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京都大学 理系 2012年度 第1問 解説

問題編

問題

 次の各問に答えよ。
(1) a が正の実数のとき $\displaystyle \lim_{n\to\infty} (1+a^n)^{\frac{1}{n} }$ を求めよ。
(2) 定積分$\displaystyle \int_1^{\sqrt{3} } \frac{1}{x^2} \log\sqrt{1+x^2} dx$ の値を求めよ。

考え方

(1)は、 $1$ と $a^n$ を比較して、どちらの影響が大きくなるかを考えるといいでしょう。そうすると、どこで場合分けをしないといけないかが見えてきます。影響が小さくなる方を、はさみうちの定理などを使って示すといいでしょう。

(2)は、(1)とは関係のない問題です。 $\log$ や $1+x^2$ の形から、どんな積分の計算を使っていたか、思い出しながら解いていきましょう。


解答編

問題

 次の各問に答えよ。
(1) a が正の実数のとき $\displaystyle \lim_{n\to\infty} (1+a^n)^{\frac{1}{n} }$ を求めよ。

解答

(1)
(i) $0\lt a \leqq 1$ のとき
$a^n \leqq 1$ なので\[ 1 \lt (1+a^n)^{\frac{1}{n} } \leqq 2^{\frac{1}{n} } \]が成り立つ。ここで、\[ \lim_{n\to\infty} 2^{\frac{1}{n} }=1 \]なので、はさみうちの定理から\[ \lim_{n\to\infty} (1+a^n)^{\frac{1}{n} }=1 \]となることがわかる。

(ii) $a\gt 1$ のとき
$1 \lt a^n$ なので\[ a^n \lt 1+a^n \lt 2a^n \]が成り立つ。よって、\[ a \lt (1+a^n)^{\frac{1}{n} } \lt a \cdot 2^{\frac{1}{n} } \]が成り立つ。

ここで、\[ \lim_{n\to\infty} a\cdot 2^{\frac{1}{n} }=a \]なので、はさみうちの定理から\[ \lim_{n\to\infty} (1+a^n)^{\frac{1}{n} }=a \]となることがわかる。

(i)(ii) より、
\begin{eqnarray} \lim_{n\to\infty} (1+a^n)^{\frac{1}{n} } = \begin{cases} 1 & ( 0 \lt a \leqq 1 ) \\ a & ( a \gt 1 ) \end{cases} \end{eqnarray}となる。

解説

イメージで言うと、「 $1$ と $a^n$ では、どちらの影響が大きくなるか」を考えていることになります。 $a\lt 1$ なら、 $a^n$ の影響はほとんど無視できるようになるので、 $1^{\frac{1}{n} }=1$ に近づくようになります。一方、 $a\gt 1$ の場合は、 $a^n$ の影響だけが残るようになるので、 $(a^n)^{\frac{1}{n} }=a$ に近づくようになります。あとは、無視できる部分をはさみうちなどで説明すれば終わりです。

問題

(2) 定積分$\displaystyle \int_1^{\sqrt{3} } \frac{1}{x^2} \log\sqrt{1+x^2} dx$ の値を求めよ。

解答

(2)
部分積分より
\begin{eqnarray} & & \int_1^{\sqrt{3} } \frac{1}{x^2} \log\sqrt{1+x^2} dx \\[10pt] &=& \frac{1}{2} \int_1^{\sqrt{3} } \frac{1}{x^2} \log(1+x^2) dx \\[10pt] &=& \frac{1}{2} \left[ -\frac{1}{x}\log(1+x^2) \right]_1^{\sqrt{3} } \\ & & +\frac{1}{2} \int_1^{\sqrt{3} } \frac{1}{x} \cdot \frac{2x}{1+x^2} dx \\[10pt] &=& \frac{1}{2} \left(\log 2 -\frac{1}{\sqrt{3} }\log 4\right) \\ & & +\int_1^{\sqrt{3} } \frac{1}{1+x^2} dx \\[10pt] &=& \left(\frac{1}{2}-\frac{\sqrt{3} }{3}\right)\log 2 \\ & & +\int_1^{\sqrt{3} } \frac{1}{1+x^2} dx \\[10pt] \end{eqnarray}となる。

ここで、 $x=\tan \theta$ とおく $\left( 0\lt \theta \lt \dfrac{\pi}{2}\right)$ と
\begin{eqnarray} & & \int_1^{\sqrt{3} } \frac{1}{1+x^2} dx \\[5pt] &=& \int_\frac{\pi}{4}^{\frac{\pi}{3} } \cos^2\theta \cdot \frac{1}{\cos^2\theta} d\theta \\[5pt] &=& \int_\frac{\pi}{4}^{\frac{\pi}{3} } d\theta \\[5pt] &=& [\theta]_\frac{\pi}{4}^{\frac{\pi}{3} } \\[5pt] &=& \frac{\pi}{3}-\frac{\pi}{4} \\[5pt] &=& \frac{\pi}{12} \\[5pt] \end{eqnarray}なので、 \begin{eqnarray} & & \int_1^{\sqrt{3} } \frac{1}{x^2} \log\sqrt{1+x^2} dx \\[5pt] &=& \left(\frac{1}{2}-\frac{\sqrt{3} }{3}\right)\log 2 +\frac{\pi}{12} \\[5pt] \end{eqnarray}となる。

(終)

解説

部分積分と置換積分を組み合わせて解く問題です。 $\log$ の積分なので部分積分を使うんじゃないか、 $1+x^2$ があるから $\tan$ とおくんじゃないか、というのはひらめきやすいので、定積分の計算の練習をしっかりしておけば、それほど難しくはないでしょう。

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