【応用】確率変数の期待値
ここでは、確率変数の期待値に関する問題を見ていきます。
例題1
表の枚数は、$0,1,2$ の3通りの可能性があり、起こる確率は、それぞれ、 $\dfrac{1}{4}, \dfrac{1}{2}, \dfrac{1}{4}$ です。
$X$ は、各回で表が出た枚数を掛けたものです。 $0,1,2$ たちを掛けていくのですが、最終的に期待値を計算したいので、 $X=0$ となる確率は計算結果に影響しません。各回の表の枚数が $1$ か $2$ の場合だけ考えればいいです。
$X=2^k$ となる確率を考えましょう($k$ は $0\leqq k\leqq n$ を満たす整数)。 $n$ 回の中で、表が2枚出るのが $k$ 回で、残りの $n-k$ 回は表が1枚のケースなので
\begin{eqnarray}
P(X=2^k)
&=&
{}_n\mathrm{C}_k \left(\dfrac{1}{4}\right)^k \left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-k} \\[5pt]
&=&
{}_n\mathrm{C}_k \left(\dfrac{1}{2}\right)^{2k} \left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-k} \\[5pt]
&=&
\dfrac{ {}_n\mathrm{C}_k}{2^{n+k}} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
このことから、期待値は
\begin{eqnarray}
E(X)
&=&
0\cdot P(X=0)+\sum_{k=0}^n 2^k \cdot P(X=2^k) \\[5pt]
&=&
\sum_{k=0}^n 2^k \cdot \dfrac{ {}_n\mathrm{C}_k}{2^{n+k}} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2^n} \sum_{k=0}^n {}_n\mathrm{C}_k \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。最後の $\sum$ のところは覚えていないと難しいですが、二項定理を使います(参考:【標準】二項定理と式の証明)。これを使うと
\begin{eqnarray}
E(X)
&=&
\frac{1}{2^n} \cdot(1+1)^n=1 \\[5pt]
\end{eqnarray}と求めることができます。
例題2
得られる金額を $X$ 円としましょう。
$X=2^k$ となる確率は、$n$ 回コインを投げて表が $k$ 回出る確率なので、\[ P(X=2^k)={}_n\mathrm{C}_k\cdot\frac{1}{2^n} \]となります。
なので、期待値は
\begin{eqnarray}
E(X)
&=&
\sum_{k=0}^n 2^k \cdot P(X=2^k) \\[5pt]
&=&
\sum_{k=0}^n 2^k \cdot {}_n\mathrm{C}_k\cdot\frac{1}{2^n} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2^n} \sum_{k=0}^n 2^k \cdot {}_n\mathrm{C}_k \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。最後の $\sum$ のところは、先ほどと同様に、二項定理を使います。すると、
\begin{eqnarray}
E(X)
&=&
\frac{1}{2^n} \cdot(1+2)^n=\frac{3^n}{2^n} \\[5pt]
\end{eqnarray}と求めることができます。なので、得られる金額の期待値は $\dfrac{3^n}{2^n}$ 円と求められます。
おわりに
ここでは、期待値を求める問題を見てきました。最初は確率の問題でしたが、途中から二項定理を使った計算問題になりました。他にも、数列の和の計算が必要になる問題もあり、他の分野と融合した問題が出題されることがあります。