【応用】36度の三角比
【応用】15度の三角比では、特別な図を用いて15度の三角比を考えました。ここでは、別の特別な図を用いて、36度の三角比を考えてみたいと思います。
36度の三角比
正五角形とその対角線を使って、次のような図を考えてみます。
この一部を使って、36度の三角比を考えていきましょう。
次のように、 $\mathrm{ AB }=\mathrm{ AC }$ の二等辺三角形 ABC をかきます。 $\angle \mathrm{ A }=36^{\circ}$ で、 $\mathrm{ BC }=1$ とします。今、 $\mathrm{ AB }=x$ とおいて、これを求めてみましょう。これがわかると、36度の三角比も求められるようになります。
ここで、線分 AC 上に、 $\angle \mathrm{ BDC }=72^{\circ}$ となる点 D をとります。すると、 $\triangle \mathrm{ ABD }$ も $\triangle \mathrm{ BCD }$ も二等辺三角形になることが分かります。
さらに、 $\triangle \mathrm{ ABC }$ と $\triangle \mathrm{ BCD }$ が相似になっていることもわかります。よって、\[ \mathrm{ AB }:\mathrm{ BC } = \mathrm{ BC }:\mathrm{ CD } \]がわかります。\[ \mathrm{ BC }=\mathrm{ BD }=\mathrm{ AD } \]であることから、 $\mathrm{ CD }=x-1$ となることがわかります。よって、上の相似の式から、次の関係式が導かれます。
\begin{eqnarray}
x:1 &=& 1:(x-1) \\
x(x-1) &=& 1 \\
x^2-x-1 &=& 0 \\
x&=&\frac{1\pm\sqrt{1^2+4} }{2}
\end{eqnarray}$x\gt 0$ なので、\[ x=\frac{1+\sqrt{5} }{2} \]となります。
D から AB に垂線を下ろし、 ABと交わった点を E とします。
$\displaystyle \mathrm{ AE }=\frac{1+\sqrt{5} }{4}$ なので、\[ \cos 36^{\circ} = \frac{\mathrm{ AE } }{\mathrm{ AD } } = \frac{1+\sqrt{5} }{4}\]と計算できます。
他の値は、二重根号が出てきてしまいますが、次のように計算できます。
\begin{eqnarray}
\sin 36^{\circ}
&=&
\frac{\mathrm{ DE } }{\mathrm{ AD } } \\
&=&
\mathrm{ DE } \\
&=&
\sqrt{ 1^2-\left(\frac{1+\sqrt{5} }{4}\right)^2 } \\
&=&
\sqrt{ \frac{16-(1+2\sqrt{5}+5)}{16} } \\
&=&
\sqrt{ \frac{10-2\sqrt{5} }{16} } \\
&=&
\frac{ \sqrt{10-2\sqrt{5} } }{4} \\
\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}
\tan 36^{\circ}
&=&
\frac{ \sqrt{10-2\sqrt{5} } }{4} \div \frac{1+\sqrt{5} }{4} \\[5pt]
&=&
\frac{ \sqrt{10-2\sqrt{5} } \times (-1+\sqrt{5}) }{ (1+\sqrt{5})(-1+\sqrt{5}) } \\[5pt]
&=&
\frac{ \sqrt{ (10-2\sqrt{5})(-1+\sqrt{5})^2 } }{ 4 } \\[5pt]
&=&
\frac{ \sqrt{ (10-2\sqrt{5})(6-2\sqrt{5}) } }{ 4 } \\[5pt]
&=&
\frac{ \sqrt{ 80 -32\sqrt{5} } }{ 4 } \\[5pt]
&=&
\sqrt{ 5 -2\sqrt{5} } \\
\end{eqnarray}となります。途中で有理化をするときに、分子のルートの中に入れることを見越して、正の数である $-1+\sqrt{5}$ を分母分子に掛けています。なお、これらの二重根号をきれいに外すことはできません。
54度の三角比
余角の公式を使えば、\[ \sin 54^{\circ} = \frac{1+\sqrt{5} }{4}, \ \cos 54^{\circ} = \frac{ \sqrt{10-2\sqrt{5} } }{4} \]が得られます。
また、 $\tan$ は次のようになります。
\begin{eqnarray}
\tan 54^{\circ} &=& \frac{1}{\tan 36^{\circ} } \\[5pt]
&=&
\frac{1}{\sqrt{ 5 -2\sqrt{5} } } \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{ 5 +2\sqrt{5} } }{\sqrt{ 5 -2\sqrt{5} }\sqrt{ 5 +2\sqrt{5} } } \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{ 5 +2\sqrt{5} } }{\sqrt{ 5^2 -(2\sqrt{5})^2 } } \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{ 5 +2\sqrt{5} } }{\sqrt{ 5 } } \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{ 25 +10\sqrt{5} } }{5 } \\
\end{eqnarray}となります。
おわりに
ここでは、特別な図を用いて、36度と54度の三角比を求めました。二重根号が出てくる部分が出題されることはあまりないですが、 $\cos 36^{\circ}$ を求める問題などは練習問題や試験でも出題される可能性はあります。
ちなみに、使用した三角形は、正五角形で、ある頂点から対角線を引いたときにできる図形でもあります。相似がうまく使える、特殊な形をしていますね。