【応用】ベクトルの内積と三角形の面積
ここでは、ベクトルの内積を用いて、三角形の面積を表す方法について考えていきます。計算はハードですが、結果はわりときれいな式になります。
ベクトルの内積と三角形の面積
内積の定義で、 $\cos$ が出てきましたね。また、三角比のところで、三角形の面積を表す次のような式を見ました(参考:【基本】三角比と三角形の面積)。
\[ S=\frac{1}{2}bc\sin A =\frac{1}{2}ca\sin B =\frac{1}{2}ab\sin C \]
これを使っていきます。
まず、三角形 OAB に対し、 $\overrightarrow{ \mathrm{ OA } }=\vec{a}$, $\overrightarrow{ \mathrm{ OB } }=\vec{b}$ とし、 $\angle \mathrm{ AOB }=\theta$ とします。すると、この三角形の面積 S は、上で見た内容を使えば
\begin{eqnarray}
S &=& \frac{1}{2}|\vec{a}||\vec{b}|\sin \theta
\end{eqnarray}となります。
内積で出てくるのは $\sin$ ではなくて $\cos$ です。しかし、この2つには、関係式がありましたね。【基本】三角比の相互関係(鈍角)で見た通り、\[ \sin^2\theta+\cos^2\theta=1 \]が成り立ちます。 $\sin$ の値は0以上なので、これを変形すると\[ \sin\theta=\sqrt{1-\cos^2\theta} \]となります。これを先ほどの式に代入して変形していくと
\begin{eqnarray}
S
&=&
\frac{1}{2}|\vec{a}||\vec{b}| \sqrt{1-\cos^2\theta} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2} \sqrt{|\vec{a}|^2|\vec{b}|^2-|\vec{a}|^2|\vec{b}|^2\cos^2\theta} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2} \sqrt{|\vec{a}|^2|\vec{b}|^2-(\vec{a}\cdot\vec{b})^2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。ベクトルの言葉で書くと、三角形の面積はこのようになります。
ベクトルの成分と三角形の面積
先ほどの式を、成分で考えてみましょう。すると、これもきれいな式が得られます。
$\vec{a}=(a_1,a_2)$, $\vec{b}=(b_1,b_2)$ として、ルートの中を計算していきましょう。【基本】ベクトルの内積と成分で見た内容などを使って
\begin{eqnarray}
& &
|\vec{a}|^2|\vec{b}|^2-(\vec{a}\cdot\vec{b})^2 \\[5pt]
&=&
(a_1^2+a_2^2)(b_1^2+b_2^2)-(a_1b_1+a_2b_2)^2 \\[5pt]
&=&
a_1^2 b_1^2+a_1^2 b_2^2+a_2^2 b_1^2+a_2^2 b_2^2 \\
& &-(a_1^2 b_1^2 +2a_1 a_2 b_1 b_2 +a_2^2 b_2^2) \\[5pt]
&=&
a_1^2 b_2^2+a_2^2 b_1^2 -2a_1 a_2 b_1 b_2 \\[5pt]
&=&
(a_1b_2-a_2b_1)^2 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
一般に、 $\sqrt{x^2}=|x|$ が成り立つことから、三角形の面積は
\begin{eqnarray}
S
&=&
\frac{1}{2} \sqrt{|\vec{a}|^2|\vec{b}|^2-(\vec{a}\cdot\vec{b})^2} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2} \sqrt{(a_1b_2-a_2b_1)^2} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2} |a_1b_2-a_2b_1| \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。掛ける順番に注意が必要ですが、すっきりした式ですね。
以上をまとめると、次のようになります。
なお、成分で書いた式を、座標バージョンの式と見比べてみましょう。【応用】座標と三角形の面積で見るとわかる通り、同じ形をしていることがわかります。出し方は全然違うのに同じ形が出てくるというのは、興味深いですね。
おわりに
ここでは、ベクトルの内積を使って、三角形の面積について考えました。内積・成分、どちらでもスッキリした式が得られました。ここで見た内容は、ベクトルや三角比の計算のいい練習になりますね。