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京都大学 理系 2015年度 第3問 解説

問題編

【問題】
(1) aを実数とするとき、$(a,0)$を通り、$y=e^x+1$ に接する直線がただ1つ存在することを示せ。

(2) $a_1=1$ として、$n=1,2,\cdots$について、$(a_n,0)$を通り、$y=e^x+1$に接する直線の接点のx座標を$a_{n+1}$とする。このとき、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} (a_{n+1}-a_n)$ を求めよ。

【考え方】
(1)で、接線に関する条件はすぐに書けますが、問題は「ただ1つ」ってところですね。aに応じて1つだけ定まることは、条件を満たす接点が1つしか存在しないことを示せばOKです。

「接線が$(a,0)$を通る」と考えたほうがいいです。「$(a,0)$を通る直線が接線になる」とやってしまうと、後の計算が大変になってしまいます。これについては、解答後に説明します。

(2)については、(1)の結果を使いますが、$a_n \to \infty$となるのが、少し気づきにくいですね。$y=e^x+1$のグラフを思い浮かべれば、イメージがつきやすいかもしれません。$a_n \to \infty$を示すには、各項の差が1以上であることを利用します。


解答編

【問題】
(1) aを実数とするとき、$(a,0)$を通り、$y=e^x+1$ に接する直線がただ1つ存在することを示せ。

(2) $a_1=1$ として、$n=1,2,\cdots$について、$(a_n,0)$を通り、$y=e^x+1$に接する直線の接点のx座標を$a_{n+1}$とする。このとき、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} (a_{n+1}-a_n)$ を求めよ。

【解答】
(1)
$(t,e^t+1)$における$y=e^x+1$の接線の方程式は、
\begin{eqnarray} y-(e^t+1) = e^t(x-t) \end{eqnarray}と書ける。 これが$(a,0)$を通るとすると、
\begin{eqnarray} 0-(e^t+1) &=& e^t(a-t) \\ a &=& t-1-e^{-t} \ \ \cdots (A) \end{eqnarray}となる。

ここで、$f(x) = x-1-e^{-x}$とすると、$f'(x) = 1+e^{-x} \gt 0$なので、$f$は狭義単調増加関数である。また、
\begin{eqnarray} \lim_{x \to -\infty} f(x) = - \infty, \ \ \lim_{x \to \infty} f(x) = \infty \end{eqnarray}なので、$f(x)=a$は実数解をただ1つ持つ。これは、(A)を満たす$t$ がただ1つ存在するということなので、題意を満たす接線が1つだけ存在することが示された。

(2)
(1)の(A)より、
\begin{eqnarray} a_n &=& a_{n+1} - 1-e^{-a_{n+1} } \end{eqnarray} が成り立つ。このとき、
\begin{eqnarray} a_{n+1} - a_n &=& 1 + e^{-a_{n+1} } \end{eqnarray} である。

このことから、特に、$a_{n+1} - a_n \geqq 1$なので、$a_1=1$であることと合わせると、$a_n \geqq n$がわかる。つまり、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n=\infty$なので、
\begin{eqnarray} \lim_{n \to \infty} ( a_{n+1} - a_n ) &=& \lim_{n \to \infty} ( 1 + e^{-a_{n+1} } ) \\ &=& 1 \end{eqnarray} となる。

【解答終】

【解説】
(1)では、「接線が$(a,0)$を通る」という順番で考えましたが、「$(a,0)$を通る直線が接線になる」という攻め方だと、はまってしまいます。どういうことか、少し長くなりますが説明します。

$(a,0)$を通る直線を考えます。まず、$x=a$は$y=e^x+1$の接線にはなりえません。なので、接線になりえるとしたら、$y=m(x-a)$だけです($m$は実数)。

$f(x)=e^x+1 -m(x-a)$とします。もし接線になるなら、接点では$f$も$f'$も0になります。$f'(x)=e^x-m$なので、$f'(x)=0$となるのは、$m\gt 0$のときで、そのとき$x=\log m$となります。

ここで$f$も0になるので、$f(\log m) = m+1-m(\log m-a)=0$となる$m$が1つだけ存在すればいいことになります。

$g(x) = x+1-x(\log x-a)$とおくと、$g'(x)=a-\log x$なので、$g'(x)=0$となるとき$x=e^a$であるから、増減表は次のようになります。
\begin{array}{c|ccccc} x & 0 & \cdots & e^a & \cdots & \infty \\ \hline g'(x) & & + & 0 & - & \\ \hline g(x) & & \nearrow & e^a+1 & \searrow & -\infty \end{array} さて、ここで、$g(x) = 0$となる$x$が1つだけ存在することを示すには、xが$e^a$以下の範囲で$g(x)$が正になることを示さないといけません。これはなかなか面倒です。

ということで、「$(a,0)$を通る直線が接線になる」という方法は避けたほうがいいです。「$(a,0)$を通る直線」より「接線」の方が情報量が多いので、「接線が$(a,0)$を通る」という方向で攻めていきましょう。

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