東京大学 文系 2025年度 第3問 解説
問題編
問題
白玉 $2$ 個が横に並んでいる。投げたとき表と裏のでる確率がそれぞれ $\dfrac{1}{2}$ のコインを用いて、次の手順(*) をくり返し、白玉または黒玉を横一列に並べていく。
手順(*) コインを投げ、表がでたら白玉、裏がでたら黒玉を、それまでに並べられている一番右にある玉の右隣におく。そして、新しくおいた玉の色がその 1つ左の玉の色と異なり、かつ 2つ左の玉の色と一致するときには、新しくおいた玉の 1つ左の玉を新しくおいた玉と同じ色の玉にとりかえる。
例えば、手順(*) を 2回行いコインが裏、表の順にでた場合には、白玉が 4つ並ぶ。 正の整数 $n$ に対して、手順(*) を $n$ 回行った時点での $(n+2)$ 個の玉の並び方を考える。
(1) $n = 3$ のとき、右から 2番目の玉が白玉である確率を求めよ。
(2) $n$ を正の整数とする。右から 2番目の玉が白玉である確率を求めよ。
(3) $n$ を正の整数とする。右から 1番目と 2番目の玉がともに白玉である確率を求めよ。
考え方
置いた玉のすぐ左側が変わる可能性があるので、最後の玉だけでなく、その1つ左の玉もあわせてみる必要があります。確率漸化式の問題ですが、状態が多いのでなかなか解きづらいです。
解答編
問題
白玉 $2$ 個が横に並んでいる。投げたとき表と裏のでる確率がそれぞれ $\dfrac{1}{2}$ のコインを用いて、次の手順(*) をくり返し、白玉または黒玉を横一列に並べていく。
手順(*) コインを投げ、表がでたら白玉、裏がでたら黒玉を、それまでに並べられている一番右にある玉の右隣におく。そして、新しくおいた玉の色がその 1つ左の玉の色と異なり、かつ 2つ左の玉の色と一致するときには、新しくおいた玉の 1つ左の玉を新しくおいた玉と同じ色の玉にとりかえる。
例えば、手順(*) を 2回行いコインが裏、表の順にでた場合には、白玉が 4つ並ぶ。 正の整数 $n$ に対して、手順(*) を $n$ 回行った時点での $(n+2)$ 個の玉の並び方を考える。
(1) $n = 3$ のとき、右から 2番目の玉が白玉である確率を求めよ。
解答
(1)
白玉を 0、黒玉を 1 で表す。
新しく置いた玉と、手順を行ったことで最終的な玉の並びの対応は以下のようになる。
新しく置いた玉 | 最終的な並び |
---|---|
0,0,0 | 0,0,0,0,0 |
0,0,1 | 0,0,0,0,1 |
0,1,0 | 0,0,0,0,0 |
0,1,1 | 0,0,0,1,1 |
1,0,0 | 0,0,0,0,0 |
1,0,1 | 0,0,0,0,1 |
1,1,0 | 0,0,1,1,0 |
1,1,1 | 0,0,1,1,1 |
なお、「0,1,0」「1,0,0」「1,0,1」と並べたときには、玉の入れ替えが発生している。
上の各行は等しい確率で起こるので、右から2番目の玉が白玉(0)である確率は、$\dfrac{5}{8}$ …(答)
解答編 つづき
問題
(2) $n$ を正の整数とする。右から 2番目の玉が白玉である確率を求めよ。
(3) $n$ を正の整数とする。右から 1番目と 2番目の玉がともに白玉である確率を求めよ。
解答
(2)
手順(*) を $n$ 回行った時点で、右から2番目と1番目の玉が、白白、白黒、黒白、黒黒である確率を、それぞれ $a_n,b_n,c_n,d_n$ とおく。
白黒の次に白を置く場合は、取り換えが起こり、白白白になる。黒白の次に黒を置く場合は、取り換えが起こり、黒黒黒になる。これ以外で取り換えは起こらないので、以下のような関係式が成り立つ。
\begin{eqnarray}
a_{n+1} &=& \frac{1}{2}a_n & +\frac{1}{2}b_n & +\frac{1}{2}c_n & \\[5pt]
b_{n+1} &=& \frac{1}{2}a_n & & & \\[5pt]
c_{n+1} &=& & & & & \frac{1}{2}d_n \\[5pt]
d_{n+1} &=& & \frac{1}{2}b_n & +\frac{1}{2}c_n & + & \frac{1}{2}d_n \\[5pt]
\end{eqnarray}
ここで、
\begin{eqnarray}
a_{n+1}-d_{n+1}
&=&
\frac{1}{2}(a_n-d_n)
\end{eqnarray}が成り立つ。これと $a_1=\dfrac{1}{2}$ と $d_1=0$ より
\begin{eqnarray}
a_n-d_n
&=&
\frac{1}{2^{n-1}}(a_1-d_1) \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2^n} \\[5pt]
\end{eqnarray}が成り立つ。
また、 $a_n+b_n+c_n+d_n=1$ であることを使うと
