【基本】必要条件と十分条件(サッカーを例に)
ここでは、大学入試でもよく出題される「必要条件」「十分条件」について見ていきます。まずはサッカーを使ったたとえ話をして、その後に数学の話をします。
サッカーで考える、必要条件と十分条件
例えば、サッカーのとある大会で、ある時点での予選の結果が次のようになっていたとしましょう。あなたが応援しているのはAチームとします。現在3位です。まずいです。
チーム名 | 勝ち点 |
---|---|
B | 6 |
C | 4 |
A | 3 |
D | 1 |
決勝に行けるのは、上位2チームだけだとして、Aチームが決勝に行くための条件を考えてみましょう。
もしAチームがBチームに勝てば、Cチームを抜くので決勝に進めます。なので、「AチームがBチームに勝つ」ことができれば、決勝に行くには十分です。ただ、Bチームは他の2チームに勝っているので、なかなか厳しい条件ですよね。上には、得失点差などの情報がないのでわかりませんが、状況によっては勝つ必要はなく、引き分けでもいいのかもしれません。
では、「AチームがBチームに負けない(引き分け以上)」という条件はどうでしょうか。この条件を満たさない場合、負けるということなので、3位確定です。なので、この条件はクリアする必要があります。ただ、先ほども書いた通り、得失点差などの情報がありません。なので、引き分けの場合に、決勝に行けるかどうかは上の表からはわかりません。
まとめると、「Aチームが決勝に行く」には、「AチームがBチームに勝てば」十分にクリアできるけどその必要はないかもしれない、「AチームがBチームに負けないこと」は必要だけどそれだけでは十分でないかもしれない、となります。
必要条件と十分条件
上の例で何が言いたいかというと、「条件には、強さ・弱さがある」ということです。「強い」というのは、「より厳しい」と言い換えてもかまいません。「弱い」というのは、「より簡単」「より達成しやすい」ということです。
上の例では、3つの文章が出てきました。
目標 :Aチームが決勝に行く
条件1:AチームがBチームに勝つ
条件2:AチームがBチームに負けない
これらは無関係ではなくて、強さ弱さがあります。例えば、上で見たように、「条件1が成り立てば、目標達成」です。これは、「条件1が目標より強い・厳しい条件」ということです。より厳しい条件を満たしていれば、目標はクリアできる、ということですね。このように、今考えている目標より強い条件のことを十分条件(sufficient condition)といいます。「条件1を満たしておけば、目標をクリアするには十分」という意味を込めて、「条件1は、Aチームが決勝に行くための十分条件」といった言い方をします。
一方、決勝に行くには、負けないこと(条件2)が必要でした。条件2は、最低限クリアしなければいけません。これは、目標が条件2より強い、いいかえれば、条件2が目標より弱いということです。このように、目標より弱い条件のことを必要条件(necessary condition)といいます。「目標をクリアするには、条件2をクリアすることが必要」という意味を込めて、「条件2は、Aチームが決勝に行くための必要条件」と言います。
十分条件は「目標をクリアするより強い条件なので、目標をクリアするには十分」、必要条件は「目標をクリアするより弱い条件なので、目標をクリアするには最低限必要」、ということです。
例題
ここまで話した「必要条件」「十分条件」を、数学の例で見てみましょう。今までの話が分かっても、数学になったとたんに意味不明になることはよくあります。
(1) $x=2$ は $x^2=4$ であるための ○○○○。
(2) $x^2=4$ は $x=2$ であるための ○○○○。
「 $x^2=4$ であるための」というのは、「 $x^2=4$ という目標から見たら、強いですか? 弱いですか?」と聞かれている、と思ってください。
必要条件か十分条件かを答える問題は、「片方が成り立った時、もう片方が成り立つと言えるか」を考えます。
$x=2$ のとき $x^2=4$ は必ず成り立ちます。一方、 $x^2=4$ でも $x=2$ が成り立つとは限りません。 $x=-2$ のケースがあるからです。なので、「 $x=2$ 」という条件の方が強い・限定的ということですね。 $x=-2$ という選択肢が減った分、より厳しく、より成り立ちにくくなっています。
(1)の主語は「 $x=2$ 」なので、「強い条件」にあたる「十分条件」が答えになります。(2)は「 $x^2=4$ 」が主語なので、弱い条件にあたる「必要条件」が答えになります。
定義と覚え方
必要条件と十分条件について、数学の言葉を使った定義を書いておきましょう。記号で書いているだけで、今までの話と内容は変わりません。
- q は p であるための必要条件という。
- p は q であるための十分条件という。
「必要条件か十分条件か、答えなさい」という問題は、定期試験や入試でも出題されます。そして、どっちがどっちだったかよくわからない、混乱してしまう、という人もいます。
そういう場合は、次のように「矢の先必要」と覚えましょう。「⇒」という矢は、先がないと「=」となってしまいます。なので、「矢には先が必要」、これと「矢の先にくるのが、必要条件」とを関連付けて覚える、ということです。もっと直接的に書けば、「p⇒q」を「十分⇒必要」とみなすということです。
先ほどの例題であれば、 $x=2\implies x^2=4$ なので、 $x^2=4$ が矢の先にあるから、必要条件だ、ということです。そして、 $x=2$ は必要条件じゃない方なので十分条件だな、とわかるわけですね。
こうして、この覚え方を使えば、「 $x=2$ は $x^2=4$ であるための 〇〇」という文章なら、 $x=2$ が主語なので、〇〇には「十分条件」を入れればいい、とわかります。
おわりに
ここでは、必要条件と十分条件について見てきました。結局、「必要条件」「十分条件」というのは、目標に対する条件の「強さ」を表しているんですね。「クリアしておく必要がある」条件なのか、「クリアしておけば十分」な条件なのか。前者ならより弱い条件であり、後者ならより強い条件だということです。
言葉の意味の説明もしましたが、簡単な判別の仕方も紹介しました。「矢の先必要」という覚え方ですね。慣れてくるとこの方法で考えてもいいですが、言葉の意味もおさえておくようにしましょう。