【応用】3つの3乗の和に関する因数分解(a^3+b^3+c^3-3abc)
ここでは、 $a^3+b^3+c^3-3abc$ の因数分解を考えます。入試問題で、この因数分解を使って解く問題が出題されることもあります。
因数分解を考える
【標準】三次式の因数分解の後半部分で、次のような式変形を見ました。
\begin{eqnarray}
a^3+b^3
&=&
(a+b)^3 -(3a^2b+3ab^2) \\
&=&
(a+b)^3 -3ab(a+b) \\
&=&
(a+b)\{ (a+b)^2 -3ab \} \\
&=&
(a+b)(a^2+2ab+b^2 -3ab) \\
&=&
(a+b)(a^2-ab+b^2) \\
\end{eqnarray}この中の\[ a^3+b^3 = (a+b)^3 -3ab(a+b) \]という部分を使って、 $a^3+b^3+c^3-3abc$ の因数分解を考えてみましょう。
\begin{eqnarray}
& &
a^3+b^3+c^3-3abc \\
&=&
(a+b)^3 -3ab(a+b) +c^3-3abc \\
\end{eqnarray}$a^3+b^3$ の部分を変形しました。この変形後の式で、1つ目と3つ目に注目してみましょう。「3乗足す3乗」の形になっていますね。三次式の因数分解の式が使うと、 $a+b+c$ が出てきます。また、2つ目と4つ目に注目すると、 $3ab$ でくくれば、こちらからも $a+b+c$ が出てきます。なので、まとめられそうですね。まとめると、次のように変形できます。
\begin{eqnarray}
& &
(a+b)^3 +c^3 -3ab(a+b) -3abc \\[5pt]
&=&
(a+b+c)\{ (a+b)^2-(a+b)\cdot c +c^2 \} \\
& &
-3ab(a+b+c) \\[5pt]
&=&
(a+b+c)( a^2+2ab+b^2-ac-bc +c^2 -3ab ) \\[5pt]
&=&
(a+b+c)( a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca ) \\
\end{eqnarray}これ以上因数分解できないので、これが答えです。
最後の式を展開して元に戻すのは簡単ですが、因数分解をするのはとても難しいですね。一般的に、因数分解は1つの文字に着目して整理してから解きますが、そのやり方ではできないため、なかなか気づけません。
証明問題でどのように使われるか
上で見た因数分解した結果
\begin{eqnarray}
& &
a^3+b^3+c^3-3abc \\
&=&
(a+b+c)( a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca )
\end{eqnarray}は証明問題などでよく使われます。
例えば、 $a+b+c=0$ のときに $a^3+b^3+c^3=3abc$ が成り立つことを示しなさい、という問題が出ることがあります。これは明らかではありませんが、因数分解後の式を見れば成り立つことがすぐにわかりますね。
問題によっては、このように「示しなさい」とは言われていないものの、 $a^3+b^3+c^3=3abc$ を使わないと解けない、ということがあります。
また、因数分解をした後の2つ目のカッコの中は、次のように変形できます。
\begin{eqnarray}
& &
a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2}(2a^2+2b^2+2c^2-2ab-2bc-2ca) \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2}(a^2-2ab+b^2+b^2-2bc+c^2+c^2-2ca+a^2) \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2}\{ (a-b)^2+(b-c)^2+(c-a)^2 \} \\
\end{eqnarray}最後の式からわかるのは、「2つ目のカッコの中は、常に0以上であること」、そして、「2つ目のカッコの中が0になるのは、 $a=b=c$ のときであること」です。
このことから、例えば、 $a,b,c$ がすべて正であれば\[ a^3+b^3+c^3-3abc \geqq 0 \]であることがわかります。因数分解をして、 $a+b+c \gt 0$ と $a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca \geqq 0$ が言えるからです。
因数分解ができれば、こうしたことが示せるようになります。逆に、因数分解ができなければ、示すのがかなり大変になります。
おわりに
ここでは、 $a^3+b^3+c^3-3abc$ の因数分解を見ました。また、因数分解した形が、どういった場面で使われるかも見ました。使いどころが難しいですが、3つの3乗の和が出てきたときに使うことがあります。