【基本】二次式を複素数の範囲で因数分解する
ここでは、複素数の範囲で考えれば、いつでも二次式を因数分解することができる、ということを見ていきます。
解と係数の関係と因数分解
二次方程式 $ax^2+bx+c=0$ の解を $\alpha,\beta$ とします。複素数の範囲では、必ず解が存在します(参考:【基本】二次方程式の解と複素数)。なお、重解の場合は、 $\alpha=\beta$ の場合、ということです。
【基本】二次方程式の解と係数の関係で見たように、二次方程式の解と係数の間には、次のような関係式があります。\[ \alpha+\beta = -\frac{b}{a},\quad \alpha\beta = \frac{c}{a} \]解の和、解の積が、係数を使ってこのようにシンプルに書けるんですね。
このことから、二次方程式の左辺は次のように変形することができます。
\begin{eqnarray}
ax^2+bx+c
&=&
a\left(x^2+\frac{b}{a}x+\frac{c}{a}\right) \\[5pt]
&=&
a\left\{ x^2 -(\alpha+\beta)x+\alpha\beta \right\} \\[5pt]
&=&
a(x-\alpha)(x-\beta) \\[5pt]
\end{eqnarray}このように因数分解できることがわかります。
今まで、因数分解をして二次方程式を解くときは、逆の流れでこれを使っていました。つまり、\[ x^2-4x+3=0 \]という方程式があれば、これは\[ (x-1)(x-3)=0 \]と因数分解できるから、 $x-1=0$ または $x-3=0$ が成り立つので、 $x=1,3$ とわかる、という流れです。因数分解をしてから解を求めていました。
上で書いていることは流れが逆で、解が分かっていたら、因数分解をすることができる、という流れになっています。二次方程式の解の公式があり、複素数の範囲で考えれば必ず解があるので、その解を使えばいつでも因数分解をすることができる、という内容です。
\[ ax^2+bx+c = a(x-\alpha)(x-\beta) \]
例えば、 $x^2+1$ という二次式を考えてみましょう。通常は、これ以上因数分解できませんね。しかし、 $x^2+1=0$ という二次方程式を考えると、この解は $x=\pm i$ と求められるので、\[ x^2+1 = (x+i)(x-i) \]と因数分解することができる、というわけです。
例題
(1) $x^2+2x-1$
(2) $x^2+x+1$
どちらも、整数の範囲では因数分解できません。(1)なら、足して $2$ 、掛けて $-1$ という整数の組合せはありません。なので、二次方程式を解いて、因数分解します。
$x^2+2x-1=0$ の解は\[ x=\frac{-2\pm\sqrt{2^2-4(-1)} }{2} = -1\pm\sqrt{2} \]となります。これと上で見た内容から
\begin{eqnarray}
& &
x^2+2x-1 \\[5pt]
&=&
\{ x-(-1+\sqrt{2}) \}\{ x-(-1-\sqrt{2}) \} \\[5pt]
&=&
(x+1-\sqrt{2}) (x+1+\sqrt{2}) \\[5pt]
\end{eqnarray}と因数分解できます。
(2)も同様に、 $x^2+x+1=0$ を解くと\[ x=\frac{-1\pm\sqrt{3}i}{2} \]となることから
\begin{eqnarray}
& &
x^2+x+1 \\[5pt]
&=&
\left(x-\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}\right) \left(x-\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}\right) \\[5pt]
\end{eqnarray}と因数分解できます。
通常は、複素数の範囲で因数分解をする必要はありません。この例題のように「複素数の範囲で因数分解しなさい」といった問題でもない限り、今まで通り、整数の範囲で因数分解をすれば問題ありません。
では、なぜわざわざこんなことをするかというと、近い将来、因数定理などの内容につながっていくからなんですね。今の段階では、今までは「因数分解⇒解を求める」とやっていたけれど、「解が分かる⇒因数分解できる」という流れもあるんだな、ということを知っておけば問題ないでしょう。
おわりに
ここでは、二次式を複素数の範囲で因数分解する方法を見ました。解が分かれば因数分解をすることができる、ということをおさえておきましょう。