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【標準】解と係数の関係と二次方程式の解の符号

ここでは、二次方程式の解と係数の関係を用いれば、解の符号を簡単に調べることができる、ということを見ていきます。

📘 目次

例題

例題
二次方程式 $x^2+2mx+m^2-3=0$ について、次の問に答えなさい。ただし、 m は実数の定数とします。
(1) $m$ の値によらず、この二次方程式は実数解を持つことを示しなさい。
(2) $m$ が以下の値のとき、実数解の符号を答えなさい。
 (i) $m=2\sqrt{2}$ のとき
 (ii) $m=\sqrt{2}$ のとき
 (iii) $m=-2\sqrt{2}$ のとき

(1)については、判別式を調べればいいですね。
\begin{eqnarray} (2m)^2-4(m^2-3)=12 \gt 0 \end{eqnarray}なので、 m の値によらず判別式は正です。このことから、この二次方程式は、異なる2つの実数解を持つことがわかります(参考:【基本】二次方程式の解と複素数)。

(2)については、解の公式を使って解を求めてから符号を調べる、という手順で解くことができます。が、 x の係数にルートがあるので計算がめんどくさそうです。計算できないレベルではありませんが、楽ができるならできたほうがいいですよね。

解の符号を調べるだけなら、解そのものを求める必要はありません。【基本】二次方程式の解と係数の関係で見た内容を思い出しましょう。この関係から、解の和と解の積を簡単に求めることができましたね。これが使えないでしょうか。

よくよく考えてみると、片方が正で片方が負なら、積はマイナスになります。つまり、解の積の符号を調べれば、「正の解と負の解」の組合せであることはわかります。(ii)の場合、つまり、 $m=\sqrt{2}$ のときは、解と係数の関係から、解の積は
\begin{eqnarray} m^2-3=2-3\lt 0 \end{eqnarray}なので、負であることがわかります。このことから、(ii)の場合は、「片方の解は正、もう片方の解は負」であることがわかります。

ただ、(i)(iii)の場合は、解の積の符号を調べても、解の符号までは決まりません。これらの場合、解の積は
\begin{eqnarray} m^2-3=8-3\gt 0 \end{eqnarray}なので、正であることがわかりますが、「掛けて正」となるのは、「両方とも正」の場合と「両方とも負」の場合があります。これだけでは判断できません。

しかし、「解の和」も合わせて考えてみるとどうでしょう。両方とも正なら和は必ず正だし、両方とも負なら和は必ず負となります。解の符号と解の和の符号は一致します。このことから、

  • 解の積が正で和も正なら、2つの解はともに正
  • 解の積が正で和が負なら、2つの解はともに負
であることがわかります。

解と係数の関係から、解の和は $-2m$ であることがわかるので、(i)の場合は\[ -2m=-4\sqrt{2}\lt0 \]だから、2つの解はともに負、(iii)の場合は\[ -2m=4\sqrt{2}\gt0 \]だからともに正であることがわかります。

まとめると、
 (i)2つとも負
 (ii)片方が正で片方が負
 (iii)2つとも正
という答えになります。

二次方程式の解の符号

上で見たように、二次方程式の解の符号が知りたいときは、解と係数の関係を使うことができます。簡易的に二次関数のグラフをかきたいときには、 x 軸や y 軸とどのあたりで交わっているかを知りたいことがあり、そういう場合には、二次方程式の解の符号がわかれば便利なんですね。

上の例題で見た内容を一般化してまとめると、次のようになります。

二次方程式の解の符号
二次方程式 $ax^2+bx+c=0$ の解を $\alpha$, $\beta$ とし、判別式を $D=b^2-4ac$ とする。このとき、解の符号について、次が成り立つ。
(1) 「 $\alpha \gt 0$ かつ $\beta \gt 0$ 」 $\iff$ 「 $D\geqq 0$ かつ $\alpha+\beta\gt0$ かつ $\alpha\beta\gt0$ 」
(2) 「 $\alpha \lt 0$ かつ $\beta \lt 0$ 」 $\iff$ 「 $D\geqq 0$ かつ $\alpha+\beta\lt0$ かつ $\alpha\beta\gt0$ 」
(3) 「 $\alpha$ と $\beta$ が異符号」 $\iff$ 「 $\alpha\beta\lt0$ 」
いくつか、注意点や補足があります。

まず、符号を考える場合は、実数のときに限ります。そのため、解が正だとか負だとかいう話が出ると、「その解は実数解だ」というのを暗に含んでいます。そのため、 $D\geqq 0$ という条件が出てきます。なお、解が異なる場合は、このイコールが外れます。

上の例題では、「積が正で和も正なら、2つとも正」「積が正で和が負なら、2つとも負」ということを使いましたが、当然逆も成り立ちます。そのため、 $\Leftarrow$ ではなく $\iff$ になっています。

(3)では、判別式の条件が出てきていませんね。 $\alpha\beta\lt0$ のときには、解と係数の関係から $\dfrac{c}{a}\lt 0$ となりますが、これに $a^2$ という正の値を掛けると $ac\lt 0$ となります。このことから、 $b^2-4ac$ は正になることが得られます。 $D\gt 0$ が常に成り立つので、(3)の場合は、判別式のことを考えなくてもいい、というわけです。

おわりに

ここでは、解と係数の関係を使って、二次方程式の解の符号を調べる問題を見ました。ここで扱った問題では、「この二次方程式の解の符号はどうなっているか」を考えましたが、普通は「二次方程式の解がともに正になる条件を求めなさい」と出題されます。こうした例題はまた別のところで見ますが、そこではここで見た内容を使うので、よく理解しておきましょう。

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