京都大学 理学部特色入試 2026年度 第3問 解説
(2025年11月に行われた特色入試の問題です。)
問題編
問題
$a$ を正の実数とする。正の実数 $t$ に対して、不等式\[ x^2+y^2+a^2z^2\leqq t^2 \]を満たす点 $(x,y,z)$ 全体からなる集合を $V(t)$ とする。また、 $V(t)$ に含まれる点 $(x,y,z)$ のうち、 $x,y,z$ がすべて整数であるものの個数を $N(t)$ とする。このとき、\[ \lim_{t\to\infty} \frac{N(t)}{t^3} \]を求めよ。
考え方
答えはイメージしやすいですが、どうやって説明するかが問題です。空間のときの格子点はあまり出てこないので、説明しにくいかもしれません。 $a$ の扱いも、やり方をミスるとめんどくさいことになってしまうので注意です。
解答編
問題
$a$ を正の実数とする。正の実数 $t$ に対して、不等式\[ x^2+y^2+a^2z^2\leqq t^2 \]を満たす点 $(x,y,z)$ 全体からなる集合を $V(t)$ とする。また、 $V(t)$ に含まれる点 $(x,y,z)$ のうち、 $x,y,z$ がすべて整数であるものの個数を $N(t)$ とする。このとき、\[ \lim_{t\to\infty} \frac{N(t)}{t^3} \]を求めよ。
解答
$(p,q,r)=(x,y,az)$ とおく。
点 $(x,y,z)$ が $V(t)$ に含まれることと、点 $(p,q,r)$ が球 $p^2+q^2+r^2\leqq t^2$ に含まれることは同値である。この球を $B(t)$ と置くことにする。
$x,y,z$ がすべて整数であることは、 $p,q$ が整数で $r$ が「 $a\times$ (整数) 」と書けることと同値である。点 $(p,q,r)$ がこのように書けるとき、この点を「 $a$ 格子点」と呼ぶことにする。
$B(t)$ に含まれる各「$a$ 格子点」に対し、その点を中心とし、各面が $xy$ 平面、 $yz$ 平面、 $zx$ 平面に平行で、1辺の長さが $1$ の正方形を底面とし、高さを $a$ とする直方体を考える( $xy$ 平面と平行な面を底面と考える)。
各直方体の体積は $a$ で、互いに重ならないので、この $N(t)$ 個の直方体全体からなる立体 $U(t)$ の体積は、 $a N(t)$ と一致する。
各直方体の対角線は $\sqrt{1^2+1^2+a^2}=\sqrt{a^2+2}$ である。この半分の長さ $\dfrac{\sqrt{a^2+2}}{2}$ を $d$ とおく。
まず、球 $B(t+d)$ と立体 $U(t)$ との関係について考える。 $B(t)$ に含まれる「$a$ 格子点」は、原点からの距離が $t$ 以下であり、その点からその点を含む直方体内の点との距離は $d$ 以下なので、直方体内の点と原点との距離は最大でも $t+d$ なので、 $U(t)$ 内の点は球 $B(t+d)$ に含まれる。よって、これらの体積を比較すると\[ a N(t) \leqq \dfrac{4\pi}{3}(t+d)^3 \]が成り立つ。
次に、球 $B(t-d)$ と立体 $U(t)$ との関係について考える。 $B(t-d)$ に含まれる点は、ある「$a$ 格子点」を中心とする直方体に含まれる。この「$a$ 格子点」と原点との距離は最大でも $t-d+d=t$ なので、球 $B(t-d)$ 内の点は立体 $U(t)$ に含まれる。よって、これらの体積を比較すると\[ \dfrac{4\pi}{3}(t-d)^3 \leqq a N(t) \]が成り立つ。
以上から、
\begin{eqnarray}
& & \dfrac{4\pi}{3}(t-d)^3 \leqq a N(t) \leqq \dfrac{4\pi}{3}(t+d)^3 \\[5pt]
& & \dfrac{4\pi}{3a} \left(1-\frac{d}{t}\right)^3 \leqq \frac{N(t)}{t^3} \leqq \dfrac{4\pi}{3a}\left(1+\frac{d}{t}\right)^3 \\[5pt]
\end{eqnarray}が成り立つので、はさみうちの原理から
\begin{eqnarray}
\lim_{t\to\infty} \frac{N(t)}{t^3}=\frac{4\pi}{3a}
\end{eqnarray}となる。…(答)





