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【基本】三角比の相互関係

【基本】三角比の定義(直角三角形による定義)で、$\sin$, $\cos$, $\tan$ の3つの三角比を紹介しました。これらは互いに独立した値ではなく、ある関係式を満たします。ここでは、その相互関係について見ていきます。

📘 目次

三角比の相互関係

直角三角形と三角比の対応は下の図の通りでしたね。

これから、 $y=r\sin\theta$ と $x=r\cos\theta$ という式が得られます。ちなみに、 $y=\sin\theta r$ とは書きません。「 $(\sin\theta)\times r$ 」なのか「 $\sin(\theta\times r)$ 」なのかがわからないからです。

さて、この2つの式を、 $\tan$ の式に入れて見ましょう。
\begin{eqnarray} \tan \theta &=& \frac{y}{x} \\[5pt] &=& \frac{r\sin\theta}{r\cos\theta} \\[5pt] &=& \frac{\sin\theta}{\cos\theta} \\[5pt] \end{eqnarray}このようになります。これは、辺の長さが出てこない、三角比だけの関係式です。

また、直角三角形なので、三平方の定理(ピタゴラスの定理)が成り立ちます。 $x^2+y^2=r^2$ です。これに三角比の式を代入してみます。
\begin{eqnarray} (r\cos\theta)^2 +(r\sin\theta)^2 &=& r^2 \\ (\sin\theta)^2 +(\cos\theta)^2 &=& 1 \\ \end{eqnarray}三角比の場合、 $(\sin\theta)^2$ のことを $\sin^2\theta$ と書きます。なので、この式は\[ \sin^2\theta + \cos^2\theta=1 \]となります。これも三角比だけの関係式です。

最後に、2つ目で得られた式の両辺を、 $\cos^2\theta$ で割ってみます。1つ目で得られた式も使うと、次のような式が得られます。
\begin{eqnarray} \frac{\sin^2\theta}{\cos^2\theta} +1 &=& \frac{1}{\cos^2\theta} \\[5pt] \tan^2\theta +1 &=& \frac{1}{\cos^2\theta} \\ \end{eqnarray}これも三角比だけの関係式ですね。

ここで紹介した3つの式が、基本的な三角比の相互関係です。三角比だけからなる関係式です。まとめておきます。

三角比の相互関係
$\theta$ が鋭角のとき、次が成り立つ。
  • $\displaystyle \tan\theta = \frac{\sin\theta}{\cos\theta}$
  • $\sin^2\theta +\cos^2\theta = 1$
  • $\displaystyle \tan^2\theta +1 = \frac{1}{\cos^2\theta}$

これがあれば、「3つある三角比のどれか1つの値がわかると、残りの2つの値もわかる」というメリットがあります。例題で確かめてみましょう。

例題

三角比の相互関係を使った例題を解いてみましょう。

例題
$\theta$ は鋭角とする。
(1) $\displaystyle \cos\theta=\frac{1}{3}$ のとき、 $\sin\theta$ と $\tan\theta$ の値を求めなさい。
(2) $\tan\theta=2$ のとき、 $\sin\theta$ と $\cos\theta$ の値を求めなさい。

「 $\theta$ は鋭角とする」という条件は、現時点ではあまり深く考えなくてもいいです。「三角比は直角三角形の辺の比で定義しているから、三角比の値は正になる」ということだと解釈しておきましょう。

(1)は、まず、相互関係の2つ目の式を使って $\sin$ を求めましょう。
\begin{eqnarray} \sin^2\theta &=& 1-\cos^2\theta = \frac{8}{9} \\ \sin\theta &=& \frac{2\sqrt{2} }{3} \\ \end{eqnarray}この結果と、相互関係の1つ目の式を使います。 \begin{eqnarray} \tan\theta &=& \frac{\sin\theta}{\cos\theta} \\ &=& \frac{2\sqrt{2} }{3} \div \frac{1}{3} \\ &=& 2\sqrt{2} \\ \end{eqnarray}となります。

(2)は、相互関係の3つ目の式を使って、まず $\cos$ を求めます。 $\tan$ と $\sin$ だけの関係式がないので、これを使うしかないですね。
\begin{eqnarray} \tan^2\theta +1 &=& \frac{1}{\cos^2\theta} \\ 2^2 +1 &=& \frac{1}{\cos^2\theta} \\ \cos^2\theta &=& \frac{1}{5}\\ \cos\theta &=& \frac{\sqrt{5} }{5}\\ \end{eqnarray}これと、相互関係の1つ目の式から \begin{eqnarray} \sin\theta = (\tan\theta) \times (\cos\theta)=\frac{2\sqrt{5} }{5} \end{eqnarray}が得られます。

なお、ここでは、説明上、「相互関係の〇つ目から~」と書いていますが、別に順番が決まっているわけではありません。試験では、「相互関係から~」と書くだけで大丈夫です。

おわりに

ここでは、三角比の相互関係について見てきました。3つある三角比のうち、どれか1つが分かれば他の2つもわかる、という使い方ができます。

試験では、直接「 $\cos$ の値から $\sin$ を求めましょう」と言ってくれることはあまりなくて、使いたい三角比の値はどれかを自分で考えて自主的に値を求めることが多いです。問題を解きながら、どれを使えばいいかわかるようになっていきましょう。

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