【基本】整数の和や積と余り
ここでは、余りの分かっている数同士を足したり掛けたりすると、余りがどうなるかを考えていきます。
整数の和と余り
具体的な値を入れれば答えを予想することはできますが、その予想以外に答えがないことを示すのは難しいです。こういう場合、割り算を式で表すと示しやすくなります。【基本】整数の除法と商と余りで見た表し方を利用しましょう。
$a,b$ を5で割ったときの商を $m,n$ とします。このとき、\[ a=5m+2,\ b=5n+4 \]となります。こう表すと、 $a+b$ を表すのも簡単ですね。今、5で割った余りを考えたいのだから、余りが0以上5未満となるように調整すれば
\begin{eqnarray}
a+b
&=&
(5m+2)+(5n+4) \\[5pt]
&=&
5m+5n+6 \\[5pt]
&=&
5(m+n+1)+1 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。よって、余りは $1$ となります。
ここで大事なのは、 $a+b$ を5で割ったときの余りは、それぞれの整数を5で割ったときの余りだけで決まる、ということです。余り同士を足して、それを5で割ればいいんですね。実際、この例題でも、商を表す $m,n$ は、最終的な余りの式には出てきません。
なお、余りを足すだけではなく、足したものを5で割らないといけないことに注意しましょう。
整数の積と余り
今度は積です。予想はつくかもしれませんが、同じようにやってみましょう。
$a,b$ を7で割ったときの商を $m,n$ とすると、 $a=7m+3$, $7n+4$ と書けるので
\begin{eqnarray}
ab
&=&
(7m+3)(7n+4) \\[5pt]
&=&
49mn+28m+21n+12 \\[5pt]
&=&
7(7mn+4m+3n+1)+5 \\[5pt]
\end{eqnarray}となるため、余りは5であることがわかります。
余り同士を掛けて、7で割ったものと一致することがわかります。
整数の差や2乗と余り
今度は2乗と差が出てきていますが、やることは同じです。
$a,b$ を7で割ったときの商を $m,n$ とすると、 $a=7m+3$, $7n+4$ と書けるので
\begin{eqnarray}
a^2-b^2
&=&
(7m+3)^2-(7n+4)^2 \\[5pt]
&=&
(49m^2+42m+9)-(49n^2+56n+16) \\[5pt]
&=&
7(7m^2+6m-7n^2-8n-1) \\[5pt]
\end{eqnarray}となるため、余りは0であることがわかります。
これも、やはり、「余りをそれぞれ2乗したものの差を、7で割ったときの余り」と一致することがわかります。
展開をしたときに、ほとんどの係数に「割る数」が掛かっていることがわかります。なので、余りだけに注目すればいいことがわかります。
余りを見るだけではダメな例
今までの流れを見て、「なんだ、いつも余りだけを考えればいいんじゃないか」と思うかもしれませんが、例外もあります。
例えば、 $a$ を7で割ると3余る整数、 $b$ を7で割ると4余る整数とするとき、 $a$ を $b$ で割ったときの商や余りを7で割ったらどうなるでしょうか。これは、1つには決まりません。
$a=3,10,17,24$ などとして、 $b=4$ とすると、割った答えは、0余り3、2余り2、4余り1、6余り0、となります。商も余りも、7で割ったときの余りはバラバラです。
一応、式で書いてみましょう。 $a,b$ を7で割ったときの商を $m,n$ とし、 $a$ を $b$ で割ったときの商を $q$ として余りを $r$ とすれば、\[ 7m+3=(7n+4)p+r \]と書くことができます。これを変形すると\[ r=7(m-np)-4p+3 \]となります。 $-4p+3$ の部分は商によって値はコロコロ変わるので、余りである $r$ も一つの値に決まるわけではありません。一つに決まらないので、問われることは基本的にありませんが、誤解しないようにしておきましょう。
おわりに
ここでは、余りが分かっているときに、和や積に対して余りを求める問題を見ました。まとめておきましょう。
- $a_1+a_2$ を $m$ で割った余りは、 $r_1+r_2$ を $m$ で割った余りに等しい。
- $a_1-a_2$ を $m$ で割った余りは、 $r_1-r_2$ を $m$ で割った余りに等しい。
- $a_1a_2$ を $m$ で割った余りは、 $r_1r_2$ を $m$ で割った余りに等しい。