京都大学 理学部特色入試 2024年度 第1問 解説
(2023年11月に行われた特色入試の問題です。)
問題編
問題
$2$ 以上の自然数 $n$ に対して、 $n$ を割り切る素数の個数を $f(n)$ とする。例えば $n=120$ のとき、 $120$ を割り切る素数は $2$ と $3$ と $5$ なので、 $f(120)=3$ である。不等式 $f(n)\geqq \dfrac{\sqrt{n}}{2}$ を満たす $2$ 以上の自然数 $n$ をすべて求めよ。
考え方
いろいろ実験をしてみるとわかりますが、 $f(n)$ が大きい場合、 $n$ はすごく大きくなり、 $\dfrac{\sqrt{n}}{2}$ も大きくなってしまいます。なので、 $f(n)$ が小さいときはしらみつぶしに調べて、大きいときは存在しないことを示す、という方針で考えるのが王道でしょう。
$f(n)$ が大きいときに条件を満たすものが存在しないことを示すには、いろいろやり方が考えられますが、割り切る素数自体が大きくなってしまうことが使えそうです。
解答編
問題
$2$ 以上の自然数 $n$ に対して、 $n$ を割り切る素数の個数を $f(n)$ とする。例えば $n=120$ のとき、 $120$ を割り切る素数は $2$ と $3$ と $5$ なので、 $f(120)=3$ である。不等式 $f(n)\geqq \dfrac{\sqrt{n}}{2}$ を満たす $2$ 以上の自然数 $n$ をすべて求めよ。
解答
$n$ を素因数分解し、 $n=p_1^{a_1}p_2^{a_2}\cdots p_m^{a_m}$ と表すことにする。ここで、 $p_1,p_2\cdots,p_m$ は素数で、 $p_1\lt p_2\lt \cdots \lt p_m$ を満たし、 $a_1,a_2,\cdots,a_m$ は正の整数とする。このような表し方は1通りである。
このとき、 $f(n)=m$ である。
$m$ は正なので、 $f(n)\geqq \dfrac{\sqrt{n}}{2}$ は $4m^2\geqq n$ と同値だから、以下では $4m^2\geqq n$ を満たすものを求める。
(i) $m=1$ のとき
$4\geqq n$ の範囲で $m=1$ を満たすものは、 $n=2,3,4$ である。
(ii) $m=2$ のとき
$16\geqq n$ の範囲で $m=2$ を満たすものは、 $n=6,10,12,14,15$ のみである。
(iii) $m=3$ のとき
$36\geqq n$ の範囲で条件を満たすものを考える。
$n=2\cdot 3\cdot 5=30$ とすると、 $m=3$ と $36\geqq n$ を満たす。
一方、 $m=3$ となるような $n$ で $30$ 以外のものは、少なくとも $2\cdot 3\cdot 7=42$ 以上なので、 $30$ 以外に条件を満たすものはない。
以上から、このときに条件を満たすものは $n=30$ のみである。
(iv) $m\geqq 4$ のとき
$2$ 以外の素数は奇数である。よって、 $k\geqq 2$ のとき、 $k$ 番目に小さい素数は $2k-1$ 以上である。このことから
\begin{eqnarray}
n
&=&
p_1^{a_1}p_2^{a_2}\cdots p_m^{a_m} \\[5pt]
&\geqq &
2^{1} \cdot p_{m-1}^1 \cdot p_m^1 \\[5pt]
&\geqq &
2 \cdot (2m-3)\cdot (2m-1) \\[5pt]
&=&
2(4m^2-8m+3) \\[5pt]
&=&
4m^2+4m^2-16m+6 \\[5pt]
&=&
4m^2+4m(m-4)+6 \\[5pt]
&\geqq &
4m^2+6 \\[5pt]
&\gt&
4m^2 \\[5pt]
\end{eqnarray}なので、この場合、 $4m^2\geqq n$ を満たす $n$ は存在しない。
(i)~(iv)より、 $n=2,3,4,6,10,12,14,15,30$ …(答)