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京都大学 理学部特色入試 2026年度 第2問 解説

(2025年11月に行われた特色入試の問題です。)

問題編

問題

 $N$ を自然数とする。コインを $N$ 回投げ、関数 $f_0(x),$ $f_1(x),$ $\cdots,$ $f_N(x)$ を次で帰納的に定める。

\begin{align} & f_0(x) = e^x \\ & f_n(x) = \begin{cases} f'_{n-1}(x) & (n\text{回目に投げたコインが表の場合}) \\ xf_{n-1}(x) & (n\text{回目に投げたコインが裏の場合}) \end{cases} \quad (n=1,2,\cdots,N) \end{align}

このとき、 $f_N(0)$ が奇数である確率を求めよ。ただし、コインを投げて出る結果は各回で独立であり、コインを1回投げたときに表と裏が出る確率はそれぞれ $\dfrac{1}{2}$ であるとする。

考え方

途中の操作をまじめに追っていくとめんどうなのですが、最終的に知りたいのは $f_N(0)$ が奇数である確率だけです。不要な情報は捨てて、本質的なところだけ追っていくようにすると、案外把握しやすくなります。

解答編

問題

 $N$ を自然数とする。コインを $N$ 回投げ、関数 $f_0(x),$ $f_1(x),$ $\cdots,$ $f_N(x)$ を次で帰納的に定める。

\begin{align} & f_0(x) = e^x \\ & f_n(x) = \begin{cases} f'_{n-1}(x) & (n\text{回目に投げたコインが表の場合}) \\ xf_{n-1}(x) & (n\text{回目に投げたコインが裏の場合}) \end{cases} \quad (n=1,2,\cdots,N) \end{align}

このとき、 $f_N(0)$ が奇数である確率を求めよ。ただし、コインを投げて出る結果は各回で独立であり、コインを1回投げたときに表と裏が出る確率はそれぞれ $\dfrac{1}{2}$ であるとする。

解答

まず、 $f_n(x)$ は、$x$ の多項式 $P_n(x)$ を使って、\[ f_n(x)=P_n(x)e^x \]とかけることを示す。

(i) $n=0$ のときは、 $P_0(x)=1$ とすればよいので成り立つ。

(ii) $n=k$ のときに、多項式 $P_k(x)$ を使って、 $f_k(x)=P_k(x)e^x$ とかけているとする。

$n=k+1$ のときに、表が出れば $f_{k+1}(x)=f'(x)$ なので
\begin{eqnarray} f_{k+1}(x) &=& (P_k(x)+P'_k(x)) e^x \end{eqnarray}となる。 $P_k(x)+P'_k(x)$ は多項式である。

裏が出れば
\begin{eqnarray} f_{k+1}(x) &=& xP_k(x) e^x \end{eqnarray}となる。 $xP_k(x)$ は多項式である。

よって、いずれの場合も、多項式 $P_{k+1}(x)$ を使って、$f_{k+1}(x)=P_{k+1}(x)e^x$ とかける。

以上より、数学的帰納法から、$f_n(x)$ は、$x$ の多項式 $P_n(x)$ を使って、\[ f_n(x)=P_n(x)e^x \]とかけることが示せた。


$f_N(0)=P_N(0)e^0=P_N(0)$ なので、 $P_N(x)$ の定数項が奇数である確率を求めればよい。

先ほど見たことから、 $P_n(x)$ の $k$ 次の係数が $P_N(x)$ の定数項に影響を与えるのは、この項を微分したときのみである。ここで、 $x^2$ を微分すると $2x$ となり、かならず係数が偶数になることから、 $k\geqq 2$ のときは、 $P_n(x)$ の $k$ 次の係数は $P_N(x)$ の定数項の偶奇に影響しない。

つまり、 $P_N(x)$ の定数項の偶奇を考えるときには、 $P_n(x)$ の定数項と1次の項の係数のみを考えればよい。また、偶奇のみを考えるから、以下では係数を $\bmod 2$ で考える。

$n=k$ のときに、定数項、1次の項を $(p_{k,0},p_{k,1})$ のように表すことにすると、 $n=k+1$ 回目のコインの結果によって、係数は以下のように変わる。

$(0,0)$ $(0,0)$ $(0,0)$
$(0,1)$ $(1,1)$ $(0,0)$
$(1,0)$ $(1,0)$ $(0,1)$
$(1,1)$ $(0,1)$ $(0,1)$

これより、 $(p_{n,0},p_{n,1})$ が $(0,0),$ $(0,1),$ $(1,0),$ $(1,1)$ になる確率を、それぞれ、 $a_n, b_n, c_n, d_n$ と表すことにすると、以下のような関係式が成り立つ。
\begin{eqnarray} a_{n+1} &=& a_n+\frac{1}{2}b_n \\[5pt] b_{n+1} &=& \frac{1}{2}c_n+d_n \\[5pt] c_{n+1} &=& \frac{1}{2}c_n \\[5pt] d_{n+1} &=& \frac{1}{2}b_n \\[5pt] \end{eqnarray}なお、求める確率は、 $c_N+d_N$ である。

$c_0=1$ だから、\[ c_n=\frac{1}{2^n} \]となる。これより
\begin{eqnarray} d_{n+2} &=& \frac{1}{2}b_{n+1} \\[5pt] &=& \frac{1}{4}c_n+\frac{1}{2}d_n \\[5pt] &=& \frac{1}{2^{n+2}}+\frac{1}{2}d_n \\[5pt] \end{eqnarray}が成り立つ。ここで、 $e_n=2^nd_n$ とおくと \begin{eqnarray} d_{n+2} &=& \frac{1}{2^{n+2}}+\frac{1}{2}d_n \\[5pt] 2^{n+2} d_{n+2} &=& 1+2\cdot 2^nd_n \\[5pt] e_{n+2} &=& 1+2e_n \\[5pt] e_{n+2}+1 &=& 2(e_n+1) \\[5pt] \end{eqnarray}となる。

$n$ が偶数のとき、 $e_0=0$ だから
\begin{eqnarray} e_n +1 &=& 2^{\frac{n}{2}} \\[5pt] 2^nd_n &=& 2^{\frac{n}{2}}-1 \\[5pt] d_n &=& \frac{2^{\frac{n}{2}}-1}{2^n} \\[5pt] \end{eqnarray}となるので、 \begin{eqnarray} c_n+d_n &=& \frac{1}{2^n}+\frac{2^{\frac{n}{2}}-1}{2^n} \\[5pt] &=& \frac{2^{\frac{n}{2}}}{2^n} \\[5pt] &=& \frac{1}{2^{\frac{n}{2}}} \\[5pt] \end{eqnarray}となる。

$n$ が奇数のとき、 $e_0=0$ だから
\begin{eqnarray} e_n +1 &=& 2^{\frac{n-1}{2}} \\[5pt] 2^nd_n &=& 2^{\frac{n-1}{2}}-1 \\[5pt] d_n &=& \frac{2^{\frac{n-1}{2}}-1}{2^n} \\[5pt] \end{eqnarray}となるので、 \begin{eqnarray} c_n+d_n &=& \frac{1}{2^n}+\frac{2^{\frac{n-1}{2}}-1}{2^n} \\[5pt] &=& \frac{2^{\frac{n-1}{2}}}{2^n} \\[5pt] &=& \frac{1}{2^{\frac{n+1}{2}}} \\[5pt] \end{eqnarray}となる。

以上から、求める確率は

 $N$ が偶数のとき、 $\dfrac{1}{2^{\frac{N}{2}}}$

 $N$ が奇数のとき、 $\dfrac{1}{2^{\frac{N+1}{2}}}$

…(答)

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