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東京大学 理系 2014年度 第4問 解説

問題編

問題

 p, q は実数の定数で、 $0 \lt p \lt 1$, $q \gt 0$ をみたすとする。関数\[ f(x) = (1-p)x +(1-x)(1-e^{-qx}) \]を考える。
 以下の問いに答えよ。必要であれば、不等式 $1+x\leqq e^x$ がすべての実数 x に対して成り立つことを証明なしに用いてよい。

(1) $0 \lt x \lt 1$ のとき、 $0 \lt f(x) \lt 1$ であることを示せ。
(2) $x_0$ は $0 \lt x_0 \lt 1$ をみたす実数とする。数列 $\{x_n\}$ の各項 $x_n$ $(n=1,2,3,\cdots)$ を、\[ x_n = f(x_{n-1}) \]によって順次定める。 $p \gt q$ であるとき、\[ \lim_{n\to\infty} x_n = 0 \]となることを示せ。
(3) $p \lt q$ であるとき、\[ c=f(c), \quad 0 \lt c \lt 1 \]をみたす実数 c が存在することを示せ。

考え方

(1)は、微分して極値を調べる、という手法を使ってしまいがちですが、その必要はありません。与えられた条件から各パーツを組み合わせるだけで、示したい不等式が導けます。

(2)は、(1)から各項が正ということがわかります。あとは上からおさえてはさみうちに持ち込むパターンです。ヒントの式を使います。

(3)は、この形を見た瞬間に平均値の定理や中間値の定理を思いつきたいところです。関数の端っこの挙動を調べて示します。


解答編

問題

 p, q は実数の定数で、 $0 \lt p \lt 1$, $q \gt 0$ をみたすとする。関数\[ f(x) = (1-p)x +(1-x)(1-e^{-qx}) \]を考える。
 以下の問いに答えよ。必要であれば、不等式 $1+x\leqq e^x$ がすべての実数 x に対して成り立つことを証明なしに用いてよい。

(1) $0 \lt x \lt 1$ のとき、 $0 \lt f(x) \lt 1$ であることを示せ。

解答

(1) $p \lt 1$, $x \gt 0$ より $(1-p)x \gt 0$ である。
$0\lt x \lt 1$, $q \gt 0$ より $(1-x)(1-e^{-qx}) \gt 0$ である。
辺々加えると、 $f(x) \gt 0$ が得られる。

また、 $p \gt 0$, $x \gt 0$ より $(1-p)x \lt x$ である。
$x \lt 1$ より $(1-x)(1-e^{-qx}) \lt 1-x$ である。
辺々加えると、 $f(x) \lt 1$ が得られる。

以上から、 $0\lt f(x)\lt 1$ が成り立つ。

解説

答えを見れば、「あぁそうか」という感じになりますが、いきなり微分してしまう人は多いと思います。積の形で書かれているので、まずは各パーツの評価がうまく使えないか試行錯誤してみましょう。普通はそう甘くはないのですが、ここではその方法で解けてしまいます。

初動を間違うと、深みにはまる可能性があります。

解答編 つづき

問題

(2) $x_0$ は $0 \lt x_0 \lt 1$ をみたす実数とする。数列 $\{x_n\}$ の各項 $x_n$ $(n=1,2,3,\cdots)$ を、\[ x_n = f(x_{n-1}) \]によって順次定める。 $p \gt q$ であるとき、\[ \lim_{n\to\infty} x_n = 0 \]となることを示せ。

解答

(2) (1)より、すべての自然数 n に対して $x_n \gt 0$ が成り立つことがわかる。

すべての実数 y について $1+y \leqq e^y$ が成り立つので、 $y=-qx$ とすると
\begin{eqnarray} 1-qx \leqq e^{-qx} \\ 1-e^{-qx} \leqq qx \\ \end{eqnarray}が成り立つ。

よって
\begin{eqnarray} f(x) & \leqq & (1-p)x+(1-x)qx \\ &=& x(1-p+q)-qx^2 \\ & \lt & x(1-p+q) \\ \end{eqnarray}が成り立つ。このことから、\[ 0 \lt x_n \lt x_0 (1-p+q)^n \]が成り立つ。ここで、 $p \lt 1$, $q\gt 0$ より $1-p+q \gt 0$ であり、 $p\gt q$ から $1-p+q \lt 1$ となるので、はさみうちの原理から\[ \lim_{n\to\infty} x_n = 0 \]となる。

解説

(1)から各項が正であることはわかります。さらに $0$ に収束することをいうには、上からの評価を考えないといけません。上からおさえられる条件を導いて、はさみうちの原理を使う方針で解きます。

解答編 つづき

問題

(3) $p \lt q$ であるとき、\[ c=f(c), \quad 0 \lt c \lt 1 \]をみたす実数 c が存在することを示せ。

解答

(3) $g(x)=f(x)-x$ とおく。

\begin{eqnarray} g'(x) &=& (1-p) +(-1)(1-e^{-qx}) +(1-x)\cdot q e^{-qx} -1 \\ \end{eqnarray}なので、 \begin{eqnarray} g'(0) &=& 1-p+q-1 \\ &=& q-p \gt 0 \end{eqnarray}が成り立つ。ここで、 $g(0)=f(0)=0$ なので、 $\displaystyle 0\lt a \lt 1$ で $g(a) \gt 0$ となる実数 a が存在する。

また、 $g(1)=f(1)-1=-p \lt 0$ である。

$g(x)$ は連続な関数なので、中間値の定理から、 $a\lt c \lt 1$ で $g(c)=0$ となる実数 c が存在する。この c は与えられた条件を満たす。よって、題意が示された。

解説

$f(x)$ のまま扱うよりも、 $g(x)=f(x)-x$ とおいて、 $g(c)=0$ となる実数を探す方が考えやすいと思います。 $g(x)$ は連続であり、 $x=0$ のまわりでは正で、 $x=1$ のまわりでは負だから、この間に $g(c)=0$ となる実数 c がある、という流れで示しています。

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