【標準】和の記号Σと有理化
ここでは、有理化を利用して $\sum$ を計算する方法を見ていきます。
Σと有理化
有理化とは、【標準】分母に項が複数あるときの有理化で見たように、分母のルートを消す計算方法です。これを利用して和を計算する問題を見てみます。
各項を通分して和を計算する、というのは大変です。分母にルートがあるので、有理化をしてみましょう。 $k$ 番目の項は
\begin{eqnarray}
\frac{1}{\sqrt{k+1}+\sqrt{k} }
&=&
\frac{\sqrt{k+1}-\sqrt{k} }{(\sqrt{k+1}+\sqrt{k})(\sqrt{k+1}-\sqrt{k})} \\[5pt]
&=&
\sqrt{k+1}-\sqrt{k} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。分数ではなくなったので、だいぶすっきりしました。
これを踏まえて、和がどうなるかを具体的に書いてみましょう。
\begin{eqnarray}
& & (\sqrt{2}-\sqrt{1}) \\
& & +(\sqrt{3}-\sqrt{2}) \\
& & +(\sqrt{4}-\sqrt{3}) \\
& & +\cdots \\
& & +(\sqrt{n+1}-\sqrt{n}) \\
\end{eqnarray}となります。ここで、同じ数字が出てきていることに注目しましょう。例えば、 $\sqrt{2}$ は、1行目と2行目に出てきています。符号が逆なので、相殺されてなくなります。以降、 $\sqrt{3}$ や $\sqrt{4}$ についても同様です。相殺のされ方から考えると、最後に相殺されるのは $\sqrt{n}$ です。
以上から、相殺の結果、最終的に残るものを計算すると\[ \sqrt{n+1}-\sqrt{1}=\sqrt{n+1}-1 \]となります。これが答えです。
有理化をした後、たくさんの項が相殺されることを利用して和を求めます。通分をしていたらたどり着けません。
Σと有理化その2
似たような問題ですが、例題2を考えてみましょう。先ほどと同じように、 k 項目を有理化をすると
\begin{eqnarray}
\frac{1}{\sqrt{k+2}+\sqrt{k} }
&=&
\frac{(\sqrt{k+2}-\sqrt{k})}{(\sqrt{k+2}+\sqrt{k})(\sqrt{k+2}-\sqrt{k})} \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{k+2}-\sqrt{k} }{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となることから、もとの和は
\begin{eqnarray}
& & \frac{1}{2}(\sqrt{3}-\sqrt{1}) \\[5pt]
& &+\frac{1}{2}(\sqrt{4}-\sqrt{2}) \\[5pt]
& &+\frac{1}{2}(\sqrt{5}-\sqrt{3}) \\[5pt]
& &+\cdots \\[5pt]
& &+\frac{1}{2}(\sqrt{49}-\sqrt{47}) \\[5pt]
& &+\frac{1}{2}(\sqrt{50}-\sqrt{48}) \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。ここでもたくさんの項が相殺されますが、どの項とどの項が対応するか、よく考えましょう。1行目の $\sqrt{3}$ は3行目の後半と相殺されます。先ほどと違って、2行下と相殺されることに注意しましょう。
このことから、相殺の結果、残るものは、最初の2行の後半、そして、最後の2行の前半だけです。つまり、
\begin{eqnarray}
& &
\frac{1}{2}(-\sqrt{1}-\sqrt{2}+\sqrt{49}+\sqrt{50}) \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2}(-1-\sqrt{2}+7+5\sqrt{2}) \\[5pt]
&=&
3+2\sqrt{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。これが答えです。
この「2行下と相殺される」という例は、【標準】和の記号Σと部分分数分解でも取り上げています。どのように項が相殺され、相殺の結果、どの項が残るのか、よく考えて計算するようにしましょう。
おわりに
ここでは、有理化を用いて和を計算する問題を見ました。有理化を用いた結果、相殺される項がたくさん出てきましたね。どのように相殺されるかに気を付けて計算していくようにしましょう。