【標準】同じものを含む順列
今まで考えてきた順列では、すべてが異なるものを並べる場合だけを扱ってきました。ここでは、同じものを含んでいる場合の順列を考えていきます。
同じものを含む順列
(1) トランプに書かれた数字の並び方は、何通りあるか。
(2) トランプに書かれた記号の並び方は、何通りあるか。
(1)は、単に「2,3,4,5,6」の5つの数字を並び替えるだけなので、 $5!=120$ 通りです。【標準】順列などで見ました。
問題は、(2)ですね。記号を見ると、♠が3つあって、♦が2つあります。同じものが含まれている順列だと、どのように変わるのでしょうか。
例えば、トランプの並べ方として、次のようなものがありえます。
♠2、♠3、♠4、♦5、♦6
♠2、♠4、♠3、♦6、♦5
♠3、♠2、♠4、♦5、♦6
この3つは、異なる並べ方です。数字を見ると、違っていますね。しかし、記号だけを見ると、同じ並びになっています。このことから、(1)のように $5!=120$ としてしまうと、同じものをダブって数えてしまうことがわかります。
ダブっているモノをどうやって処理するかを考えましょう。どのように並べても、♠は3か所あります。数字の 2, 3, 4 を入れ替えても、記号の並び順は同じですね。このことから、 $3!$ 通りの並び方をダブって数えていることになります。また、2か所ある♦についても同様で、4, 5 を入れ替えても記号の並び順は同じです。さらに、♠と♦のダブり数えは、別々で起こります。
以上から、記号の並び方の総数は、数字の並び方の総数を、♠のダブり $3!$ 回と ♦のダブり $2!$ 回で割ったものになります。つまり\[ \frac{5!}{3!2!}=10 \]通りです。
このように、同じものを含んでいる場合の順列は、一度「全部異なる」と考えてから、後で同じものをダブって数えてしまった分を取り除く、という考え方で解くことができます。
何番目に並ぶかを考える
同じものを含んでいる順列を考える方法は、もう一つあります。それは、「何番目に並ぶか」を考えるという方法です。
上の例題であれば、「1番目から5番目の中で、♠が入る場所が3か所、♦が入る場所が2か所ある」と考えることができます。例えば、「♠が2番目4番目5番目に入る」というのは、「♦♠♦♠♠」という並びに対応している、ということですね。
こう考えると、「5か所から3か所を選んで♠を並べ、残り2か所に♦を並べる」のだから、5つから3つをとる組合せ、つまり\[ {}_5 \mathrm{ C }_3 = 10 \]通り、と求めることができます。上と同じ結果ですね。
順列なのに、組合せと考えて解く、というのは、少し不思議な感じがしますが、重要な考え方です。
同じものを含む順列(一般の場合)
例題では2種類のもの(スペードとダイヤ)を並べましたが、3種類以上でも同じです。
A, A, A, B, B, C, C の7文字を並べる方法であれば、1番目から7番目までの7か所のうち、Aが入る箇所を3か所選び、残り4か所からBの入る箇所を2か所選び、残り2か所にCを入れればいいので
\begin{eqnarray}
{}_7 \mathrm{ C }_3 \times {}_4 \mathrm{ C }_2 = \frac{7!}{3!4!} \times \frac{4!}{2!2!}
\end{eqnarray}となります。ここで、一つ目の分母にある $4!$ と2つ目の分子にある $4!$ が打ち消しあって\[ \frac{7!}{3!2!2!}=210 \]通り、と計算できます。
途中で、 $4!$ が消えましたが、これは偶然ではありません。1つ目の分母に出てきた $4!$ は、7か所からAの入る3か所を選んだ残り「4か所」に由来していて、2つ目の分母に出てきた $4!$ も、その残りが「4か所」あることに由来しています。つまり、Aが3個以外の場合でも、同じように約分されて消えます。最後の式 $\dfrac{7!}{3!2!2!}$ を見ると、分子にあるのは、全体の個数で、分母には、同じものがそれぞれ何個あるかが現れています(「Aが3個、Bが2個、Cが2個」ということ)。
これはもっと一般的なケースでも成り立ちます。
Aが3個、Bが2個、Cが2個なら、 $\dfrac{(3+2+2)!}{3!2!2!}$ ということです。証明は書きませんが、ダブっているものを割るという発想でも、何番目に並ぶかという発想でも、どちらの考え方でも理解できるでしょう。
おわりに
ここでは、同じものを含む順列について考えました。順列なのに組合せで数えるという考え方も紹介しました。順列と組合せを混同してしまいがちですが、機械的にやり方を覚えるのではなく、考え方を理解していくようにしましょう。