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東京大学 理系 2024年度 第2問 解説

問題編

問題

 次の関数 $f(x)$ を考える。\[ f(x)=\int_0^1 \frac{|t-x|}{1+t^2}dt \quad (0\leqq x\leqq 1) \]

(1) $0\lt \alpha \lt \dfrac{\pi}{4}$ を満たす実数 $\alpha$ で、 $f'(\tan\alpha)=0$ となるものを求めよ。

(2) (1)で求めた $\alpha$ に対し、 $\tan\alpha$ の値を求めよ。

(3) 関数 $f(x)$ の区間 $0\leqq x\leqq 1$ における最大値と最小値を求めよ。必要ならば、 $0.69\lt \log 2 \lt 0.7$ であることを用いてよい。

考え方

見るからにめんどくさそうな積分ですが、実際めんどくさいです。

(1)は、積分区間にも被積分関数にも $x$ が含まれている点に注意しましょう。

(3)は最小値の計算が面倒ですが、少しだけ工夫をすることができます。


解答編

問題

 次の関数 $f(x)$ を考える。\[ f(x)=\int_0^1 \frac{|t-x|}{1+t^2}dt \quad (0\leqq x\leqq 1) \]

(1) $0\lt \alpha \lt \dfrac{\pi}{4}$ を満たす実数 $\alpha$ で、 $f'(\tan\alpha)=0$ となるものを求めよ。

解答

(1)
\begin{eqnarray} f(x) &=& \int_0^1 \frac{|t-x|}{1+t^2}dt \\[5pt] &=& \int_0^x \frac{x-t}{1+t^2}dt +\int_x^1 \frac{t-x}{1+t^2}dt \\[5pt] &=& \int_0^x \frac{x-t}{1+t^2}dt +\int_1^x \frac{x-t}{1+t^2}dt \\[5pt] &=& x\int_0^x \frac{1}{1+t^2}dt -\int_0^x \frac{t}{1+t^2}dt \\[5pt] & & +x\int_1^x \frac{1}{1+t^2}dt -\int_1^x \frac{t}{1+t^2}dt \\[5pt] \end{eqnarray}となるので、 \begin{eqnarray} f'(x) &=& \int_0^x \frac{1}{1+t^2}dt +x\cdot \frac{1}{1+x^2} -\frac{x}{1+x^2} \\[5pt] & & +\int_1^x \frac{1}{1+t^2}dt +x\cdot \frac{1}{1+x^2} -\frac{x}{1+x^2} \\[5pt] &=& \int_0^x \frac{1}{1+t^2}dt+\int_1^x \frac{1}{1+t^2}dt \end{eqnarray}となる。

ここで、 $t=\tan\theta$ $\left(0\leqq \theta\leqq \dfrac{\pi}{4}\right)$ とすると
\begin{eqnarray} \frac{dt}{d\theta} &=& \frac{1}{\cos^2\theta} =1+\tan^2\theta \\[5pt] &=& 1+t^2 \end{eqnarray}となる。 $x=\tan\alpha$ $\left(0\leqq \alpha\leqq \dfrac{\pi}{4}\right)$ とすると \begin{eqnarray} f'(x) &=& \int_0^x \frac{1}{1+t^2}dt+\int_1^x \frac{1}{1+t^2}dt \\[5pt] &=& \int_0^{\alpha} d\theta+\int_{\frac{\pi}{4}}^{\alpha} d\theta \\[5pt] &=& \alpha-0+\alpha-\frac{\pi}{4} \\[5pt] &=& 2\alpha-\frac{\pi}{4} \\[5pt] \end{eqnarray}なので、 $f'(\tan\alpha)=0$ となる $\alpha$ は、 $\alpha=\dfrac{\pi}{8}$ …(答)

解答編 つづき

問題

(2) (1)で求めた $\alpha$ に対し、 $\tan\alpha$ の値を求めよ。

解答

(2)
$c=\tan\dfrac{\pi}{8}$ とすると
\begin{eqnarray} \tan \left(2\cdot\frac{\pi}{8}\right) &=& \frac{2\tan\frac{\pi}{8}}{1-\tan^2 \frac{\pi}{8}} \\[5pt] 1 &=& \frac{2c}{1-c^2} \\[5pt] 1-c^2 &=& 2c \\[5pt] c^2+2c-1 &=& 0 \\[5pt] c &=& -1\pm\sqrt{2} \\[5pt] \end{eqnarray}となる。 $c\gt 0$ なので、$c=\tan\dfrac{\pi}{8}=\sqrt{2}-1$ …(答)

