【基本】負の数の平方根
ここでは、負の数の平方根について見ていきます。計算間違いをしやすい部分があるので、注意してみていきましょう。
マイナス1の平方根
すでに知っている $\sqrt{2}$ という数について考えてみましょう。これはどんな数字だったかというと、「2乗して $2$ になる正の数」でしたね。分数では表せないため、こうした記号 $\sqrt{\quad }$ を使って表すのでした。
さて、【基本】複素数で見たように、複素数の世界にまで数の範囲を広げましたが、平方根の世界も同じように広げることができます。例えば、虚数単位 i については\[ i^2=-1 \]が成り立ちますが、これは「i は、2乗して $-1$ になる数(複素数)だ」とも言えます。そのため、次のように書くことができます。\[ \sqrt{-1} = i \]
2乗して $-1$ になる数(複素数)は、 $-i$ もあります。ですが、 $\sqrt{-1}$ は、 $\pm i$ のうち、虚部が正のほう(つまり、i)を表すこととします。 $\sqrt{2}$ が「2乗して $2$ になる正の数」を表すようにしたことと対応させています。
なお、 $-1$ の平方根は、 $\pm i$ だということができます。
負の数の平方根
$-1$ の平方根は $\pm i$ と書くことを見ましたが、一般的な負の数の場合はどうなるか、考えてみましょう。
$a\gt 0$ のとき、2乗して $-a$ になる数を考えてみます。これは、2乗して $-1$ になる部分と a になる部分に分けられると考えれば、\[ (\sqrt{a}i)^2=(-\sqrt{a}i)^2=-a \]となることがわかります。これより、 $-a$ の平方根は $\pm \sqrt{a} i$ となることがわかります。なお、 $x^2+a^2=0$ の解は2つ以下なので、「2乗して $-a$ になる数」はこれらだけです。
$a\gt 0$ のとき、2乗して $-a$ となる数は2つありますが、ここでも虚部が正となるもの、つまり、 $\sqrt{a}i$ の方を、 $\sqrt{-a}$ だと定めます。
以上をまとめると、次のようになります。
つまり、\[ \sqrt{-3}=\sqrt{3}i \]であり、 $-8$ の平方根は\[ \pm\sqrt{-8}= \pm 2\sqrt{2} i \]となります。
負の数の平方根同士の掛け算
負の数の平方根について見てきましたが、これらを使った計算をすることもあります。この負の数の平方根の計算については、間違いやすいところがあります。
すごく基本的な計算ですが、次の計算結果はどうなるでしょうか。\[ \sqrt{-1} \times \sqrt{-1} \]これは、「2乗して $-1$ になる数」を2乗していることと同じです。なので、答えは $-1$ となります。
このことからわかる重要なことは、ルートの中同士を先に計算してはいけないということです。ルートの中を先に計算してしまうと、 $\sqrt{(-1)^2}=1$ となってしまいますが、これは正しくありません。
もう少し応用した例を見てみましょう。\[ \sqrt{-2} \times \sqrt{-3} \]これもルートの中同士を先に計算してはいけません。ではどうするかというと、上の定義にのっとって、\[ \sqrt{-a}= \sqrt{a}i \]という変形をします。
\begin{eqnarray}
& &
\sqrt{-2} \times \sqrt{-3} \\[5pt]
&=&
\sqrt{2} i \times \sqrt{3} i \\[5pt]
&=&
\sqrt{6} \times i^2 \\[5pt]
&=&
-\sqrt{6} \\[5pt]
\end{eqnarray}これが正しい計算方法です。
$a,b\gt 0$ のときに、今まで自然に\[ \sqrt{a} \times \sqrt{b}=\sqrt{ab} \]と計算していましたが、ルートの中が負の場合は成り立ちません。そのため、上のように、\[ \sqrt{-a} =\sqrt{a}i \]という変形をしてから計算しなくてはいけません。でないと、符号の部分で間違ってしまいます。
割り算も同様で
\begin{eqnarray}
\sqrt{2} \div \sqrt{-3}
&=&
\frac{\sqrt{2} }{\sqrt{3}i} \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{2} \sqrt{3}i}{\sqrt{3}i\sqrt{3}i} \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{6}i}{3i^2} \\[5pt]
&=&
-\frac{\sqrt{6} }{3}i \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。 $\sqrt{2} \div \sqrt{-3}$ を $\sqrt{-\dfrac{2}{3} }=\dfrac{\sqrt{6} }{3}i$ と計算してはいけないことに注意しましょう。
おわりに
ここでは、負の数の平方根と、その計算について見ました。負の数の平方根を使った計算を見たら、すぐに i を使った表現に変えるようにしましょう。そうすると、計算間違いが減るようになります。