京都大学 文系 2016年度 第2問 解説
問題編
【問題】
ボタンを押すと「あたり」か「はずれ」のいずれかが表示される装置がある。「あたり」の表示される確率は毎回同じであるとする。この装置のボタンを20回押したとき、1回以上「あたり」の出る確率は36%である。1回以上「あたり」の出る確率が90%以上となるためには、この装置のボタンを最低何回押せばよいか。必要なら$0.3010 \lt \log_{10}2 \lt 0.3011$を用いてよい。
【考え方】
「1回以上あたりが出る確率」を、1から「あたりが一度も出ない確率」を引く、と言い換えるのはよくやる手法です。ここでもそれを使います。「あたりが一度も出ない」というのは「毎回はずれが出る」ということなので、あたりではなく「はずれが出る確率」をpと置いて式を考えていくのがいいですね。
$p$は確率で1より小さいので、$\log_{10}p$が負であることに注意します。
解答編
【問題】
ボタンを押すと「あたり」か「はずれ」のいずれかが表示される装置がある。「あたり」の表示される確率は毎回同じであるとする。この装置のボタンを20回押したとき、1回以上「あたり」の出る確率は36%である。1回以上「あたり」の出る確率が90%以上となるためには、この装置のボタンを最低何回押せばよいか。必要なら$0.3010 \lt \log_{10}2 \lt 0.3011$を用いてよい。
【解答】
はずれの出る確率をpとする。条件より\[1-p^{20}=0.36\]である。よって
\begin{eqnarray}
p^{20}&=&0.64\\
&=&10^{-2}\times 2^6
\\
20\log_{10}p &=& -2+6\log_{10}2 \\[5pt]
\log_{10}p &=& \frac{-1+3\log_{10}2}{10} \\
\end{eqnarray}となる。
求める回数をnとすると、nは\[1-p^n\geqq 0.9\]を満たす最小の自然数である。
\begin{eqnarray}
1-p^n & \geqq & 0.9 \\
p^n & \leqq & 0.1 \\
n\log_{10}p & \leqq & -1
\end{eqnarray}である。
pは1より小さいので、$\log_{10}p$は負であるから、この式をさらに変形すると
\begin{eqnarray}
n & \geqq & \frac{-1}{\log_{10}p} \\[5pt]
n & \geqq & \frac{-1}{\frac{-1+3\log_{10}2}{10} } \\[5pt]
n & \geqq & \frac{10}{1-3\log_{10}2} \quad \cdots (1)
\end{eqnarray}となる。
ここで、$0.3010 \lt \log_{10}2 \lt 0.3011$だから、$0.0967 \lt 1-3\log_{10}2 \lt 0.097$なので、
\[\frac{10}{0.097} \lt \frac{10}{-1+3\log_{10}2} \lt \frac{10}{0.0967} \]
が成り立つ。ここで、左辺は$103.09\cdots$であり、右辺は$103.4\cdots$であるから、(1)の右辺の整数部分は103である。よって、(1)を満たす最小の自然数は104。
以上から、求める回数は104回。
【解答終】
【解説】
あたりの確率ではなくはずれの確率をpとして式を作るのが一つのポイントです。与えられた条件から求めたい条件を導くまでの方針はすぐに立てることができますが、最後の小数の計算が地味にめんどくさいですね。