【基本】絶対値と不等式の証明
ここでは、絶対値を使った、不等式の証明問題を考えます。絶対値が入った不等式の証明問題にはいろんなタイプがありますが、ここでは、シンプルなものを扱います。
絶対値の復習
絶対値とは、「数直線上で、その数が原点からどれだけ離れているか」を表すものです(参照:【基本】絶対値)。 a の絶対値は $|a|$ という記号で表します。式で書くと、次のような意味になります。
\begin{eqnarray}
| a |
=
\begin{cases}
a & ( a \geqq 0 ) \\
-a & ( a \lt 0 )
\end{cases}
\end{eqnarray}ゼロ以上ならそのまま、負ならマイナスをつけるということです。その結果、絶対値はつねにゼロ以上の値になります。
絶対値の記号の中の正負によって、絶対値の記号を外すことができます。絶対値が等式や不等式に入っている場合は、そのままでは扱いにくいので、「場合分けによって絶対値を外す」という手法を使うことができます。
絶対値を使ったシンプルな不等式の証明
絶対値を使った不等式のうち、次のようなシンプルなものを考えてみましょう。
両辺に絶対値があって邪魔ですね。しかし、絶対値の中身によって場合分けをすれば、絶対値を外すことができます。
まず、左辺の絶対値を外すには、どう場合分けをすればいいかを考えましょう。これは簡単ですね。絶対値の中身がゼロ以上になるときと負になるときなので、 $a\geqq 0$ と $a\lt 0$ に分ければいいですね。
次に、右辺の絶対値を考えましょう。これも同じように考えると、 $a+1\geqq0$ と $a+1\lt 0$ に分ければいいですね。つまり、 $a\geqq -1$ と $a\lt -1$ です。
以上を合わせると、次の3つの場合、
$a\geqq 0$
$0 \gt a \geqq -1$
$-1 \gt a$
を考えればいいことがわかります。1つ1つ考えていきましょう。
まずは、 $a\geqq0$ のときを考えましょう。このとき、絶対値の中身はどちらもゼロ以上なので、左辺は
\begin{eqnarray}
|a|+1 = a+1
\end{eqnarray}で、右辺は
\begin{eqnarray}
|a+1| = a+1
\end{eqnarray}となり、一致します。よって、不等式が成り立ち、さらにこの場合はいつでも等号が成り立つこともわかります。
続いては、 $0 \gt a \geqq -1$ のときを考えましょう。このとき、左辺は
\begin{eqnarray}
|a|+1 = -a+1
\end{eqnarray}で、右辺は
\begin{eqnarray}
|a+1| = a+1
\end{eqnarray}です。今考えている範囲では $a$ は負なので、 $-a\gt a$ が成り立ちます。よって、左辺は右辺よりも大きくなるので、不等式が成り立つことがわかります。また、等号が成り立たないこともわかります。
最後に、 $-1\gt a$ のときを考えましょう。このとき、左辺は
\begin{eqnarray}
|a|+1 = -a+1
\end{eqnarray}です。右辺は
\begin{eqnarray}
|a+1| = -a-1
\end{eqnarray}となります。左辺は $-a$ に $1$ を加えたもので、右辺は $1$ を引いたものだから、左辺が右辺よりも大きくなることがわかります。よって、不等式が成り立つことがわかり、等号が成り立たないこともわかります。
以上の3つの場合分けから、与えられた不等式が成り立つことがわかります。また、等号が成り立つのは、1つ目の場合から、 $a\geqq 0$ のときであることがわかります。
等号が成り立つのが「 $a$ がある値のとき」という形ではなく、「 $a$ がこの範囲にあるとき」となることもあるんですね。
おわりに
ここでは、絶対値を使った、シンプルな不等式の問題を見ました。場合分けをして絶対値の記号を外しました。
ただ、試験などではこんなにシンプルなものは出題されません。絶対値の中が複雑だったり、たくさんあって場合分けが困難なものが出題されます。そのような問題に対して、場合分けをするのは大変です。もう少し難しい場合にはどうすればいいかは、【標準】絶対値と不等式の証明で扱うことにしましょう。