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京都大学 理学部特色入試 2023年度 第2問 解説

(2022年11月に行われた特色入試の問題です。2023年に行われた特色入試の問題はこちら

問題編

問題

 2つの整数 $m$ と $n$ が $0\lt m \lt n$ を満たすとする。また、関数 $H(x)$ を\[ H(x)=-x\log x-(1-x)\log(1-x) \quad(0\lt x\lt 1) \]と定める。ただし、 $\log$ は自然対数を表す。また、 $e$ を自然対数の底とする。以下の設問に答えよ。

(1) ${}_n\mathrm{C}_m \leqq e^{nH\left(\frac{m}{n}\right)}$ が成り立つことを示せ。

(2) $0\leqq k \leqq n$ を満たす任意の整数 $k$ に対して\[ {}_n\mathrm{C}_k \left(\frac{m}{n}\right)^k \left(1-\frac{m}{n}\right)^{n-k} \leqq {}_n\mathrm{C}_m \left(\frac{m}{n}\right)^m \left(1-\frac{m}{n}\right)^{n-m} \]が成り立つことを示せ。

(3) ${}_n\mathrm{C}_m \geqq \dfrac{1}{n+1} e^{nH(\frac{m}{n})}$ が成り立つことを示せ。

考え方

(1)は、左辺に二項係数、右辺に指数関数・対数関数という、あまり見ない組み合わせですが、指数関数と対数関数を組み合わせているのだから、実は対数が残らない形に変形できます。また、(2)の式を見ると、似たパーツが見つかるので、(2)もヒントに使えるでしょう。

(2)は、 $k$ を動かしたときに値がどう変わるかを考えます。最大になるのは $k=m$ のときだと問題文が教えてくれているので、それをヒントに考えていきます。

(3)は、(1)とは逆向きの不等式ですが、(1)(2)の誘導にうまくのっていれば示しやすいでしょう。ただ、(1)(2)をちからわざで解いた場合は、(3)もちからわざで解くしかなさそうです。

全体的に、 $n,m,k$ と3つ文字が出てきて、式の形もややこしいため、方針を間違うと計算がかなりめんどうになります。

解答編

問題

 2つの整数 $m$ と $n$ が $0\lt m \lt n$ を満たすとする。また、関数 $H(x)$ を\[ H(x)=-x\log x-(1-x)\log(1-x) \quad(0\lt x\lt 1) \]と定める。ただし、 $\log$ は自然対数を表す。また、 $e$ を自然対数の底とする。以下の設問に答えよ。

(1) ${}_n\mathrm{C}_m \leqq e^{nH\left(\frac{m}{n}\right)}$ が成り立つことを示せ。

解答

\begin{eqnarray} & & nH\left( \frac{m}{n} \right) \\[5pt] &=& n\left\{ -\frac{m}{n}\log \frac{m}{n} -\left(1-\frac{m}{n}\right) \log\left(1-\frac{m}{n}\right) \right\} \\[5pt] &=& -m\log \frac{m}{n} -(n-m)\log\left(1-\frac{m}{n}\right) \\[5pt] \end{eqnarray}なので、 \begin{eqnarray} & & e^{nH\left(\frac{m}{n}\right)} \\[5pt] &=& e^{ -m\log \frac{m}{n} -(n-m)\log\left(1-\frac{m}{n}\right) } \\[5pt] &=& e^{ -m\log \frac{m}{n}} \cdot e^{ -(n-m)\log\left(1-\frac{m}{n}\right) } \\[5pt] &=& \left(\frac{m}{n}\right)^{-m} \cdot \left(1-\frac{m}{n}\right)^{-(n-m)} \\[5pt] \end{eqnarray}となるので \begin{eqnarray} & & \frac{ {}_n\mathrm{C}_m}{ e^{nH\left(\frac{m}{n}\right)} } \\[5pt] &=& {}_n\mathrm{C}_m \left(\frac{m}{n}\right)^{m} \left(1-\frac{m}{n}\right)^{n-m} \\[5pt] &\leqq & \sum_{k=0}^n {}_n\mathrm{C}_k \left(\frac{m}{n}\right)^{k} \left(1-\frac{m}{n}\right)^{n-k} \\[5pt] &=& \left\{ \frac{m}{n} + \left(1-\frac{m}{n}\right) \right\}^n \\[5pt] &=& 1 \end{eqnarray}より、\[ {}_n\mathrm{C}_m \leqq e^{nH\left(\frac{m}{n}\right)} \]が成り立つ。

((1)終)

解答編 つづき

問題

(2) $0\leqq k \leqq n$ を満たす任意の整数 $k$ に対して\[ {}_n\mathrm{C}_k \left(\frac{m}{n}\right)^k \left(1-\frac{m}{n}\right)^{n-k} \leqq {}_n\mathrm{C}_m \left(\frac{m}{n}\right)^m \left(1-\frac{m}{n}\right)^{n-m} \]が成り立つことを示せ。

