【標準】分数式の極限値
ここでは、分数式の極限を求める問題を見ていきます。微分を習い始めてすぐの間はそんなに難しい問題に出くわすことはありませんが、いくつかの例を見ておきましょう。
そのまま代入できる場合
極限値は、【基本】極限値と微分係数で、微分係数を定義するために見たものです。ここでは、いくつかの極限値を求める問題を考えましょう。
この問題の意味は、 x が $2$ と異なる値をとりながら近づいた場合、 $\lim$ の後の式 $x^2-x+1$ はどんな値に近づいていくか、ということです。
難しく考える必要はなくて、 $x=2$ としたときの値に近づいていきます。つまり、
\begin{eqnarray}
\lim_{x\to 2}(x^2-x+1)
&=&
2^2-2+1 \\
&=&
3
\end{eqnarray}となります。
x を $2$ に近づければ、 $x^2$ は $4$ に、 $-x$ は $-2$ に近づいていくのだから、代入した値に近づいていくのは当然ですね。
因数分解が必要な場合
今回は、先ほどと同じようにはいきません。というのも、 x を $2$ に近づけた場合、分子も分母も $0$ に近づいていくからです。このような場合はどうすればいいでしょうか。
このときは、普通、何かしらの変形が必要です。そのパターンはいろいろあるのですが、この例題ではシンプルなテクニックを使います。
分子の形を見て思いつく人もいるかもしれませんが、因数分解します。
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{x\to 2} \frac{x^2-4}{x-2} \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to 2} \frac{(x-2)(x+2)}{x-2} \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to 2} (x+2) \\[5pt]
&=&
2+2 \\[5pt]
&=&
4 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。因数分解をすれば、分母・分子を $(x-2)$ で割ることができます。そうすると、極限値を求めることができます。
ところで、 $x\to 2$ というのは、 x は $2$ と違う値をとりながら近づく、ということを表しています。極限値を求めるときに、最後で $x=2$ としていますが、近づけている途中は、あくまでも $2$ とは異なる値です。そのため、分母に $x-2$ があってもいいんですね。
因数分解が必要な場合2
先ほどと同じように、分母も分子も $0$ に近づいていきます。なので、そのままでは考えられません。先ほどは因数分解をしましたが、今回はどうすればいいでしょうか。
実は、今回も因数分解です。普通なら、分母も分子もこれ以上因数分解をすることができませんね。しかし、先ほどと同じように、「2乗引く2乗」の形を作り出してみましょう。ヒントは、分子にあるルートです。
これはなかなか思いつきにくいですが、分子を「 $\sqrt{x+2}-\sqrt{4}$ 」と考えてみましょう。そうすると、\[ (\sqrt{x+2})^2 -(\sqrt{4})^2=x+2-4=x-2 \]となります。これは分母と一致していますね。このように、無理やり因数分解すると、極限値は次のように求められます。
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{x\to 2} \frac{\sqrt{x+2}-2}{x-2} \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to 2} \frac{\sqrt{x+2}-2}{x+2-4} \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to 2} \frac{\sqrt{x+2}-\sqrt{4} }{(\sqrt{x+2}-\sqrt{4})(\sqrt{x+2}+\sqrt{4})} \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to 2} \frac{1}{\sqrt{x+2}+\sqrt{4} } \\[5pt]
&=&
\frac{1}{\sqrt{2+2}+\sqrt{4} } \\[5pt]
&=&
\frac{1}{4} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
これを思いつくのは難しいですね。ただ、微分を習い始めてすぐの間は、このような変形が必要になる場面は少ないです。ここでは、因数分解を使って極限値を求める問題には、こういうパターンもあるんだな、と思っておけば大丈夫です。
おわりに
ここでは、分数式の極限値を求める問題をいくつか取り上げました。極限値については、現時点では、2つ目までの内容が理解できていれば十分でしょう。