【基本】対数の性質(積や累乗の対数)
ここでは、積の対数、累乗の対数について見ていきます。なお、 $a\gt 0, a\ne 1$ とし、 $M,N\gt0$ とします。
積の対数と対数同士の和
対数同士の和に関する性質を見てみましょう。
$5^{\log_5 2+\log_5 3}$ について考えてみます。指数の部分が複雑な形をしていますが、指数法則を使えば、次のように分解できます。\[ 5^{\log_5 2}\cdot 5^{\log_5 3} \]【基本】対数の基本性質でも見た通り、対数の定義から、これは、 $2\times 3$ となり、 $6$ だとわかります。
\[ 5^{\log_5 2+\log_5 3}=6 \]なのだから、 $\log_5 2+\log_5 3$ は、「5を何乗すると6になるか」の解であることがわかります。つまり、\[ \log_5 6 = \log_5 2+\log_5 3 \]が成り立つということです。
この式を次のように表してみます\[ \log_5 (2\cdot 3) = \log_5 2+\log_5 3 \]左辺は「積の対数」になっていて、それが右辺のように「対数同士の和」に分解されているように見えますね。これは、一般的にも成り立ちます。
一般的なケースで考えてみましょう。 $a^p=M$, $a^q=N$ としましょう。このとき、積 $MN$ は、次のように変形できます。
\begin{eqnarray}
MN
&=&
a^p\cdot a^q \\[5pt]
&=&
a^{p+q} \\[5pt]
\end{eqnarray}ここで、 $a$ を $p+q$ 乗すると $MN$ になるのだから、\[ \log_a MN = p+q \]が成り立ちます。もともと、 $a^p=M$, $a^q=N$ だったのだから、\[ \log_a MN = \log_a M +\log_a N \]が成り立つことがわかります。
言葉でいうと、「積の対数は、対数の和」となります。左辺を右辺に分解する使い方もするし、逆に、右辺から左辺へひとまとめにすることもあります。底がすべて同じであることに注意しましょう。
例えば、 $\log_{10}2+\log_{10}5$ は、先ほどの内容を使えば、 $\log_{10} 10=1$ と求められることがわかります。それぞれの項の値を求めることは難しいですが、和は求められるんですね。
累乗の対数
$k$ を実数とし、 $\log_a M^k$ がどうなるかを見てみましょう。先ほどと同じように、 $a^p=M$ とおくと
\begin{eqnarray}
M^k
&=&
(a^p)^k \\[5pt]
&=&
a^{pk} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。 $a$ を $pk$ 乗したら $M^k$ になるのだから、\[ \log_a M^k=pk \]になるということです。もともと、 $a^p=M$ とおいていたので、\[ \log_a M^k=k\log_a M \]が成り立つということです。
言葉で書くと、「累乗の対数は、対数の定数倍」ということですね。
例えば、 $\log_2 2^3$ は、 $3\log_2 2$ となることがわかります。 $\log_2 2=1$ なのだから、 $\log_2 2^3=3$ だとわかるわけですね。これは、【基本】対数の基本性質で見た\[ \log_a a^p=p \]からもわかる内容ですね。
商の対数
積の対数、累乗の対数を組み合わせると、商の対数を考えることもできます。
$\log_a \dfrac{M}{N}$ について考えてみましょう。これは、 $M$ と $\dfrac{1}{N}$ の積だと考えれば\[ \log_a M+\log_a\dfrac{1}{N} \]と分解できることがわかります。また、 $\dfrac{1}{N}=N^{-1}$ なので、累乗の対数だと考えれば、最終的に\[ \log_a \dfrac{M}{N}=\log_a M-\log_a N \]と変形できることがわかります。
言葉で書くと、「商の対数は、対数の差」といえます。
積・商・累乗の対数のまとめ
今までの話をまとめておきましょう。
\begin{eqnarray} \log_a MN &=& \log_a M +\log_a N \\[5pt] \log_a \dfrac{M}{N} &=& \log_a M -\log_a N \\[5pt] \log_a M^k &=& k\log_a M \\[5pt] \end{eqnarray}
これらを用いて、いろいろな対数の計算を行うことができます。これらを使った複雑な計算については、別の機会に見ていきます。
これらの性質は、【導入】指数関数・対数関数とマグニチュードでも少し紹介した、対数を考えるメリットを表しています。左辺の真数の部分にある、 $MN$ や $\dfrac{M}{N}$ や $M^k$ は、すごく大きな値やすごく小さな値になることがあります。しかし、右辺の対数の部分を見ると、和や差、定数倍となっていて、それほど大きな値・小さな値にはなりません。
そのため、大きすぎる値( $10^{23}$ とか)や小さすぎる値( $10^{-14}$ とか)と言った値でも、対数を使えば扱いやすくなります。実際、これらは $10$ を底とする対数を考えれば、 $23$ と $-14$ となり、扱いやすいですね。元の数を掛けたり割ったり何乗かするよりも、こうした扱いやすい値の和や差や定数倍が使えたほうが便利だ、というのがわかるでしょう。
おわりに
ここでは、積・商・累乗の対数について見てきました。対数を計算する上では必須の性質などで使いこなせるようにしておきましょう。積商を考えているのか、和差を考えているのか、混乱しやすいので落ち着いて計算しましょう。