🏠 Home / 東京大学 / 東大文系

東京大学 文系 2015年度 第1問 解説

問題編

【問題】
 以下の命題A、Bそれぞれに対し、その真偽を述べよ。また、真ならば証明を与え、偽ならば反例を与えよ。

 命題A nが正の整数ならば、$\displaystyle \frac{n^3}{26}+100 \geqq n^2$が成り立つ。

 命題B 整数n,m,lが$5n+5m+3l=1$をみたすならば、$10mn+3ml+3nl \lt 0$が成り立つ。

【考え方】
命題Aと命題Bは、独立した問題です。

命題Aは、「左辺引く右辺」の最小値を考えてみます。

命題Bは、条件式を使って、文字を3つから2つに減らして考えます。分数が出てこないように$3l$を消すように変形してみると、うまくいきます。


解答編

【問題】
 以下の命題A、Bそれぞれに対し、その真偽を述べよ。また、真ならば証明を与え、偽ならば反例を与えよ。

 命題A nが正の整数ならば、$\displaystyle \frac{n^3}{26}+100 \geqq n^2$が成り立つ。

【解説】
いきなり整数を考えるのは難しいので、まずは実数全体で考えてそのあと整数の場合を見る、という順番で考えます。実数で考えると、微分が使えるので扱いやすくなります。

両辺を26倍して、左辺から右辺を引いた式を考えます。$f(x)=x^3-26x^2+2600$とします。このとき、$f'(x)=3x^2-52x$なので、$f'(x)=0$となるのは、$x=0,\frac{52}{3}$のときです。よって増減表は次のようになります。
\begin{array}{c|ccccc} x & 0 & \cdots & \frac{52}{3} & \cdots & \infty \\ \hline f'(x) & & - & 0 & + & \\ \hline f(x) & & \searrow & & \nearrow & \end{array}

さて、ここで実数xではなく、正の整数nの場合を考えてみましょう。$\frac{52}{3}=17.33\cdots$であることと上の増減表から、最小値になりうるのは、$f(17)$か$f(18)$しかありえません。このことを踏まえて計算してみると、$f(17)$が負になってしまうんですね。これは命題Aについての反例となるので、これが答えです。解答では、反例をどうやって思いついたかは特に必要ではないので、書かなくてもいいでしょう。

【解答】
命題Aについて
$n=17$のとき、(左辺)-(右辺)を計算すると
\begin{eqnarray} \frac{n^3}{26}+100-n^2 &=& \frac{1}{26}(17^3-26\cdot 17^2 + 26\cdot 100) \\[5pt] &=& \frac{1}{26}(-9\cdot 17^2 + 2600) \\[5pt] &=& \frac{1}{26}(-2601 + 2600) \lt 0 \end{eqnarray}

よって命題Aは偽であり、反例は$n=17$。

【問題】
 命題B 整数n,m,lが$5n+5m+3l=1$をみたすならば、$10mn+3ml+3nl \lt 0$が成り立つ。

【解答】
命題Bについて
1つ目の条件式から、$3l=1-5n-5m$と書ける。よって
\begin{eqnarray} & & 10nm+3ml+3nl \\ &=& 10nm+3l(m+n) \\ &=& 10nm+(1-5n-5m)(m+n) \\ &=& 10nm+m+n-5n^2-10nm-5m^2 \\ &=& -5m^2+m-5n^2+n \\[5pt] &=& -5 \left( m-\frac{1}{10} \right)^2 + \frac{1}{20} -5\left( n-\frac{1}{10} \right)^2 + \frac{1}{20} \\[5pt] &=& -5\left( m-\frac{1}{10} \right)^2 -5\left( n-\frac{1}{10} \right)^2 + \frac{1}{10} \end{eqnarray}となる。

ここで、$\displaystyle f(x)=\left( x-\frac{1}{10} \right)^2$とおいたとき、これは下に凸で頂点の座標が$(\frac{1}{10},0)$の放物線の式なので、xが整数のときの最小値の候補は$f(0)$か$f(1)$しかない。$f(0)=\frac{1}{100}$、$f(1)=\frac{81}{100}$なので、$x=0$のときに最小となることがわかる。また、$m=n=0$のとき$5n+5m+3l=1$を満たす整数$l$が存在しないので、$m=n=0$となることはない。以上のことから、
\begin{eqnarray} & & -5\left( m-\frac{1}{10} \right)^2 -5\left( n-\frac{1}{10} \right)^2 + \frac{1}{10} \\ &\lt & -5 \cdot \frac{1}{100} -5 \cdot \frac{1}{100} + \frac{1}{10} = 0 \end{eqnarray} が成り立つ。以上より命題Bは真。

【解答終】

【解説】
うまいこと$nm$が消え、$n$と$m$それぞれの2次関数に持ち込めるものの、そこから先もなかなか難しいです。文字が2つあるので、戸惑う人もいると思います。$m=n=0$にはならないことは、不等号の等号が成り立たないことをいうために必要です。細かな議論が必要です。

関連するページ

YouTubeもやってます

チャンネル登録はコチラから (以下は、動画のサンプルです)
慶應義塾大学薬学部2024年度数学第1問5 同志社大学文系2024年度数学第1問3 昭和大学医学部I期2024年度数学第2問 兵庫医科大学2024年度数学第3問 共通テスト2B2024年度第3問2のヒントについて 久留米大学医学部推薦2024年度数学第4問