【基本】不等式の証明

ここでは、不等式の証明について見ていきます。不等式の証明にはいろんなパターンがありますが、ここではとても基本的な事柄を扱います。

【広告】

不等式の例題

例題
$a \gt b$, $c \gt d$ のとき、次の不等式が成り立つことを示しなさい。\[ ac+bd \gt ad+bc \]

【基本】恒等式の証明で見たように、等式の証明の場合は、「両辺を変形して、両者が同じ形になることを示す」「左辺から右辺を引いて、ゼロになることを示す」といった方法がありました。不等式の場合は、この2つ目の方法に似た「大きい方から小さい方を引いて、正になることを示す」という方針で解くと、示しやすいことが多いです。

今の場合なら、与えられた不等式の左辺から右辺を引くと
\begin{eqnarray}
& &
(ac+bd)-(ad+bc)\\
&=&
ac-ad+bd-bc \\
&=&
a(c-d)-b(c-d) \\
&=&
(a-b)(c-d) \\
\end{eqnarray}と変形できます。条件から、 $a-b \gt 0$ と $c-d \gt 0$ がわかるので、最後の式は2つの正の数の積だから、正であることがわかります。よって、\[ ac+bd \gt ad+bc \]が成り立つことが示せました。

このように、大きい方から小さい方を引いて、正になることやゼロ以上になることを示すようにしましょう。その際、どうやって与えられた条件を使うかは、問題によって違いますが、よく使う基本的なものを次にまとめておきましょう。

実数の大小関係

不等式の証明問題では、大きい方から小さい方を引いて、それが正であることやゼロ以上であることを示す、という方針で考えることが多いです。ただ、その不等式は、無条件ではなく、ある条件下で成り立つことがほとんどです(上の問題なら、 $a\gt b$ など)。なので、こうした条件をどう使うかをここでは見ていきましょう。

まず、ごく当たり前のことですが、2つの実数 a, b について、下の3つのうちどれかが成り立ちます。\[ a\gt b, \ a=b, \ a\lt b \]成り立つものは1つだけです。

また、実数の大小関係について、次が成り立ちます。

実数の大小関係の基本性質
  1. $a\gt b$, $b \gt c$ ならば、 $a \gt c$
  2. $a\gt b$ ならば、 $a+c \gt b+c$, $a-c \gt b-c$
  3. $a\gt b$, $c\gt 0$ ならば、 $ac \gt bc$, $\dfrac{a}{c} \gt \dfrac{b}{c}$
  4. $a\gt b$, $c\lt 0$ ならば、 $ac \lt bc$, $\dfrac{a}{c} \lt \dfrac{b}{c}$

詳しくは、【基本】不等式の性質でもまとめていますが、簡単に見ていきましょう。

1つ目は、よく考えれば当たり前ですね。 $a$ は $b$ より大きくて、 $b$ は $c$ より大きいんだから、 $a$ と $c$ なら $a$ の方が大きくなります。

2つ目は、ある不等式の両辺に、何かを足したり引いたりしても、不等式が成り立つ、ということです。傾いている天秤やシーソーに、同じ重さのおもりをのせるところなどを想像すれば、成り立つことは直感的に理解できるでしょう。

3つ目と4つ目は、少し注意が必要です。正の数を掛けたり割ったりしても不等式が成り立つ、負の数を掛けたり割ったりした場合は、不等号の向きが逆の不等式が成り立つ、ということです。つまり、不等式の両辺に何かを掛けたり割ったりするときは、正の数をかけるのか、負の数をかけるのかを、常に意識しておかないといけない、ということです。それによって、不等号の向きが変わってしまうからです。

ちなみに、上の例題では次のように書いている部分があります:「条件から、 $a-b \gt 0$ と $c-d \gt 0$ がわかるので、最後の式は2つの正の数の積だから、正であることがわかります」。掛け算なので、掛けている数の符号に注意しているんですね。

不等式の条件式を変形する場合や、示したい不等式を変形するときに、両辺に何かを掛けたり何かで割る場合には、その数の符号に注意するということ、これはとても大事です。解答でも、必ず符号について言及するようにしましょう。

おわりに

ここでは、不等式の証明問題に関する基本的な事柄を見てきました。掛け算割り算のときに符号に注意することを忘れないようにしましょう。