【基本】独立な確率変数の和の分散
ここでは、独立な確率変数の和の分散に関する性質を道駅ます
独立な確率変数の和の分散
【基本】独立な確率変数の積の期待値では、確率変数 $X,Y$ が独立であれば、 $E(XY)=E(X)E(Y)$ が成り立つことを見ました。独立という条件が重要であることも見ました。
実は、確率変数の積の期待値を直接計算する場面は少ないです。それよりも、このページで見る、「和の分散」の性質を使う場面のほうが多いです。ただ、その証明の中で、積の期待値を使うので、こういう順番で紹介する流れになります。
さて、確率変数 $X,Y$ が独立であるとします。このときに、 $V(X+Y)$ を考えてみます。
分散の求め方は2つありましたが、そのうち、「2乗の平均 引く 平均の2乗」で計算する方法を使います(参考:【基本】確率変数の分散の公式)。これを使うと、次のように計算できます。
\begin{eqnarray}
& &
V(X+Y) \\[5pt]
&=&
E((X+Y)^2)-\{E(X+Y)\}^2 \\[5pt]
&=&
E(X^2+2XY+Y^2)-\{E(X)+E(Y)\}^2 \\[5pt]
&=&
E(X^2)+E(2XY)+E(Y^2)\\
& & -\{E(X)\}^2-2E(X)E(Y)-\{E(Y)\}^2 \\[5pt]
&=&
E(X^2)+\{E(X)\}^2 \\
& & -E(2XY)-2E(X)E(Y) \\
& & +E(Y^2)-\{E(Y)\}^2 \\[5pt]
&=&
V(X)+2E(XY)-2E(X)E(Y)+V(Y) \\[5pt]
\end{eqnarray}ここまでの計算では、まだ「独立であること」は使っていません。この最後の式の変形で初めて使います。 $X,Y$ は互いに独立だから、 $E(XY)=E(X) E(Y)$ が成り立ちます。これにより、\[ V(X+Y)=V(X)+V(Y) \]が成り立ちます。
独立であれば、「和の分散」は「分散の和」になるということです。
和の分散は定義通りに計算するとかなり面倒です。なので、それぞれを計算して足すだけでいいというのは、かなりの省エネになります。
似た話が続いていますが、少しまぎらわしいので注意しましょう。\[ E(X+Y)=E(X)+E(Y) \]これは、独立でも独立でなくても成立します。しかし、次の2つ
\begin{eqnarray}
E(XY) &=& E(X)E(Y) \\[5pt]
V(X+Y) &=& V(X)+V(Y) \\[5pt]
\end{eqnarray}は、 $X,Y$ が互いに独立なら必ず成り立ちますが、独立でない場合は成り立つとは限りません。
なお、3つ以上の場合も成り立ちます。一般に、確率変数 $X_1,X_2,\cdots,X_n$ に対して、次が成り立ちます。\[ V\left(\sum_{k=1}^n X_k\right)=\sum_{k=1}^n V (X_k) \]$n$ 個を $n-1$ 個と $1$ 個に分ける、というように、1個ずつ分解していけば、これが成り立つこともわかるでしょう。
例題
もし、和の期待値や分散に関する性質を知らなかったら、これはかなり面倒な計算をすることになります。 $X+Y+Z=3$ から $X+Y+Z=18$ まで、それぞれの確率を出して、期待値を求めることになります。それから、分散を求める、という手順になります。期待値を求めるのも大変なのに、2乗の期待値をさらに求めないといけない。大変そうですね。
しかし、 $X,Y,Z$ が独立で、分布が同じなので、今までの話を使えば、計算はかなり簡単になります。\[ V(X+Y+Z)=V(X)+V(Y)+V(Z)=3V(X) \]となります。後は $V(X)$ を求めればいいだけです。
\begin{eqnarray} E(X)&=&\frac{1+2+3+4+5+6}{6}=\frac{7}{2} \\[5pt] E(X^2)&=&\frac{1^2+2^2+3^2+4^2+5^2+6^2}{6}=\frac{91}{6} \\[5pt] V(X)&=&\frac{91}{6}-\left(\frac{7}{2}\right)^2=\frac{182-147}{12}=\frac{35}{12} \end{eqnarray}なので、\[ V(X+Y+Z)=3V(X)=\frac{35}{4} \]となります。かなり楽になりますね。おわりに
ここでは、確率変数が独立の場合に、和の分散が分散の和になることを見ました。「独立」という条件は大事です。これがない場合は、成り立つとは限らないので注意しましょう。