【標準】あるベクトルに垂直なベクトル(内積利用)
ここでは、内積を使って、あるベクトルに垂直なベクトルを求めてみます。
あるベクトルに垂直な単位ベクトル
単位ベクトルとは、大きさが $1$ のベクトルのことです(参考:【基本】ベクトルの成分)。大きさが決まり、「垂直」という条件から向きが決まるので、ベクトルが定まる、ということですね。
求めるベクトルの成分を $(x,y)$ としましょう。大きさについての条件から\[ x^2+y^2=1 \]が得られます。
また、これと $\vec{a}$ とが垂直なので、内積が $0$ です(参考:【基本】ベクトルの内積となす角#ベクトルの垂直)。よって
\begin{eqnarray}
(1,2)\cdot(x,y) &=& 0 \\[5pt]
x+2y &=& 0 \\[5pt]
x &=& -2y \\[5pt]
\end{eqnarray}が得られます。
この2つの条件から
\begin{eqnarray}
(-2y)^2+y^2 &=& 1 \\[5pt]
y^2 &=& \frac{1}{5} \\[5pt]
y &=& \pm\frac{\sqrt{5} }{5} \\[5pt]
\end{eqnarray}が得られます。 $x=-2y$ なので、求める単位ベクトルは\[ \left(-\frac{2\sqrt{5} }{5},\frac{\sqrt{5} }{5}\right), \ \left(\frac{2\sqrt{5} }{5},-\frac{\sqrt{5} }{5}\right) \]となります。2つとも答えです。
あるベクトルに垂直なベクトル
ここでは、少し一般的な場合について考えてみましょう。
$\vec{0}$ ではない2つのベクトル $\vec{a}=(a_1,a_2)$, $\vec{b}=(b_1,b_2)$ が垂直であったとします。このとき、 $\vec{b}$ の成分について、どのようなことが言えるのかを考えてみましょう。
垂直だから、内積は $0$ になります。\[ (a_1,a_2)\cdot(b_1,b_2)=0 \]となるので\[ a_1b_1=-a_2b_2 \]が成り立ちます。もし、 $a_1\ne 0$ なら、 $b_1=-\dfrac{a_2}{a_1}b_2$ となるので、\[ \vec{b}=\left( -\frac{a_2}{a_1}b_2, b_2 \right) \]と書くことができます。 $b_2\ne 0$ なので、両方の成分に $-\dfrac{a_1}{b_2}$ を掛けると、 $\vec{b}$ は、 $(a_2, -a_1)$ の定数倍であることがわかります。つまり、 $\vec{a}=(a_1,a_2)$ と垂直なベクトルと言った時点で、 $(a_2, -a_1)$ の定数倍だとおくことができる、ということです。
このことは、 $a_1=0$ の場合でも成り立ちます。 $a_1=0$ なら、 $\vec{a}$ は $y$ 軸に平行なので、これに垂直なベクトルは $x$ 軸に平行なベクトルです。たしかに、 $(a_2,0)$ の定数倍になっています。
逆に、 $(a_1,a_2)$ と $k(a_2,-a_1)$ との内積は $0$ であることはすぐにわかるので、以上のことをまとめると次のことが言えます。
成分を入れ替えて、片方の符号を反対にして、定数倍すれば、垂直なベクトルが得られる、というわけなんですね。向きが決まるので、あとは定数倍の部分だけを考えればよくなります。
これを踏まえて上の例題を考えてみましょう。
$(1,2)$ と垂直なベクトルは、 $k(2,-1)$ と書けます。この大きさが $1$ となるときの k を求めると
\begin{eqnarray}
k^2\{ 2^2+(-1)^2 \} &=& 1 \\[5pt]
k^2 &=& \frac{1}{5} \\[5pt]
k &=& \pm\frac{\sqrt{5} }{5} \\[5pt]
\end{eqnarray}が得られます。このことから、\[ \left(-\frac{2\sqrt{5} }{5},\frac{\sqrt{5} }{5}\right), \ \left(\frac{2\sqrt{5} }{5},-\frac{\sqrt{5} }{5}\right) \]と求めることもできます。
ベクトルの成分を使うと、平行なベクトルも垂直なベクトルも簡単に求めることができます(参考:【標準】ベクトルの成分と平行)。
おわりに
ここでは、内積を使って、あるベクトルに垂直なベクトルを求めました。成分を入れ替えて、片方の符号を変えて、定数倍、で垂直なベクトルが得られることも見ました。この背景で、内積を用いていることをおさえておきましょう。