【基本】ある1点を通る直線の方程式
ここでは、ある1点を通る直線の方程式について考えていきます。すでに知っている内容が多いと思います。
ある1点を通る直線の方程式
ここでは、 $(x_1,y_1)$ という点を通る直線の方程式を考えていきましょう。
【基本】直線の方程式(一般形)でも見た通り、 $y=mx+n$ の形の式だと、 y 軸に平行な直線は表現できないんでしたね。しかし、この形のほうが扱いやすいので、y 軸に平行でない場合と平行な場合とで分けて考えることにしましょう。
まず、 y 軸に平行でない直線について考えましょう。このとき、傾き( x を $1$ 増やしたときに、 y が増える量)を m とし、 y 軸との交点の y 座標を n とすれば、この直線は\[ y=mx+n \]と書くことができます。
この直線は $(x_1,y_1)$ を通るので、\[ y_1=mx_1+n \]が成り立ちます。これを先ほどの式から辺々引くと\[ y-y_1 = m(x-x_1) \]となります。1点を通るという条件では傾きは決まらないので、 m が決まることはありません。しかし、 m を決めれば y 軸との交点は決まりますね。そのため、 n だけが消えた式になります。 m を消す方法もありますが、どちらにしろ、文字は1つ残ります。
次に y 軸と平行な場合を考えましょう。これは、 x 座標がつねに $x_1$ となるということなので、 $x=x_1$ という式になります。
以上から、次のようにまとめられます。
$(x_1,y_1)$ を通り、y 軸に平行な直線の方程式は、次のようになる。\[ x=x_1 \]
例えば、 $(2,-1)$ を通り、傾きが $-2$ の直線ならば、この直線の方程式は
\begin{eqnarray}
y-(-1) &=& (-2)(x-2) \\[5pt]
y &=& -2x+4-1 \\
&=& -2x+3 \\
\end{eqnarray}となります。 $(2,-1)$ を通り、 y 軸に平行な直線ならば、この直線の方程式は $x=2$ となります。
もちろん、 $y=mx+n$ とおいて、傾きと通る点の座標から n を計算して、直線の方程式を求めても構いません。ここで見た方法では、方程式を直接求めています。
一般形との対応
【基本】直線の方程式(一般形)で見たように、直線の方程式を一般形で書けば場合分けはありませんが、上で見た方法では場合分けがありましたね。上で考えたことを一般形で見るとどうなるか考えてみましょう。
一般形では\[ ax+by+c=0 \]となるんでしたね。これが $(x_1,y_1)$ を通るとすると、これを代入すれば成り立つということなので\[ c=-(ax_1+by_1) \]が成り立つということです。つまり、\[ a(x-x_1)+b(y-y_1)=0 \]と書けるということですね。こう変形すれば、 $(x_1,y_1)$ を代入したときにこの等式が成り立つことはすぐにわかりますね。
よく見ると、 y 軸に平行な場合の式 $x=x_1$ は、この式の1つ目のカッコ内に対応していますね。 $b=0$ のときは、 $a\ne0$ なので、上の式は $x=x_1$ と変形できることから、一般形での $b=0$ のときが、上のまとめの2つ目に対応していることがわかります。
ということは、上のまとめの1つ目は、 $b\ne 0$ のときに対応しているんじゃないか、と予想できます。実際変形すると
\begin{eqnarray}
a(x-x_1)+b(y-y_1) &=& 0 \\[5pt]
b(y-y_1) &=& -a(x-x_1) \\[5pt]
y-y_1 &=& -\frac{a}{b}(x-x_1) \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。上のまとめの1つ目で、 $m=-\dfrac{a}{b}$ とおいたものと考えられますね。
まとめると、 $(x_1,y_1)$ を通る直線の方程式を一般形の形で書くと\[ a(x-x_1)+b(y-y_1)=0 \]となります。 $b\ne 0$ のときが y 軸と平行でない直線、 $b=0$ のときが y 軸に平行な直線を表します。それぞれの場合が、上のまとめに対応します。
一般形にすれば場合分けはなくなりますが、一般形では傾きの情報が読み取りにくいため、ある1点を通るときの直線の方程式を求めるときに使われることは少ないです。ただ、理解を深めるためにはこうした考察も重要でしょう。
おわりに
ここでは、ある1点を通る直線の方程式を考えました。すでに知っている内容が多かったと思いますが、少し抽象的だったかもしれません。今後はこうした抽象的な話が増えてくるので、慣れるようにしましょう。