高校数学指導要領(2003年度以降適用分)
このページでは、2003年度より適用の「高等学校学習指導要領」の数学の項目について説明します(1999年3月告示)。この指導要領に沿った大学入試は、2006年度から2014年度まで行われていました。
なお、このページはPCで閲覧することをオススメします。
概要
詳細に入る前に、各科目と分野の概要をまとめておきます。
【数学I・数学A】
科目 | 分野 | 備考 |
---|---|---|
数I | 方程式と不等式 | 実数、展開、因数分解、一次不等式、二次方程式など |
二次関数 | 二次不等式も含む | |
図形と計量 | 三角比(0度から180度まで)、正弦定理や余弦定理、球の体積など | |
数A | 平面図形 | 三角形の性質、円の性質など |
集合と論理 | 集合と要素の個数、必要条件、十分条件、背理法など | |
場合の数と確率 | 順列、組合せ、独立な試行など |
【数学II・数学B】
科目 | 分野 | 備考 |
---|---|---|
数II | 式と証明・高次方程式 | 分数式、複素数と二次方程式、因数定理など |
図形と方程式 | 直線や円の方程式、軌跡と領域など | |
いろいろな関数 | 三角関数、加法定理、指数関数、対数関数など | |
微分・積分の考え | 導関数(三次までの関数)、定積分(二次までの関数)など | |
数B | 数列 | 等差数列、等比数列、数列の和、漸化式、数学的帰納法など |
ベクトル | 平面ベクトル、内積、空間ベクトルなど | |
統計とコンピュータ | 度数分布表、相関図、代表値、相関係数など | |
数値計算とコンピュータ | ユークリッドの互除法、二分法など |
【数学III・数学C】
科目 | 分野 | 備考 |
---|---|---|
数III | 極限 | 数列の極限、無限級数の和、合成関数、逆関数、関数の極限など |
微分法 | 合成関数の微分、三角関数・指数関数・対数関数の微分、自然対数、変曲点など | |
積分法 | 置換積分、部分積分、面積、体積など | |
数C | 行列とその応用 | 行列(3x3まで)、逆行列(2x2)、連立一次方程式、点の移動など |
式と曲線 | 二次曲線、媒介変数表示、極座標と極方程式など | |
確率分布 | 条件つき確率、平均、分散、標準偏差など | |
統計処理 | 正規分布、母集団と標本、推定など |
科目ごとの詳細
数学の科目は、「数学基礎」「数学I」「数学II」「数学III」「数学A」「数学B」「数学C」に分けられます。一般的に、大学入試の範囲に「数学基礎」は含まれないので、以下ではそれ以外の6科目について、内容の詳細を記載していきます。また、指導要領は、「I、II、III、A、B、C」という順番で記載されていますが、ここでは「I、A、II、B、III、C」という順番で紹介していきます。
一般の大学入試では、文系は数学IA・数学IIBを、理系はこれらに数学IIICを加えたものが出題範囲となります。なお、数学Bは「数列」「ベクトル」だけを、数学Cは「行列」「式と曲線」だけを出題範囲とするケースが多いです。数学Aはすべてが出題範囲です。
数学I
数学Iには、「方程式と不等式」「二次関数」「図形と計量」が含まれます。
分野 | 内容 | 詳細 |
---|---|---|
方程式と不等式 | 数と式 | 実数(無理数の四則演算を含む。二重根号は除く) 式の展開と因数分解(三次まで) |
一次不等式 | ||
二次方程式 | 解の公式 実数解を持つもののみ扱う | |
二次関数 | 二次関数とそのグラフ | 関数も取り扱う |
二次関数の値の変化 | 二次関数の最大・最小 二次不等式 | |
図形と計量 | 三角比 | 正弦,余弦,正接 三角比の相互関係 (0度から180度まで) |
三角比と図形 | 正弦定理,余弦定理 図形の計量 相似形の面積比・体積比、球の表面積・体積を扱う |
数学A
数学Aには、「平面図形」「集合と論理」「場合の数と確率」が含まれます。
分野 | 内容 | 詳細 |
---|---|---|
平面図形 | 三角形の性質 | 重心、内心、外心など |
円の性質 | 円に内接する四角形、方べきの定理、二つの円の位置関係など | |
集合と論理 | 集合と要素の個数 | |
命題と証明 | 必要条件、十分条件、対偶、背理法など | |
場合の数と確率 | 順列・組合せ | 二項定理を含む |
確率とその基本的な法則 | 余事象、排反を含む | |
独立な試行と確率 | 期待値を含む |
数学II
数学IIには、「式と証明・高次方程式」「図形と方程式」「いろいろな関数」「微分・積分の考え」が含まれます。
分野 | 内容 | 詳細 |
---|---|---|
式と証明・高次方程式 | 式と証明 | 整式の除法、分数式(分母は二次まで) 等式と不等式の証明 |
