【応用】三次式の因数分解
ここでは、三次式の因数分解の公式を使って、少し難しい因数分解を考えてみます。
対称性のある式の因数分解
\[ x^3(y-z)+y^3(z-x)+z^3(x-y) \]
対称性があるので、どこから手を付けていいか迷ってしまいます。こういうときは、まずは1つの文字に注目して整理することが鉄板です。どれでもいいのですが、 x について整理してみましょう。
\begin{eqnarray}
& &
x^3(y-z)+y^3(z-x)+z^3(x-y) \\[5pt]
&=&
(y-z)x^3+(z^3-y^3)x+(y^3z-yz^3) \\[5pt]
&=&
(y-z)x^3-(y^3-z^3)x +yz(y^2-z^2) \\[5pt]
\end{eqnarray}$x^3$ の部分を見ると $y-z$ が出てくる形にしたほうがよさそうなので、 x の項は $y^3-z^3$ が出てくるようにしました。ここは「3乗引く3乗」の公式が使えます。また、定数項は、 $yz$ でくくると「2乗引く2乗」が出てくるので、どの項からも $y-z$ が出てくることがわかります。よって、次のように変形できます。
\begin{eqnarray}
& &
(y-z)x^3-(y^3-z^3)x +yz(y^2-z^2) \\[5pt]
&=&
(y-z)x^3 \\
& & -(y-z)(y^2+yz+z^2)x \\
& & +yz(y-z)(y+z) \\[5pt]
&=&
(y-z) \{ x^3 -(y^2+yz+z^2)x +yz(y+z) \} \\[5pt]
\end{eqnarray}次に、波かっこの中を考えます。ここは、 x についての3次式ですが、 y, z については2次式です。なので、次数の低い文字に着目して並び替えます。y について並び替えてみましょう。
\begin{eqnarray}
& &
(y-z) \{ x^3 -(y^2+yz+z^2)x +yz(y+z) \} \\[5pt]
&=&
(y-z) \{ x^3 -xy^2 -xyz -xz^2 +y^2z +yz^2 \} \\[5pt]
&=&
(y-z) \{ (z-x)y^2 +(-xz+z^2)y +(x^3-xz^2) \} \\[5pt]
&=&
(y-z) \{ (z-x)y^2 +(z-x)zy -x(z-x)(z+x) \} \\[5pt]
\end{eqnarray}y について整理し、波かっこの中は $(z-x)$ がでてくるように変形しました。 $(z-x)$ でくくると、次のようになります。
\begin{eqnarray}
& &
(y-z) \{ (z-x)y^2 +(z-x)zy -x(z-x)(z+x) \} \\[5pt]
&=&
(y-z)(z-x) \{ y^2 +zy -x(z+x) \} \\[5pt]
\end{eqnarray}波かっこの中は、 x, y についての2次式ですが、 z についての1次式です。よって、 z について整理します。
\begin{eqnarray}
& &
(y-z)(z-x) \{ y^2 +zy -x(z+x) \} \\[5pt]
&=&
(y-z)(z-x) \{ y^2 +zy -xz-x^2 \} \\[5pt]
&=&
(y-z)(z-x) \{ (y-x)z +y^2-x^2 \} \\[5pt]
&=&
(y-z)(z-x) \{ (y-x)z +(y-x)(y+x) \} \\[5pt]
&=&
(y-z)(z-x) \times (y-x)(z+y+x) \\[5pt]
\end{eqnarray}波かっこの中を、 $y-x$ でくくりました。この最後の式はこれでもいいのですが、普通、文字が x ⇒ y ⇒ z と並んだほうがきれいなので、次のように書くことが多いです。
\begin{eqnarray}
& &
(y-z)(z-x) \times (y-x)(z+y+x) \\[5pt]
&=&
-(x-y)(y-z)(z-x)(x+y+z) \\[5pt]
\end{eqnarray}以上から、次のように因数分解できることがわかりました。
\begin{eqnarray}
& &
x^3(y-z)+y^3(z-x)+z^3(x-y) \\[5pt]
&=&
-(x-y)(y-z)(z-x)(x+y+z) \\[5pt]
\end{eqnarray}うーん、なかなか道のりは長かったですね。
おわりに
ここでは、三次式の因数分解の公式の応用として、対称性のある式の因数分解を見ました。1つの文字について整理しながら、今まで使った公式を何度も用いているだけですが、ゴールまでたどり着くのはハードルが高いですね。