【標準】同一平面上にある4点と空間ベクトル
ここでは、「4点が同一平面上にあること」を考えるときに、ベクトルを使う方法を見ていきます。
同一平面上にある4点
空間においては、同一直線上にない3点を決めると、その3点を含む平面が1つ決まります(参考:【基本】空間における直線や平面の決定)。空間に関する問題では、他の点がこの平面上にあるかどうか、言い換えると、4点が同一平面上にあるかどうかを考える場面が出てくることがあります。ここでも、ベクトルを使うことができます。
同一直線上にない3点 $\mathrm{A,B,C}$ があるとします。この3点を含む平面を、平面 $\alpha$ と呼ぶことにしましょう。このとき、点 $\mathrm{P}$ が平面 $\alpha$ 上にある条件を考えてみます。
空間の世界で考えていますが、平面 $\alpha$ に限定すれば、平面での話がそのまま使えます。平面ベクトルの場合は、もし $\mathrm{P}$ が平面 $\alpha$ 上にあるなら、\[ \overrightarrow{\mathrm{CP}}=s \overrightarrow{\mathrm{CA}}+t \overrightarrow{\mathrm{CB}} \]を満たす実数 $s,t$ が存在します($\mathrm{C}$ から始まっている理由は後で書きます)。これは、【基本】ベクトルの分解で見たように、 $\mathrm{C}$ や $\mathrm{P}$ を通り、直線 $\mathrm{AC,BC}$ に平行な直線をひいて考えると、分解できることがわかります。逆に、上の式のように書けていたら、 $\mathrm{P}$ が平面 $\alpha$ 上にあります。
つまり、 $\mathrm{P}$ が平面 $\alpha$ 上にあることは、実数 $s,t$ を使って \[ \overrightarrow{\mathrm{CP}}=s \overrightarrow{\mathrm{CA}}+t \overrightarrow{\mathrm{CB}} \]と書けることと同値です。
さらに変形します。基準を $\mathrm{C}$ ではなく $\mathrm{O}$ にしてみましょう。次のようになります。
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{\mathrm{CP}} &=& s \overrightarrow{\mathrm{CA}}+t \overrightarrow{\mathrm{CB}} \\[5pt]
\overrightarrow{\mathrm{OP}}-\overrightarrow{\mathrm{OC}} &=& s\overrightarrow{\mathrm{OB}}-s\overrightarrow{\mathrm{OC}} +t\overrightarrow{\mathrm{OC}} -t\overrightarrow{\mathrm{OC}} \\[5pt]
\overrightarrow{\mathrm{OP}}
&=& s\overrightarrow{\mathrm{OA}}+t\overrightarrow{\mathrm{OB}}+(1-s-t)\overrightarrow{\mathrm{OC}} \\[5pt]
\end{eqnarray}このときの右辺のそれぞれの係数を足すと、 $s+t+(1-s-t)=1$ なので、必ず $1$ になります。この表し方もよく使います。
また、 $s+t+u=1$ を満たす実数 $s,t,u$ を使って次のように表せることとも同値。\[ \overrightarrow{\mathrm{OP}}=s \overrightarrow{\mathrm{OA}}+t \overrightarrow{\mathrm{OB}}+u \overrightarrow{\mathrm{OC}} \]
係数の $s,t,u$ を揃えるため、前半は $\mathrm{C}$ を基準にしていました。基準を $\mathrm{A}$ にして、 $\overrightarrow{\mathrm{AP}}=s' \overrightarrow{\mathrm{AB}}+t' \overrightarrow{\mathrm{AC}}$ としてもかまいません(もちろん、 $\mathrm{A}$ を基準にしたときと $\mathrm{C}$ を基準にしたときとで、係数の値は変わります)。
平面のときに見た、【基本】2点を通る直線のベクトル方程式とよく似ていることがわかります。2点を通る直線のときは、 $\vec{p}=s\vec{a}+t\vec{b}$ のように書けて($s+t=1$)、3点を通る平面のときは $\vec{p}=s\vec{a}+t\vec{b}+u\vec{c}$ のように書ける($s+t+u=1$)ということです。
例題
ベクトルが出てきていませんが、ベクトルで考えます。成分を考えると
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{\mathrm{AB}} &=& (5,0,2)-(0,1,1) \\[5pt]
&=& (5,-1,1) \\[5pt]
\overrightarrow{\mathrm{AC}} &=& (3,-2,0)-(0,1,1) \\[5pt]
&=& (3,-3,-1)
\end{eqnarray}となります。このとき、 $\overrightarrow{\mathrm{AC}}=k \overrightarrow{\mathrm{AB}}$ を満たすような $k$ はありません($\overrightarrow{\mathrm{AC}}$ の $x$ 成分と $y$ 成分の比は $1:-1$ なのに、 $\overrightarrow{\mathrm{AB}}$ はそうなっていないことなどからわかります)。このことから、 $\mathrm{A,B,C}$ は同一直線上にはないことがわかる(参考:【標準】同一直線上にある3点と空間ベクトル)ので、先ほど見たように、\[ \overrightarrow{\mathrm{AP}}=s \overrightarrow{\mathrm{AB}}+t \overrightarrow{\mathrm{AC}} \]を満たす実数 $s,t$ が存在します。
$\overrightarrow{\mathrm{AP}}=(p,-2,-3)$ なので、両辺の成分を比較すると
\begin{eqnarray}
p &=& 5s+3t \\[5pt]
-2 &=& -s-3t \\[5pt]
-3 &=& s-t \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。2つ目の式と3つ目の式を足すと
\begin{eqnarray}
-5 &=& -4t \\[5pt]
t &=& \frac{5}{4}
\end{eqnarray}となります。これを先ほどの3つ目の式に代入すると
\begin{eqnarray}
-3 &=& s-\frac{5}{4} \\[5pt]
s &=& -\frac{7}{4}
\end{eqnarray}となります。こうして、
\begin{eqnarray}
p &=& 5s+3t \\[5pt]
&=& 5\cdot \left(-\frac{7}{4}\right)+3\cdot\frac{5}{4} \\[5pt]
&=& -5 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
図をかきづらいので確かめることは難しいですが、これで同一平面上にある点の座標が求められます。図でイメージしにくいので、計算間違いには注意しましょう。
おわりに
ここでは、空間で4点が同一平面上にあることを、ベクトルを使って考える方法を見てきました。 $s+t+u=1$ を満たす実数 $s,t,u$ を使って $\overrightarrow{\mathrm{OP}}=s \overrightarrow{\mathrm{OA}}+t \overrightarrow{\mathrm{OB}}+u \overrightarrow{\mathrm{OC}}$ とかけることをおさえましょう。また、 $\mathrm{A,B,C}$ が同一直線上にない、という条件も重要なので、頭に入れておきましょう。