【基本】背理法
命題を証明するときに、その対偶を証明するという方法を【基本】対偶証明法で紹介しました。ここでは、もう一つの重要な証明方法「背理法」について見ていきます。
背理法
例えば推理ドラマなどで、「自殺をする人間がこんなことをするのはおかしい、だからこの人は自殺したんじゃない、殺されたんだ」というような推理をするシーンってありますよね。このように、「○○だとすると矛盾が生じる。だから○○ではない」と話を展開していく方法は、数学でも用いられます。
「その命題が成り立たないと仮定すると矛盾が生じるため、その命題は成り立つ」と証明する方法を背理法といいます。上の例でいえば、「誰かに殺されたのではなく、自分で死んだ」と仮定するとおかしい部分が出てくることを示して、「誰かに殺された」と主張しているんですね。
背理法を使った証明の例
背理法を使った証明の例としてよく挙がるのが、「 $\sqrt{2}$ が無理数であることの証明」です。
無理数というのは分数では書けない実数のことでしたね(参考:【基本】実数の分類)。直接「分数で書けないこと」を証明するのは少し難しいので、「分数で書ける」と仮定すると矛盾することを示します。つまり、背理法を使って証明するということです。
分数で書けるということは $\displaystyle \frac{p}{q}$ と書けるということです。分母・分子で約分できる場合は約分をすることで、「最大公約数が1」とできます。このことを用いて、矛盾を導いていきます。
\begin{eqnarray} (2r)^2 &=& 2q^2 \\ 4r^2 &=& 2q^2 \\ q^2 &=& 2r^2 \\ \end{eqnarray}となる。このことから、q も偶数となる。
p, q がともに偶数であることは、「最大公約数が1であること」に矛盾する。したがって、 $\sqrt{2}$ は無理数となる。
<証明終>
このように、「できないこと」を示すときには、直接示すよりも「できると仮定するとおかしいことが起こるよ」の方が言いやすいことがあるんですね。
ちなみに、上の証明の中では「 $p^2$ が偶数ならば $p$ も偶数である」ことを用いています。厳密にはこれも証明すべきかもしれません。これを示すべきかどうかは、どういうテストで問われているかによって変わってきます。定期テストなら示した方がいいかもしれませんが、大学入試では証明せずに「明らか」としてもいいでしょう。
もし証明するなら、対偶を示しましょう。「 $p$ が奇数ならば $p^2$ も奇数である」を考えたほうが簡単です。
なお、「命題を否定して矛盾を示す」と言っていますが、どのような矛盾を示すかは、命題によって変わってきます。これからいろんな問題を解いていきながら、さまざまなパターンを身につけていく必要があります。
おわりに
ここでは、背理法について見てきました。定期テストや入試でもよく出てくる証明方法なので、しっかり使えるようにしておきましょう。