解答編 つづき

問題

(3) 関数 $f(x)$ の区間 $0\leqq x\leqq 1$ における最大値と最小値を求めよ。必要ならば、 $0.69\lt \log 2 \lt 0.7$ であることを用いてよい。

解答

(3)
$0\leqq x\leqq 1$ のとき、 $x$ が増加するとき $\alpha$ も増加するので、(1)より、 $0\leqq x \lt \dfrac{\pi}{8}$ で $f(x)$ は狭義単調減少、 $\dfrac{\pi}{8}\lt x \leqq 1$ で狭義単調増加である。よって、 $c=\tan\dfrac{\pi}{8}$ とすると、最小値は $f(c)$ で、最大値は $f(0)$ または $f(1)$ である。

(1)の計算より、 $c=\tan\dfrac{\pi}{8}$ は $f'(c)=0$ を満たすので、
\begin{eqnarray} \int_0^c \frac{1}{1+t^2}dt+\int_1^c \frac{1}{1+t^2}dt &=& 0 \end{eqnarray}が成り立つ。よって、(1)で求めた $f(x)$ より、 \begin{eqnarray} f(c) &=& c\int_0^c \frac{1}{1+t^2}dt -\int_0^c \frac{t}{1+t^2}dt \\[5pt] & & +c\int_1^c \frac{1}{1+t^2}dt -\int_1^c \frac{t}{1+t^2}dt \\[5pt] &=& cf'(c) -\int_0^c \frac{t}{1+t^2}dt -\int_1^c \frac{t}{1+t^2}dt \\[5pt] &=& -\left[\frac{1}{2}\log(1+t^2)\right]_0^c -\left[\frac{1}{2}\log(1+t^2)\right]_1^c \\[5pt] &=& -\log(1+c^2)+\frac{1}{2}\log2 \\[5pt] &=& -\log\{1+(\sqrt{2}-1)^2\}+\log\sqrt{2} \\[5pt] &=& -\log(4-2\sqrt{2})+\log\sqrt{2} \\[5pt] &=& \log\frac{\sqrt{2}}{4-2\sqrt{2}} \\[5pt] &=& \log\frac{\sqrt{2}(4+2\sqrt{2})}{16-8} \\[5pt] &=& \log\frac{4\sqrt{2}+4}{8} \\[5pt] &=& \log\frac{\sqrt{2}+1}{2} \\[5pt] \end{eqnarray}となる。

また、
\begin{eqnarray} f(x) &=& x\int_0^x \frac{1}{1+t^2}dt -\int_0^x \frac{t}{1+t^2}dt \\[5pt] & & +x\int_1^x \frac{1}{1+t^2}dt -\int_1^x \frac{t}{1+t^2}dt \\[5pt] \end{eqnarray}に $x=0$ を代入すると \begin{eqnarray} f(0) &=& -\int_1^0 \frac{t}{1+t^2}dt \\[5pt] &=& \int_0^1 \frac{t}{1+t^2}dt \\[5pt] &=& \left[\frac{1}{2}\log(1+t^2)\right]_0^1 \\[5pt] &=& \frac{1}{2}\log 2 \end{eqnarray}となり、 $x=1$ を代入して(1)と同様に置換積分を行うと \begin{eqnarray} f(1) &=& \int_0^1 \frac{1}{1+t^2}dt -\int_0^1 \frac{t}{1+t^2}dt \\[5pt] &=& \int_0^{\frac{\pi}{4}} d\theta -\left[\frac{1}{2}\log(1+t^2)\right]_0^1 \\[5pt] &=& \frac{\pi}{4}-\frac{1}{2}\log 2 \end{eqnarray}となる。

ここで、
\begin{eqnarray} f(1)-f(0) &=& \frac{\pi}{4}-\frac{1}{2}\log 2-\frac{1}{2}\log 2 \\[5pt] &=& \frac{\pi}{4}-\log 2 \\[5pt] &\gt & \frac{3}{4}-0.7 \\[5pt] &=& 0.05 \gt 0 \\[5pt] \end{eqnarray}なので、 $f(1)$ の方が大きい。

以上から、

$x=1$ のとき、最大値 $\dfrac{\pi}{4}-\dfrac{1}{2}\log 2$ をとり、
$x=\tan\dfrac{\pi}{8}$ のとき、最小値 $\log\dfrac{\sqrt{2}+1}{2}$ をとる。(答)

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