\begin{eqnarray}
a_{n+1}+d_{n+1} &=& \frac{1}{2}a_n +b_n +c_n+\frac{1}{2} d_n \\[5pt]
&=& \frac{1}{2}a_n +(1-a_n+d_n)+\frac{1}{2} d_n \\[5pt]
&=& 1-\frac{1}{2}(a_n+d_n) \\[5pt]
\end{eqnarray}が成り立つ。これより
\begin{eqnarray}
a_{n+1}+d_{n+1} -\frac{2}{3} &=& -\frac{1}{2} \left(a_n+d_n -\frac{2}{3} \right)
\end{eqnarray}が成り立つので
\begin{eqnarray}
a_n+d_n
&=&
\frac{2}{3} +\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1} \left(a_1+d_1 -\frac{2}{3} \right) \\[5pt]
&=&
\frac{2}{3} +\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1} \left(-\frac{1}{6} \right) \\[5pt]
&=&
\frac{2}{3} +\frac{1}{3}\left(-\frac{1}{2}\right)^n \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
よって、
\begin{eqnarray}
a_n
&=&
\frac{1}{2} \left\{\frac{1}{2^n} +\frac{2}{3} +\frac{1}{3}\left(-\frac{1}{2}\right)^n \right\} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2^{n+1}} +\frac{1}{3} -\frac{1}{3}\left(-\frac{1}{2}\right)^{n+1} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
また、 $b_{n+1}=\dfrac{1}{2}a_n$ なので、 $n\geqq 2$ のときは
\begin{eqnarray}
b_n
&=&
\frac{1}{2} a_{n-1} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2} \left\{ \frac{1}{2^n} +\frac{1}{3} -\frac{1}{3}\left(-\frac{1}{2}\right)^n \right\} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2^{n+1}} +\frac{1}{6} +\frac{1}{3}\left(-\frac{1}{2}\right)^{n+1} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。 $n=1$ とすると
\begin{eqnarray}
& &
\frac{1}{2^{1+1}} +\frac{1}{6} +\frac{1}{3}\left(-\frac{1}{2}\right)^{1+1} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{4} +\frac{1}{6} +\frac{1}{3}\cdot\frac{1}{4} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となり、 $n=1$ のときも成り立つ。
右から2番目が白玉である確率は、 $a_n+b_n$ なので、
\begin{eqnarray}
& &
a_n+b_n \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2^{n+1}} +\frac{1}{3} -\frac{1}{3}\left(-\frac{1}{2}\right)^{n+1}
+\frac{1}{2^{n+1}} +\frac{1}{6} +\frac{1}{3}\left(-\frac{1}{2}\right)^{n+1} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2^n} +\frac{1}{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。…(答)
(3)
求める確率は、(2)の $a_n$ なので\[ \frac{1}{2^{n+1}} +\frac{1}{3} -\frac{1}{3}\left(-\frac{1}{2}\right)^{n+1} \]…(答)