高次方程式 | 複素数と二次方程式(解の判別式を含む) 高次方程式(因数定理を含む) | |
図形と方程式 | 点と直線 | 点の座標 直線の方程式 (軌跡・領域を含む) |
円 | 円の方程式 円と直線 | |
いろいろな関数 | 三角関数 | 角の拡張(弧度法を含む) 三角関数とその基本的な性質 三角関数の加法定理(二倍角の公式を含む) |
指数関数と対数関数 | 指数の拡張(累乗根を含む) 指数関数 対数関数 | |
微分・積分の考え | 微分の考え | 微分係数と導関数(三次までの関数を扱う) 導関数の応用(接線を含む) |
積分の考え | 不定積分と定積分(二次までの関数を扱う) 面積 |
数学B
数学Bには、「数列」「ベクトル」「統計とコンピュータ」「数値計算とコンピュータ」が含まれます。
分野 | 内容 | 詳細 |
---|---|---|
数列 | 数列とその和 | 等差数列と等比数列 いろいろな数列(階差数列や二乗和など) |
漸化式と数学的帰納法 | 漸化式と数列 数学的帰納法 | |
ベクトル | 平面上のベクトル | ベクトルとその演算 ベクトルの内積 |
空間座標とベクトル | 空間座標、空間におけるベクトル | |
統計とコンピュータ | 資料の整理 | 度数分布表、相関図 |
資料の分析 | 代表値、分散、標準偏差、相関係数 | |
数値計算とコンピュータ | 簡単なプログラム | |
いろいろなアルゴリズム | 整数の計算(ユークリッドの互除法など) 近似値の計算(二分法、台形の面積の近似計算など) |
数学III
数学IIIには、「極限」「微分法」「積分法」が含まれます。
分野 | 内容 | 詳細 |
---|---|---|
極限 | 数列の極限 | 数列の極限 無限等比級数の和 |
関数とその極限 | 合計関数と逆関数 関数値の極限 | |
微分法 | 導関数 | 関数の和・差・積・商の導関数 合成関数の導関数 三角関数・指数関数・対数関数の導関数 |
導関数の応用 | 接線、関数値の増減、速度、加速度 (自然対数、第二次導関数、変曲点を含む) | |
積分法 | 不定積分と定積分 | 積分とその基本的な性質 簡単な置換積分法・部分積分法 いろいろな関数の積分 |
積分の応用 | 面積、体積 |
数学C
数学Cには、「行列とその応用」「式と曲線」「確率分布」「統計処理」が含まれます。
分野 | 内容 | 詳細 |
---|---|---|
行列とその応用 | 行列 | 行列とその演算(3x3まで) 行列の積と逆行列(逆行列は2x2まで) |
行列の応用 | 連立一次方程式 点の移動 | |
式と曲線 | 二次曲線 | 放物線 楕円と双曲線 (焦点、準線を含む) |
媒介変数表示と極座標 | 曲線の媒介変数表示 極座標と極方程式 | |
確率分布 | 確率の計算 | |
確率分布 | 確率変数と確率分布 (条件つき確率、平均、分散、標準偏差など) 二項分布 | |
統計処理 | 正規分布 | 連続型確率変数 正規分布 |
統計的な推測 | 母集団と標本 統計的推測の考え(推定を含む) |
前過程からの主な変更点
ここでは、前過程からの主な変更点を各科目ごとにまとめていきます。
【数学I】
- 前過程の中学校の「一次方程式」が、「数と式」に移動してきました。
- 前過程の数学Aの「数と式」の一部が、移動してきました。
- 「個数の処理」「確率」が、数学Aの「場合の数と確率」に移動しました。
【数学A】
- 前過程の数学Iの「個数の処理」「確率」が、「場合の数と確率」に移動してきました。
- 「数と式」が、数学Iの「数と式」と数学IIの「式と証明・高次方程式」に移動しました。
- 「数と式」で扱っていた論理や前過程の数学Iの「個数の処理」で扱っていた集合は、「集合と論理」に移動してきました。
- 「数列」は、数学Bに移動しました。
- 「計算とコンピュータ」は、数学Bの「数値計算とコンピュータ」に移動しました。
【数学II】
- 前過程の数学Bの「複素数と複素数平面」の一部が、「式と証明・高次方程式」に移動してきました(「複素数平面」は廃止)。
【数学B】
- 前過程の数学Aの「数列」が、移動してきました。
- 前過程の数学Cの「統計処理」の一部が、「統計とコンピュータ」に移動してきました。
- 前過程の数学Aの「計算とコンピュータ」が、「数値計算とコンピュータ」に移動してきました。
- 前過程の数学Cの「数値計算」が、「数値計算とコンピュータ」に移動してきました。
- 「複素数と複素数平面」の一部が、数学IIの「式と証明・高次方程式」に移動しました(「複素数平面」は廃止)。
- 「確率分布」が、数学Cに移動しました。
【数学III】
- 「積分法」の「道のり」が廃止されました。
【数学C】
- 前過程の数学Bの「確率分布」が、移動してきました。
- 「数値計算」が、数学Bの「数値計算とコンピュータ」に移動しました。