解答

\[ f(k)={}_n\mathrm{C}_k \left(\frac{m}{n}\right)^k \left(1-\frac{m}{n}\right)^{n-k} \]とおくと、 $0\leqq k \lt n$ のとき、
\begin{eqnarray} & & \frac{f(k+1)}{f(k)} \\[5pt] &=& \frac{ {}_n\mathrm{C}_{k+1} \left(\frac{m}{n}\right)^{k+1} \left(1-\frac{m}{n}\right)^{n-k-1} } { {}_n\mathrm{C}_k \left(\frac{m}{n}\right)^k \left(1-\frac{m}{n}\right)^{n-k} } \\[5pt] &=& \frac{ \frac{n!}{(k+1)!(n-k-1)!} \cdot \left(\frac{m}{n}\right) } { \frac{n!}{k!(n-k)!} \cdot \left(1-\frac{m}{n}\right) } \\[5pt] &=& \frac{ (n-k) \cdot m } { (k+1) \cdot (n-m) } \\[5pt] &=& \frac{n-k}{n-m} \cdot \frac{m}{k+1} \\[5pt] \end{eqnarray}となる。

ここで、 $k\lt m$ のとき
\begin{eqnarray} \frac{n-k}{n-m} \gt 1,\ \frac{m}{k+1} \geqq 1 \end{eqnarray}より、積は $1$ より大きいから\[ f(k+1) \gt f(k) \]が成り立つ。また、 $k\geqq m$ のときは \begin{eqnarray} \frac{n-k}{n-m} \leqq 1,\ \frac{m}{k+1} \lt 1 \end{eqnarray}より、積は $1$ より小さいから\[ f(k+1) \lt f(k) \]が成り立つ。

以上より
\begin{eqnarray} & & f(0) \lt f(1) \lt f(2) \lt \cdots \lt f(m-1) \lt f(m) \\[5pt] & & f(m) \gt f(m+1) \gt \cdots \gt f(n) \\[5pt] \end{eqnarray}が成り立つので、 $0\leqq k \leqq n$ となる整数 $k$ に対して\[ f(k)\leqq f(m) \]が成り立つ。よって、\[ {}_n\mathrm{C}_k \left(\frac{m}{n}\right)^k \left(1-\frac{m}{n}\right)^{n-k} \leqq {}_n\mathrm{C}_m \left(\frac{m}{n}\right)^m \left(1-\frac{m}{n}\right)^{n-m} \]が示せた。

((2)終)

解答編 つづき

問題

(3) ${}_n\mathrm{C}_m \geqq \dfrac{1}{n+1} e^{nH(\frac{m}{n})}$ が成り立つことを示せ。

解答

(1)での計算から、\[ \frac{ {}_n\mathrm{C}_m}{ e^{nH\left(\frac{m}{n}\right)} } = {}_n\mathrm{C}_m \left(\frac{m}{n}\right)^{m} \left(1-\frac{m}{n}\right)^{n-m} \]となる。この右辺は、(2)の右辺と一致するので、$0\leqq k \leqq n$ を満たす整数 $k$ に対して\[ {}_n\mathrm{C}_k \left(\frac{m}{n}\right)^k \left(1-\frac{m}{n}\right)^{n-k} \leqq \frac{ {}_n\mathrm{C}_m}{ e^{nH\left(\frac{m}{n}\right)} } \]が成り立つ。

これより、\[ \sum_{k=0}^n {}_n\mathrm{C}_k \left(\frac{m}{n}\right)^k \left(1-\frac{m}{n}\right)^{n-k} \leqq \sum_{k=0}^n \frac{ {}_n\mathrm{C}_m }{ e^{nH\left(\frac{m}{n}\right)} } \]が成り立つ。左辺は
\begin{eqnarray} & & \sum_{k=0}^n {}_n\mathrm{C}_k \left(\frac{m}{n}\right)^k \left(1-\frac{m}{n}\right)^{n-k} \\[5pt] &=& \left( \frac{m}{n} +1-\frac{m}{n} \right)^n \\[5pt] &=& 1 \end{eqnarray}であり、右辺は\[ (n+1)\frac{ {}_n\mathrm{C}_m}{ e^{nH\left(\frac{m}{n}\right)} } \]なので \begin{eqnarray} 1 & \leqq & (n+1)\frac{ {}_n\mathrm{C}_m }{ e^{nH\left(\frac{m}{n}\right)} } \\[5pt] {}_n\mathrm{C}_m & \geqq & \frac{1}{n+1} e^{nH\left(\frac{m}{n}\right)} \\[5pt] \end{eqnarray}が成り立つ。

((3)終)

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