【基本】「すべての」「ある」の否定
ここでは、「すべての」や「ある」を含んだ命題の否定を見ていきます。「かつ」「または」の否定と同じく、ここも間違いやすい内容です。
数学以外の例
ある3人組が切符を買うとしましょう。「おとな」と「こども」の切符を買う場合の組合せを考えてみましょう。
まず、「すべておとな料金の切符」という場合があります。この「すべておとな」ではないケースには、どういう場合があるでしょうか。
ここで、「すべてこども」と答えてしまう間違いがよくあります。しかし、これだとどちらにも含まれないケースが出てきてしまいます。
ありえる切符の組合せは次の4つです。
- すべておとな
- おとな2枚、こども1枚
- おとな1枚、こども2枚
- すべてこども
「『すべておとな』ではない」場合というのは、上の4つのケースのうち、下3つすべてが当てはまります。なので、「すべておとな料金の切符」でない場合は、「こども料金の切符がある」場合となります。こども料金の切符が1枚か2枚か3枚かわからないけど、こども料金の切符が1枚でもあれば「『すべておとな』ではない」と言えます。
数学を使った例
補集合に関する性質のところでも少し触れましたが、「各要素は、Aか、Aでないか、必ずどちらか片方に属する」のでした。条件や命題についても同じで、ある条件が成り立たず、その条件の否定も成り立たない、ということはないんですね。
なので、「x, y, z は、すべて偶数である」の否定が「x, y, z は、すべて奇数である」とはなりません。「偶数1個・奇数2個」や「偶数1個・奇数2個」の場合は、どちらにもあてはまらないからです。
「すべて偶数である」が成り立たない場合とは、1つ以上の奇数があるときです。なので、「x, y, z のうち、ある要素は奇数である」「x, y, z の中に、奇数が存在する」「x, y, z の中に、奇数が少なくとも1つある」などが、正しい「否定」になります。表現は違いますが、すべて同じ内容を意味しています。
また、「ある要素が偶数」が成り立たない場合というのは、全部奇数のときです。なので、「ある要素が偶数」の否定は「すべての要素が奇数」となります。
結論だけ書くと、「すべての」の否定は「ある」、逆に、「ある」の否定は「すべての」になります。
例題
では、数学での問題を考えてみましょう。
(1) すべての三角形の内角の和は180度である
(2) 2乗をしても値が変わらない整数がある
(3) どの無理数も、2乗すると有理数になる
これらの否定を言うには、「すべての」と「ある」を入れ替え、残りの部分を否定すればOKです。
(1)は、「すべての」を「ある」に変え、内角の和が180度でない、といえばいいですね。なので、文章にすると「内角の和が180度でない三角形がある」などが答えになります。
(2)は、「ある」を「すべて」に変えて、残りを否定します。「すべての整数は、2乗すると値が変わる」や「どの整数も、2乗すると値が変わる」などが答えになります。
(3)は、「どの」となっていますが、「すべての」の意味です。これを否定すると「2乗すると無理数になるような、無理数がある」や「ある無理数は、2乗すると無理数になる」などとなります。
ちなみに、元の命題の真偽は、(1)真、(2)真、(3)偽(反例は $\sqrt{2}+1$ など)です。よって、各命題の否定の真偽は、(1)偽、(2)偽、(3)真となります。否定すると、真偽が逆になります。
おわりに
ここでは、「すべての」や「ある」を含んだ命題の否定を見てきました。
「すべてAである」の否定は「Aでないものがある」となります。「すべての」の否定が「ある」、「ある」の否定が「すべての」になることをおさえておきましょう。日常生活でも間違えることがあるので注意しましょう。