京都大学 文系 2017年度 第3問 解説
問題編
問題
座標空間において原点 O と点 $\mathrm{ A }(0,-1,1)$ を通る直線を l とし、点 $\mathrm{ B }(0,2,1)$ と点 $\mathrm{ C }(-2,2,-3)$ を通る直線を m とする。 l 上の2点 P, Q と、 m 上の点 R を $\triangle \mathrm{ PQR }$ が正三角形となるようにとる。このとき、 $\triangle \mathrm{ PQR }$ の面積が最小となるような P, Q, R の座標を求めよ。
考え方
ベクトルで考えながら解くと取り組みやすいでしょう。三角形の面積を出すなら必要な値がいくつかありますが、正三角形の場合は1つあれば十分です。状況を考えて、正三角形の面積を表すのに何を使えば解きやすいかを考えましょう。
解答編
問題
座標空間において原点 O と点 $\mathrm{ A }(0,-1,1)$ を通る直線を l とし、点 $\mathrm{ B }(0,2,1)$ と点 $\mathrm{ C }(-2,2,-3)$ を通る直線を m とする。 l 上の2点 P, Q と、 m 上の点 R を $\triangle \mathrm{ PQR }$ が正三角形となるようにとる。このとき、 $\triangle \mathrm{ PQR }$ の面積が最小となるような P, Q, R の座標を求めよ。
解答
点 R から、直線 l へ垂線を1本ひくことができる。この垂線の足を S とおく。 S を中心に半径 $\dfrac{1}{\sqrt{3} }$ の球と直線 l との共有点は2点あり、それを P, Q とすると、三角形 PQR は正三角形になる。また、点 R を頂点とする正三角形のうち、この作り方でできないものはない。よって、正三角形 PQR の面積は点 R の座標によって定まる。
実数 r を用いて、 $\overrightarrow{ \mathrm{ OR } } = \overrightarrow{ \mathrm{ OB } } + r \overrightarrow{ \mathrm{ BC } }$ とかける。これを成分で書くと
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{ \mathrm{ OR } }
&=&
(0,2,1) + r(-2,0,-4) \\
&=&
(-2r, 2, -4r+1) \\
\end{eqnarray}となる。また、実数 s を用いて $\overrightarrow{ \mathrm{ OS } } = s\overrightarrow{ \mathrm{ OA } }$ とかける。これを成分で書くと
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{ \mathrm{ OS } }
&=&
s(0,-1,1) \\
&=&
(0,-s,s) \\
\end{eqnarray}となる。ここで、 $\overrightarrow{ \mathrm{ OA } }$ と $\overrightarrow{ \mathrm{ RS } }$ は垂直に交わるので、内積が0になることから
\begin{eqnarray}
(0,-1,1) \cdot \left(0-(-2r),-s-2,s-(-4r+1)\right) &=& 0 \\
(0,-1,1) \cdot (2r,-s-2,s+4r-1) &=& 0 \\
-(-s-2)+(s+4r-1) &=& 0 \\
s+2+s+4r-1 &=& 0 \\
r &=& \frac{-2s-1}{4}
\end{eqnarray}となる。ここで、正三角形 PQR の面積が最小になることと、 RS が最小になることは同値であるから、
\begin{eqnarray}
\mathrm{ RS }^2
&=&
(2r)^2+(-s-2)^2+(s+4r-1)^2 \\[5pt]
&=&
\left(\frac{-2s-1}{2}\right)^2 +(s^2+4s+4)+(s-2s-1-1)^2 \\[5pt]
&=&
s^2+s+\frac{1}{4} +s^2+4s+4 +s^2+4s+4 \\[5pt]
&=&
3s^2+9s+\frac{33}{4} \\[5pt]
&=&
3 \left(s+\frac{3}{2}\right)^2 -\frac{27}{4} +\frac{33}{4} \\[5pt]
&=&
3 \left(s+\frac{3}{2}\right)^2 +\frac{3}{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となるので、最小となるのは $s=-\dfrac{3}{2}$ のときであることがわかる。また、このとき $\mathrm{ RS }=\dfrac{\sqrt{6} }{2}$ である。
このとき
\begin{eqnarray}
r &=& \frac{1}{4} \left\{-2\left(-\dfrac{3}{2}\right) -1\right\} \\[5pt]
&=& \frac{1}{4} (3 -1) \\[5pt]
&=& \frac{1}{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}であり、R の座標は
\begin{eqnarray}
(-2r, 2, -4r+1)
&=&
(-1, 2, -1)
\end{eqnarray}であることがわかる。
また、S の座標は
\begin{eqnarray}
(0,-s,s)
&=&
\left(0,\dfrac{3}{2},-\dfrac{3}{2}\right)
\end{eqnarray}であり、 $\mathrm{ RS } = \dfrac{\sqrt{6} }{2} $なので、 P, Q は S から $\overrightarrow{ \mathrm{ OA } }$ と平行な方向に\[ \dfrac{\sqrt{6} }{2}\div \sqrt{3}=\dfrac{\sqrt{2} }{2} \]だけ移動した点である。よって、 S から $\left(0,-\dfrac{1}{2},\dfrac{1}{2}\right)$ だけ足すか引けばよいので、 P, Q, R の座標は\[ \mathrm{ P }(0,1,-1),\ \mathrm{ Q }(0,2,-2),\ \mathrm{ R }(-1,2,-1) \]または\[ \mathrm{ P }(0,2,-2),\ \mathrm{ Q }(0,1,-1),\ \mathrm{ R }(-1,2,-1) \]となる。
(終)
解説
正三角形の面積は、一辺の長さや高さがわかれば求めることができます。今の場合、2直線が一番近づくときを求めるのが簡単そうなので、これを目標にします。
直線 m 上の点から l へ垂線をおろし、その足までの距離が最小のときを考える。このときに対応する正三角形の面積が最小になります。これをベクトルを使って書けば、最小となると木の R の位置が求められます。高さが分かるので1辺の長さもわかり、他の2点の座標も求めることができます。