【基本】整数の除法と商と余り
ここでは、整数の除法(割り算)を行ったときの、商と余りについて見ていきます。
正の整数を正の整数で割る
小学生の時に、正の整数を正の整数で割り、商と余りを求める方法を学びました。例えば、20を3で割ると、商は6で、余りは2です。これを、小学生のときには\[20\div3=6\dots\ 2\]などと書いていたと思います。
小学生の時はこれ以上式変形をしないのでこれでもよかったのですが、今後は、割り算を行った後の式を用いて別の式変形をしたくなることもあります。そのため、「余り」の部分が扱いづらいため、上のような書き方だと不便です。
「20を3で割ると、商が6で余りが2だ」というのは、「3が6つあって、さらにまだ2が残っている」と考えると、次のように書き換えることができます。\[ 20=3\times 6+2 \]こう書くと、これをさらに変形したり、別の式に代入したりすることがやりやすくなります。
割り算と言っておきながら、もはや「÷」の記号がないですが、右辺は実質的には割り算をした結果を表しています。
整数を正の整数で割る
先ほど「20割る3は、6余り2」は、 $20=3\times6+2$ と書ける、ということを見ました。この余りについてもう一度考えてみましょう。
$20$ を右辺の形式で書くなら、 $20=3\times5+5$ とか $20=3\times4=8$ などとも書けるわけですが、これらは今までに学んだ割り算を表しているとはいえません。余りが $3$ 以上だから、商をもっと増やすことができるからですね。
また、負の整数を学んだ今となっては、 $20=3\times 7-1$ などと書くこともできますが、これも変ですね。余りが負なので、商が大きすぎます。
余りが割る数以上ならもっと商を大きくし、余りが負ならもっと商を小さくする、こうすることで、余りは0以上割る数未満、とすることができます。これは、今までの「正の整数を正の整数で割っていた割り算」を考えれば、自然な内容です。
この発想であれば、割られる数は別に正の整数でなくても構いませんね。余りが、0以上割る数未満となるように商を調整すると、同じように割り算を考えることができます。例えば、-20を3で割る場合は、\[ -20=3\times(-7)+1 \]と書けるので、商が $-7$ で、余りが $1$ と考えることができるでしょう。
整数を正の整数で割ることは、一般的な内容で書くと、次のようになります。
こうした $q,r$ は必ず存在します。 $r$ が負なら、 $bq$ が大きくなるように $q$ を1つずつ調整していけばいいし、 $r$ が $b$ 以上なら、 $bq$ が小さくなるように $q$ を調整していけばいいですからね。 $q$ を1だけ増減させれば、 $bq$ は $|b|$ だけ変化するのだから、余りはいつか0以上 $b$ 未満となります。
また、上を満たす商と余りの組は1組だけとなります。もし、 $a=bq+r=bq'+r'$ で、 $r,r'$ がともに0以上 $b$ 未満だったとしましょう。このとき、\[ b(q-q')=r'-r \]が成り立ちます。右辺は $-|b|$ より大きく $|b|$ より小さい整数で、左辺を見ると $b$ の倍数であることがわかります。これより、右辺は $0$ だから、 $q=q'$, $r=r'$ となることがわかります。
なお、今までと同様で、 $r=0$ のときは、「 $a$ は $b$ で割り切れる」といい、 $r\ne0$ のときは「 $a$ は $b$ で割り切れない」といいます。
整数を0以外の整数で割る
先ほどと同様にすれば、割られる数だけでなく、割る数も拡張することができます。余りの範囲を制限すれば、商と余りの組は1組にできるので、よくやる方法としては、次のように定めます(余りの制限を別の方法で決める定め方もあります)。
例えば、20を-3で割ると\[ 20=-3\times(-6)+2 \]なので、商は $-6$ で余りは $2$ です。-20を-3で割ると\[ -20=-3\times7+1 \]なので、商は $7$ で余りは $1$ となります。
なお、割る数を $0$ にすると、商が1つに定まりません。そのため、通常は、0で割ることは考えません。
おわりに
ここでは、整数の除法について見ました。小学生の時にならった書き方ではなく、 $a=bq+r$ と書くことで、割る数や割られる数の範囲を広げても、割り算を考えることができるようになりました。また、このように考えることで、文字が入った抽象的な場合でも対処できるようになります。
割り算と言っておきながら「÷」の記号は見えませんが、今までの割り算の考え方が応用されていることをおさえておきましょう。