
【問題】
nを正の整数とする。実数$x,y,z$に対する方程式\[ x^n+y^n+z^n = xyz \quad \cdots ① \]を考える。(1) $n=1$のとき、①を満たす正の整数の組$(x,y,z)$で、$x\leqq y \leqq z$となるものをすべて求めよ。
【解答】
(1)
$x+y+z=xyz$ と $x\leqq y \leqq z$から、
\begin{eqnarray}
xyz = x+y+z \leqq z+z+z=3z
\end{eqnarray}なので、$xy\leqq 3$となる。$x\leqq y$より、$(x,y)=(1,1)$, $(1,2)$, $(1,3)$の3通りしかない。
$(x,y)=(1,1)$のとき、$2+z=z$ なのでこれを満たすzはない。
$(x,y)=(1,2)$のとき、$3+z=2z$ なので、$z=3$となる。
$(x,y)=(1,3)$のとき、$4+z=3z$ なので、$y \leqq z$を満たすzはない。
以上から、$(x,y,z)=(1,2,3)$のみ。
【解答終】
【解説】
$x+y+z$に比べ、$xyz$は大きくなりやすいため、これを利用した制約を考えています。上の解答では、$xyz\leqq 3z$の部分ですね。ここのおかげで、候補がかなり絞られます。
一旦候補を絞れば、あとはしらみつぶしに考えていけばOKです。
【問題】
(2) $n=3$のとき、①を満たす正の実数の組$(x,y,z)$は存在しないことを示せ。
【解答】
対称性から、zが一番大きいとしてよい。
$x+y+z=xyz$ と $x\leqq z$ と $y \leqq z$から、
\begin{eqnarray}
x^3+y^3+z^3 = xyz \leqq z\cdot z\cdot z = z^3
\end{eqnarray}なので、$x^3+y^3 \leqq 0$となる。しかし、これを満たす正の実数$x,y$は存在しない。
よって、条件を満たす$(x,y,z)$は存在しない。
【解答終】
【解説】
$xyz$に比べ、$x^3+y^3+z^3$は大きくなりやすいため、これを利用した制約を考えています。上の解答では、$x^3+y^3+z^3 \leqq z^3$の部分ですね。左辺が大きすぎるので、これを満たすものがないことが示せます。