【標準】座標を使って三角形の垂心を考える
ここでは、座標を使って図形の問題を解く例として、三角形の垂心について見ていきます。
三角形の垂心
三角形の各頂点から対辺に垂線をひきます。垂線は3本できますが、この3本の線は1点で交わります。
この点を、この三角形の垂心(orthocenter) といいます。
ただ、「3本の垂線が1点で交わる」ことは、自明なことではありません(参考:【標準】三角形の垂心(なぜ3つの垂線は1点で交わるか))。以下では、座標を使ってこのことを考えてみましょう。
なぜ3本の垂線は1点で交わるか
三角形 ABC について、各頂点から対辺に引いた垂線について、座標を使って考えていきましょう。
このように、座標を使って図形の問題を考えるのは、【標準】座標を使った中線定理の証明などでも見ましたが、まず座標をうまくとることが大事です。これによって計算量が大きく変わってきます。状況を変えないように気をつけながら、うまく座標をとることを考えます。
まず、座標が $0$ のものが増えるほどいいですね。そのため、 BC は x 軸上にあるようにとりましょう。回転したり平行移動すればいいので、はじめからこのように設定しても問題ありません。
また、A から BC に垂線をひくことを考えれば、 A は y 軸上にあるほうがいいですね。これも左右に平行移動すればいいので、このように設定しても構いません。こうすれば、 A から BC に引いた垂線は、 y 軸と一致します。
さらに、 AB や AC が y 軸と平行だと面倒ですね。直線の方程式を場合分けしないといけません。なので、 $\angle \mathrm{ A }$ が一番大きい角である、としましょう。もし違えば、名前を付け替えればいいです。こうすれば、 $\angle \mathrm{ B }$, $\angle \mathrm{ C }$ は鋭角になり、 y 軸と平行な辺がないと言えます。
以上のことをまとめて、解答をこのように書き始めることができます。
また、回転や平行移動により、辺 BC が x 軸上にあり、点 A が y 軸上にあるとしてよい。
以上から、各点の座標を $\mathrm{ A }(0,a)$, $\mathrm{ B }(b,0)$, $\mathrm{ C }(c,0)$ ( $a,b,c\ne 0$ )とおくことができる。
「一般性を失わない」というのは、状況を都合よく限定していませんよ、ということです。今の場合で言えば、「特殊な三角形についてだけ考えているわけじゃないです」ということです。名前を付け替えたり、移動したりしているだけですからね。
さて、ここまですれば、あとの計算はだいぶ楽です。まず、 B から AC に下した垂線の方程式を求めましょう。 AC の傾きは $-\dfrac{a}{c}$ なので、垂線の傾きは $\dfrac{c}{a}$ です。これが B を通るので、垂線の方程式は
\begin{eqnarray}
y &=& \frac{c}{a}(x-b) \\[5pt]
&=& \frac{c}{a}x -\frac{bc}{a} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
同じように計算すると、 C から AB に下した垂線の方程式は
\begin{eqnarray}
y &=& \frac{b}{a}(x-c) \\[5pt]
&=& \frac{b}{a}x -\frac{bc}{a} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
よく見ると、この2つの垂線は切片が同じなので、両方とも $\left(0, -\dfrac{bc}{a}\right)$ を通ることがわかります。これは y 軸上にあります。なお、 $b\ne c$ なので、交点はこの1点しかありません(参考:【基本】2直線の位置関係と連立方程式の解の個数)。
また、 A から BC に下した垂線は y 軸そのものです。なので、この交点を通ることがわかります。
以上のことから、3つの垂線が1点で交わることがわかります。
おわりに
ここでは、座標を使って、三角形の垂心が存在することを見ました。一般性を失わないように注意しながら、うまく座標をとり、計算量を減らす工夫をしながら解いていきましょう。今回の例であれば、「 y 軸に平行な辺が出ないように座標をとる」という技などが、他の場所でも使えるかもしれません。