【標準】三次式の因数分解
三次式の因数分解の公式を【基本】三次式の因数分解のページで紹介しましたが、ここではこの公式を使ってもう一工夫必要な因数分解を見ていきます。
6乗引く6乗の因数分解
\[ x^6-y^6 \]
「6乗引く6乗」なんていう公式はやっていないのですが、今までの知識、二次式の因数分解と三次式の因数分解を使って考えてみましょう。
まず1つ思いつくのは、 $x^3=X$, $y^3=Y$ とおいてみる、というやり方です。一部分を置き換えて因数分解するというのは、【標準】置き換えによる因数分解でも見たやり方です。この置き換えにより
\begin{eqnarray}
x^6-y^6
&=&
X^2-Y^2 \\
&=&
(X+Y)(X-Y) \\
\end{eqnarray}となります。ここで元の x, y に戻すと、さらに三次式の因数分解の公式が使えて
\begin{eqnarray}
x^6-y^6
&=&
(x^3+y^3)(x^3-y^3) \\
&=&
(x+y)(x^2-xy+y^2)(x-y)(x^2+xy+y^2) \\
\end{eqnarray}となります。これ以上因数分解できないので、これが答えです。
なお、 $x^2=X$, $y^2=Y$ とおく方法もありえますが、こちらは計算が大変です。置き換えた後に次数が下がる方が考えやすくなるので、2乗を置き換えるのではなく、3乗を置き換える方が計算しやすくなります。
ちなみに、 $x^2=X$, $y^2=Y$ とおく方法で計算してみると、次のようになります。
\begin{eqnarray}
x^6-y^6
&=&
X^3-Y^3 \\
&=&
(X-Y)(X^2+XY+Y^2) \\
&=&
(x^2-y^2)(x^4+x^2y^2+y^4) \\
&=&
(x+y)(x-y)(x^4+2x^2y^2+y^4-x^2y^2) \\
&=&
(x+y)(x-y)\{ (x^2+y^2)^2-x^2y^2 \} \\
&=&
(x+y)(x-y)(x^2+y^2+xy)(x^2+y^2-xy) \\
\end{eqnarray}文字の並びは違いますが、上と同じ結果です。 $x^4+x^2y^2+y^4$ の部分がとても難しいです。ここはなかなか気づきにくいです。これは、複二次式といって、【応用】複二次式(4次・2次・定数項だけ)の因数分解で解説していますが、多くの人は「これ以上因数分解ができない」と思ってしまうでしょう。なので、やはり、 $x^3=X$ と置き換えたほうがよさそうです。
6乗と3乗の式の因数分解
\[ a^6+7a^3-8 \]
6乗と3乗の式の因数分解の公式、というのもないのですが、これも文字で置いて考えるときれいに因数分解できます。これは、 $a^3=A$ とおけばうまくいきそうですね。次のようになります。
\begin{eqnarray}
a^6+7a^3-8
&=&
A^2+7A-8 \\
&=&
(A+8)(A-1) \\
&=&
(a^3+8)(a^3-1) \\
\end{eqnarray}この式をよく見ると、1つ目のカッコの中は「3乗足す3乗」で、2つ目は「3乗引く3乗」となっています。三次式の因数分解の公式が使えるので
\begin{eqnarray}
& &
a^6+7a^3-8 \\
&=&
(a+2)(a^2-2a+4)(a-1)(a^2+a+1)
\end{eqnarray}となります。
三次式の因数分解の公式を再考する
上の2つの例題では、文字の置き換えを使って因数分解を考えました。これを利用して、三次式の因数分解の公式をもう一度見てみましょう。
3乗の式を展開すると、次のようになります。\[ (a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3 \]この式を変形して、「3乗足す3乗」の公式を導いてみましょう。上の右辺の $3a^2b+3ab^2$ の部分が邪魔ですね。これを反対側へ持っていくと、次のような式が得られます。
\begin{eqnarray}
a^3+b^3
&=&
(a+b)^3 -(3a^2b+3ab^2) \\
&=&
(a+b)^3 -3ab(a+b) \\
\end{eqnarray}後半部分は $3ab$ が共通なので前に出しました。さて、ここで、 $a+b$ をひとかたまりだと考えると、これでくくって次のように計算できます。
\begin{eqnarray}
a^3+b^3
&=&
(a+b)^3 -3ab(a+b) \\
&=&
(a+b)\{ (a+b)^2 -3ab \} \\
&=&
(a+b)(a^2+2ab+b^2 -3ab) \\
&=&
(a+b)(a^2-ab+b^2) \\
\end{eqnarray}これはよく見ると、「3乗足す3乗」の公式で出てきた式です。このようにして、三次式の展開・因数分解の $(a+b)^3$ の式から「3乗足す3乗」の式が導けます。
これで新しいことがわかる、というわけではないですが、2種類の公式につながりがあることがわかるのはおもしろいですね。
おわりに
ここでは、他の文字での置き換えと三次式の因数分解の公式を組み合わせた問題を考えてみました。これ以上できない、というところまで因数分解しないといけないことに注意しましょう。