東京大学 文系 2023年度 第1問 解説
問題編
問題
$k$ を正の実数とし、2次方程式 $x^2+x-k=0$ の2つの実数解を $\alpha,\beta$ とする。 $k$ が $k\gt 2$ の範囲を動くとき、\[ \frac{\alpha^3}{1-\beta}+\frac{\beta^3}{1-\alpha} \]の最小値を求めよ。
考え方
$\alpha, \beta$ のままだと考えにくいで、 $k$ できれいに表すようにしましょう。分母に文字が残りますが、このような場合に文系の範囲で最小値を求める場合には、王道のアレを使います。
解答編
問題
$k$ を正の実数とし、2次方程式 $x^2+x-k=0$ の2つの実数解を $\alpha,\beta$ とする。 $k$ が $k\gt 2$ の範囲を動くとき、\[ \frac{\alpha^3}{1-\beta}+\frac{\beta^3}{1-\alpha} \]の最小値を求めよ。
解答
$k\gt 2$ のとき、2次方程式 $x^2+x-k=0$ の判別式 $1+4k$ は正なので、必ず実数解が存在する。
解と係数の関係より
\begin{eqnarray}
\alpha+\beta &=& -1 \\[5pt]
\alpha\beta &=& -k \\[5pt]
\alpha^2+\beta^2 &=& (\alpha+\beta)^2-2\alpha\beta \\[5pt]
&=&
1+2k \\[5pt]
\alpha^3+\beta^3 &=& (\alpha+\beta)(\alpha^2-\alpha\beta+\beta^2) \\[5pt]
&=&
-(1+2k+k) \\[5pt]
&=&
-1-3k \\[5pt]
\alpha^4+\beta^4 &=& (\alpha^2+\beta^2)^2-2\alpha^2\beta^2 \\[5pt]
&=& (1+2k)^2-2(-k)^2 \\[5pt]
&=&
2k^2+4k+1
\end{eqnarray}となるので
\begin{eqnarray}
& &
\frac{\alpha^3}{1-\beta}+\frac{\beta^3}{1-\alpha} \\[5pt]
&=&
\frac{\alpha^3(1-\alpha)+\beta^3(1-\beta)}{(1-\beta)(1-\alpha)} \\[5pt]
&=&
\frac{\alpha^3+\beta^3-(\alpha^4+\beta^4)}{1-(\alpha+\beta)+\alpha\beta} \\[5pt]
&=&
\frac{-1-3k-(2k^2+4k+1)}{1-(-1)-k} \\[5pt]
&=&
\frac{-2k^2-7k-2}{2-k} \\[5pt]
&=&
\frac{2k^2+7k+2}{k-2} \\[5pt]
&=&
2k+11+\frac{24}{k-2} \\[5pt]
&=&
2(k-2)+15+\frac{48}{2(k-2)} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。ここで、 $k\gt 2$ だから、相加平均・相乗平均の関係より
\begin{eqnarray}
& &
2(k-2)+15+\frac{48}{2(k-2)} \\[5pt]
& \geqq &
2\sqrt{2(k-2)\cdot \frac{48}{2(k-2)}} +15 \\[5pt]
& = &
2\sqrt{48} +15 \\[5pt]
& = &
8\sqrt{3} +15 \\[5pt]
\end{eqnarray}が成り立つ。等号が成り立つのは $2(k-2)=\dfrac{48}{2(k-2)}$ のとき、つまり、 $(k-2)^2=12$ なので、 $k=2+2\sqrt{3}$ のときである。
以上から、 $k=2+2\sqrt{3}$ のとき、最小値 $8\sqrt{3}+15$ をとる。(答)