🏠 Home / 京都大学 / 京大理系

京都大学 理系 2015年度 第5問 解説

問題編

問題

a,b,c,d,e を正の実数として整式
\begin{eqnarray} f(x) &=& ax^2+bx+c \\ g(x) &=& dx+e \end{eqnarray}を考える。すべての正の整数 n に対して $\displaystyle \frac{f(n)}{g(n)}$ は整数であるとする。このとき、 $f(x)$ は $g(x)$ で割り切れることを示せ。

考え方

でました。この年一番の「何をどうしたらいいのかよくわからない問題」です。

2次式を1次式で割るので、余りは定数です。割り切れることを示すということは、この定数が0になることを示すということです。今、余りは $\displaystyle c-\frac{e}{d}b-\frac{e^2}{d^2}a$ と具体的に書くことはできます。しかし、ここから先に進むことができません。条件から、 $\displaystyle \frac{f(n)}{g(n)}$ は整数ですが、その値については何もわからないので、 a, b, cd, e の間の関係式は出てきません。

ですので、別の道を考えてみます。割り算の問題でよくあるのは、商と余りを使って次のように書く方法です。
\begin{eqnarray} f(x) &=& (px+q) g(x) + r \end{eqnarray} ここで、 $r=0$ が言えないかを考えてみます。条件にある $\displaystyle \frac{f(n)}{g(n)}$ が出てくるように $g(x)$ で両辺を割ると
\begin{eqnarray} \frac{f(x)}{g(x)} &=& px+q + \frac{r}{g(x)} \end{eqnarray} となります。条件から、x にどんな正の整数を入れても、この式は整数になります。

ここで注目したいのが、 $\displaystyle \frac{r}{g(x)}$ の部分です。とても大きな整数を入れていくと、これは0に近づいていきます。 $px+q$ の小数部分と打ち消し合って整数になるということも考えられますが、そんなにうまいこといくんでしょうか。

q が邪魔だし、x によって px が変わるのもめんどうなので、 $x=n+1,n$ として差をとってみましょう。
\begin{eqnarray} \frac{f(n+1)}{g(n+1)} - \frac{f(n)}{g(n)} &=& p + \frac{r}{g(n+1)} - \frac{r}{g(n)} \end{eqnarray} すっきりしました。さらにもう一度差をとれば、 p も消えます。そのときの右辺は n を大きくすると限りなく0に近づける一方、左辺は整数なので、 $r=0$ が言えそうです。

解答に書くのは大変ですが、ここまでのことをまとめましょう。


解答編

問題

a,b,c,d,e を正の実数として整式
\begin{eqnarray} f(x) &=& ax^2+bx+c \\ g(x) &=& dx+e \end{eqnarray}を考える。すべての正の整数 n に対して $\displaystyle \frac{f(n)}{g(n)}$ は整数であるとする。このとき、 $f(x)$ は $g(x)$ で割り切れることを示せ。

解答

$f(x) = (px+q) g(x) + r$ と書ける。このとき、 $\displaystyle \frac{f(x)}{g(x)} = px + q+ \frac{r}{g(x)}$ である。

n を正の整数とすると、
\begin{eqnarray} & & \frac{f(n+2)}{g(n+2)} - 2 \frac{f(n+1)}{g(n+1)} + \frac{f(n)}{g(n)} \\[5pt] &=& p(n+2)+q + \frac{r}{g(n+2)} \\[5pt] & & -2 \left\{ p(n+1)+q + \frac{r}{g(n+1)} \right\} \\[5pt] & & + pn+q + \frac{r}{g(n)} \\[5pt] &=& r \left( \frac{1}{g(n+2)} -\frac{2}{g(n+1)} + \frac{1}{g(n)} \right) \quad \cdots (1) \end{eqnarray} となる。条件より左辺は整数なので、(1)は整数である。

(1)のカッコ内を $F_n$ とすると、 $\displaystyle \lim_{n\to\infty}F_n=0$ である。また、カッコ内の各項の分母は n の一次式なので、カッコ内が0になる n は高々2個しかない。

$r\ne 0$ とすると、 $\displaystyle 0\lt |F_N| \lt \frac{1}{|r|}$ となる整数 N が存在する。このとき、(1)の絶対値は0より大きく1より小さくなり、(1)が整数であることに矛盾する。

よって $r=0$ であり、 $f(x)$ は $g(x)$ で割り切れる。

(解答終)

解説

n をどれだけ大きくしても、 $\displaystyle \frac{f(n)}{g(n)}$ が整数である、ということを用いて、「余りは0しかありえない」ということを示します。上の解答では、 $n+2$ のときと $n+1$ のときとの差、 $n+1$ のときと $n$ のときとの差を考え、さらにその差について考えています。こうすると、 pq も消えて、議論がしやすくなります。

他のやり方としては、 $n+1$ のときと $n$ のときとの差をとって、 $p+r\times$(n の式)を考える、という方法もあるでしょう。2項目はいくらでも小さくできるので、この式がどんな整数 n に対しても整数になるには、 $r=0$ しかない、という方法です。上の解答と似たような議論で示すことができます。

ちなみに、 $r=0$ から、 pq も整数であることがわかります。

抽象的で手を付けづらい上に、ちゃんと答案を書くのも難しいため、難易度の高い問題です。

関連するページ

YouTubeもやってます

チャンネル登録はコチラから (以下は、動画のサンプルです)
【むずかしい】防衛医科大学校2024年度数学第5問 藤田医科大学2024年度後期数学第1問8 岡山大学2024年度数学文理共通第1問 埼玉大学文系2024年度数学第3問 順天堂大学医学部2024年度数学第3問 東北大学2024年度後期数学文理共通第4問