【標準】平面に下ろした垂線と空間ベクトル
ここでは、ある点から平面に下ろした垂線を考える問題で、空間ベクトルを使う方法を見ていきます。
例題
ベクトルが出てきませんが、ベクトルを使ってみます。今までに見た内容を組み合わせれば解くことができます。
$\mathrm{H}$ の座標を $(p,q,r)$ とします。
3点 $\mathrm{A,B,C}$ はそれぞれ $x$ 軸、 $y$ 軸、 $z$ 軸上にあり、どれも原点ではないので、3点は同一直線上にはないことがわかります。このことと、 $\mathrm{H}$ が平面 $\alpha$ 上にあることから
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{\mathrm{AH}} = s\overrightarrow{\mathrm{AB}}+t \overrightarrow{\mathrm{AC}}
\end{eqnarray}を満たす実数 $s,t$ が存在します(参考:【標準】同一平面上にある4点と空間ベクトル)。成分で考えると
\begin{eqnarray}
(p-1,q,r) &=& s(-1,4,0)+t(-1,0,3) \\[5pt]
(p-1,q,r) &=& (-s-t,4s,3t) \\[5pt]
(p,q,r) &=& (-s-t+1,4s,3t) \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。最後の式から、 $\overrightarrow{\mathrm{OH}}=(-s-t+1,4s,3t)$ となります。
また、直線 $\mathrm{OH}$ は、平面 $\alpha$ と垂直なので、平面 $\alpha$ 上にある直線とも垂直です。 $\mathrm{OH\perp AB}$ より、内積が $0$ だから
\begin{eqnarray}
(p,q,r) \cdot (-1,4,0) &=& 0 \\[5pt]
(-s-t+1,4s,3t) \cdot (-1,4,0) &=& 0 \\[5pt]
(s+t-1)+16s &=& 0 \\[5pt]
t &=& -17s+1 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。また、 $\mathrm{OH\perp AC}$ も成り立つので
\begin{eqnarray}
(p,q,r) \cdot (-1,0,3) &=& 0 \\[5pt]
(-s-t+1,4s,3t) \cdot (-1,0,3) &=& 0 \\[5pt]
(s+t-1)+9t &=& 0 \\[5pt]
s+10t &=& 1 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。これに先ほどの $t=-17s+1$ を代入すると
\begin{eqnarray}
s+10(-17s+1) &=& 1 \\[5pt]
-169s &=& -9 \\[5pt]
s &=& \frac{9}{169}
\end{eqnarray}となり、
\begin{eqnarray}
t &=& -17s+1=\frac{-153+169}{169}=\frac{16}{169}
\end{eqnarray}となります。
こうして、 $\mathrm{H}$ の座標は
\begin{eqnarray}
& &
(p,q,r) \\[5pt]
&=&
(-s-t+1,4s,3t) \\[5pt]
&=&
\left(-\frac{9}{169}-\frac{16}{169}+1,4\cdot\frac{9}{169},3\cdot\frac{16}{169}\right) \\[5pt]
&=&
\left(\frac{144}{169},\frac{36}{169},\frac{48}{169}\right) \\[5pt]
\end{eqnarray}と求められます。
四面体の体積
問題としてはこれで終わりなのですが、他のものも求めてみましょう。
少し計算が大変ですが、線分 $\mathrm{OH}$ の長さを求めてみます。長さの2乗は
\begin{eqnarray}
& &
\frac{144^2}{169^2}+\frac{36^2}{169^2}+\frac{48^2}{169^2} \\[5pt]
&=&
\frac{12^2}{169^2}(12^2+3^2+4^2) \\[5pt]
&=&
\frac{12^2}{169^2}(144+9+16) \\[5pt]
&=&
\frac{12^2}{169^2}\cdot 13^2 \\[5pt]
\end{eqnarray}となるので、\[ \mathrm{OH}=\frac{12\cdot 13}{169}=\frac{12}{13} \]となります。
また、三角形 $\mathrm{ABC}$ の面積は、平面のときの【応用】ベクトルの内積と三角形の面積と同じようにして、次のように求めることができます。
\begin{eqnarray}
& &
\frac{1}{2} \sqrt{|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|^2|\overrightarrow{\mathrm{AC}}|^2 -(\overrightarrow{\mathrm{AB}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{AC}})^2} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2} \sqrt{\{(-1)^2+4^2\}\{(-1)^2+3^2\}-(-1,4,0)\cdot(-1,0,3)} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2} \sqrt{17\cdot 10-1} \\[5pt]
&=&
\frac{13}{2}
\end{eqnarray}
これより、四面体 $\mathrm{OABC}$ の体積は、三角形 $\mathrm{ABC}$ を底面と考えると
\begin{eqnarray}
\frac{1}{3} \cdot \frac{13}{2}\cdot\frac{12}{13} &=& 2
\end{eqnarray}と求めることができます。
一方、この四面体 $\mathrm{OABC}$ の体積は、三角形 $\mathrm{OAB}$ を底面と考えれば
\begin{eqnarray}
\frac{1}{3} \cdot \frac{1\cdot 4}{2}\cdot 3 &=& 2
\end{eqnarray}と求められ、同じ結果になることがわかります。
今までなら、三角形 $\mathrm{ABC}$ を底辺としたときの高さをいきなり求めることは難しかったですが、空間ベクトルを使えば、例題のようにして求めることができます。「どこを底面と見るか」の制約がなくなるので、問題を解くときには柔軟に見方を変える必要が出てきます。
おわりに
ここでは、ある点から平面に下ろした垂線に関する問題を見ました。垂線の足の座標を求めました。これを使えば、四面体の体積を求めることもできるようになります。いろいろな視点で状況を考えられるようになるので、柔軟に視点を変えることが重要です。