【基本】同時分布
ここでは、複数の確率変数に関する確率を見ていきます。
複数の確率変数
あたりが2本含まれている10本のくじがあるとします。Aさんがくじを1本引き、残りからBさんがくじを2本引くとします。このとき、Aさん、Bさんの当たりくじの数を、それぞれ $X,Y$ とします。
$X$ は $0,1$ のどちらか、 $Y$ は $0,1,2$ のどれかの値をとります。例えば、 $P(X=1)=\dfrac{2}{10}=\dfrac{1}{5}$ となります。
このような状況で、 $X=a$ かつ $Y=b$ となる確率を\[ P(X=a,Y=b) \]のように表します。例えば、 $P(X=0,Y=2)$ であれば、Aさんがはずれを引いて、Bさんが2本ともあたりを引く確率のことなので\[ P(X=0,Y=2)=\frac{8}{10}\cdot\frac{ {}_2\mathrm{C}_2}{ {}_9\mathrm{C}_2}=\frac{1}{45} \]となります。
3つ以上の場合も同様です。 $X,Y,Z$ という3つの確率変数があり、それぞれ、 $a,b,c$ となる確率は\[ P(X=a,Y=b,Z=c) \]で表します。 $X_1,X_2,\cdots,X_n$ という $n$ 個の確率変数があり、それぞれ、 $a_1,a_2,\cdots,a_n$ となる確率は\[ P(X_1=a_1,X_2=a_2,\cdots,X_n=a_n) \]と表します。
同時分布
先ほどの例で、他の確率も考えてみます。
まず、Aさんが引くときには、10本のうちあたりが2本あることから、 $X$ の分布は次のようになります。
\begin{eqnarray} \begin{array}{c|cc|c} X & 0 & 1 & \textsf{計} \\ \hline P & \dfrac{4}{5} & \dfrac{1}{5} & 1 \end{array} \end{eqnarray}次に、$Y$ も含めた場合を考えます。 $X=0$ のとき、Bさんが引くときには、9本のうちあたりくじが2本あるので、
\begin{eqnarray}
& & P(X=0,Y=0)=\frac{4}{5} \cdot \frac{ {}_7\mathrm{C}_2}{ {}_9\mathrm{C}_2} = \frac{7}{15}
\\[5pt]
& & P(X=0,Y=1)=\frac{4}{5} \cdot \frac{ {}_2\mathrm{C}_1\cdot {}_7\mathrm{C}_1}{ {}_9\mathrm{C}_2} = \frac{14}{45}
\\[5pt]
& & P(X=0,Y=2)=\frac{4}{5} \cdot \frac{ {}_2\mathrm{C}_2}{ {}_9\mathrm{C}_2} = \frac{1}{45}
\\[5pt]
\end{eqnarray}となります。また、 $X=1$ のときは、残りはあたりは1本なので、
\begin{eqnarray}
& & P(X=1,Y=0)=\frac{1}{5} \cdot \frac{ {}_8\mathrm{C}_2}{ {}_9\mathrm{C}_2} = \frac{7}{45}
\\[5pt]
& & P(X=1,Y=1)=\frac{1}{5} \cdot \frac{ {}_1\mathrm{C}_1\cdot {}_8\mathrm{C}_1}{ {}_9\mathrm{C}_2} = \frac{2}{45}
\\[5pt]
\end{eqnarray}となります。 $X=1,Y=2$ になることはないので、こうなる確率は $0$ です。
これを表にまとめてみましょう。 $X$ の分布の表し方とは異なり、 $X,Y$ と2つあるので、2次元の表を使います。
$X$
$Y$
|
$0$ | $1$ | $2$ | 計 |
$0$ | $\dfrac{7}{15}$ | $\dfrac{14}{45}$ | $\dfrac{1}{45}$ | $\dfrac{4}{5}$ |
$1$ | $\dfrac{7}{45}$ | $\dfrac{2}{45}$ | $0$ | $\dfrac{1}{5}$ |
計 | $\dfrac{28}{45}$ | $\dfrac{16}{45}$ | $\dfrac{1}{45}$ | $1$ |
このような「確率変数のとり得る値の組とその確率」を表す対応関係を、 $X$ と $Y$ の同時分布(joint distribution) といいます。
上の表の一番右の列を見ると、先ほど見た $X$ の分布が得られます。
\begin{eqnarray}
\begin{array}{c|cc|c}
X & 0 & 1 & \textsf{計} \\
\hline
P & \dfrac{4}{5} & \dfrac{1}{5} & 1
\end{array}
\end{eqnarray}
また、一番下の行を見ると、 $Y$ の分布が得られます。
\begin{eqnarray}
\begin{array}{c|ccc|c}
Y & 0 & 1 & 2 & \textsf{計} \\
\hline
P & \dfrac{28}{45} & \dfrac{16}{45} & \dfrac{1}{45} & 1
\end{array}
\end{eqnarray}
これは、例えば、 $P(Y=0)$ について考えると、「 $X=0,Y=0$ 」のケースと「 $X=1,Y=0$ 」のケースの2つがあり、これら以外にはありません。なので、これらが起こる確率を足せば、 $Y=0$ となる確率になるということです。
改めて言われると難しく感じるかもしれませんが、確率の問題を解いていたときには自然に使っていた考え方のはずです。
おわりに
ここでは、同時分布について見てきました。具体的な例を通して、同時分布を表にまとめました。
次のページからは、複数の確率変数の和や積の期待値などを考えていきます。