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【基本】逆・裏・対偶

ここでは、「○○ならば △△である」という形の命題に関連して、「△△ならば ○○である」や「○○でないならば △△でない」といった、1つの命題から派生する別の形の命題について見ていきます。否定が出てくるので、【基本】条件の否定もチェックしましょう。

📘 目次

逆・裏・対偶

日常生活で「逆に言えば」や「裏を返せば」という言葉を耳にすることがあります。数学でも、「」や「」という言葉を使います。日常生活では、人によって使い方が微妙に異なることもありますが、数学の世界ではきちんと決まっています。

数学では、「○○ならば△△である」という形の命題がよく登場します。例えば、次のようなものです(n は整数とします)。

 「$n$ が4の倍数ならば、 $n^2$ は4の倍数である」

これに対し、前半と後半を入れ替えたものを、もとの命題の(conversion) と言います。つまり、もとの命題の逆は、次のようになります。

 「$n^2$ が4の倍数ならば、 $n$ は4の倍数である」

また、前半を否定に変え、後半も否定に変えたものを、もとの命題の(inversion) と言います。具体的に書くと、次のようになります。

 「$n$ が4の倍数でないならば、 $n^2$ は4の倍数でない

ややこしくなってきましたね。しかし、追い打ちをかけるように、最後に似たようなものを、もう一つだけ紹介します。それは対偶(contraposition) というものです。対偶とは「前半と後半を否定に変え、前半と後半を入れ替えたもの」です。逆と裏を組み合わせたものです。今の場合、対偶は次のようになります。

 「$n^2$ が4の倍数でないならば、 $n$ は4の倍数でない

似たようなものが多くて、混乱してきました。

もう一度言葉で説明すると、

  • 「逆」は、前半と後半を入れ替えたもの
  • 「裏」は、前半と後半をそれぞれ否定に変えたもの
  • 「対偶」は、前半と後半を否定に変え、順番も入れ替えたもの
となります。「対偶」が一番ややこしいですが、実は数学的には「対偶」が一番重要です。【基本】対偶証明法で学ぶことになります。

例の命題の真偽

せっかくなので、さきほどの4つの命題の真偽を見てみましょう。「真偽」というと難しそうに聞こえますが、「例外なく成り立つかどうかをチェックする」ということです。

 もとの命題: $n$ が4の倍数ならば、 $n^2$ は4の倍数である

まずはこれについて考えてみます。n が4の倍数なら、4×整数と書けます。このとき $n^2$ は16×整数と書けるので、4の倍数になります。よって、この命題は「真」です。

次に、この命題の「逆」を考えてみます。

 : $n^2$ が4の倍数ならば、 $n$ は4の倍数である

$n=2$ とすると、前半の条件( $n^2$ が4の倍数)を満たしますが、後半の条件( $n$ は4の倍数)を満たしません。 前半の条件を満たすのに後半の条件を満たさないものがあるので、この命題は「偽」です。こういう例を反例というんでしたね。

続いて、「裏」を考えます。

 : $n$ が4の倍数でないならば、 $n^2$ は4の倍数でない

実はこれも $n=2$ が反例になります。$n=2$ とすると、前半の条件(4の倍数でない)を満たしますが、後半の条件( $n^2$ は4の倍数でない)を満たしません。 $n^2=4$ なので、4の倍数ですからね。よって、「偽」です。

最後に、「対偶」を考えます。

 対偶: $n^2$ が4の倍数でないならば、 $n$ は4の倍数でない

これはちょっと考えづらいです。「 $n^2$ が4の倍数でない」というのがどういう状況なのか、把握しづらいからです。

そもそも $n^2$ を4で割るとどうなるかを考えてみます。nが偶数なら、2×整数と書けるので $n^2$ は4×整数となります。よって、4の倍数になってしまいます。また、nが奇数なら、2乗しても奇数なので、4で割り切れないことが分かります。

今考えている命題の仮定は「 $n^2$ が4の倍数でない」なので、さきほどの内容を踏まえると、n は奇数しかありえません。なので、「n は4の倍数でない」ことがわかります。よって、この命題は常に成り立つので、「真」となります。

以上の結果をまとめると、もとの命題とその対偶は真、もとの命題の逆と裏は偽、となります。

ネタばらしをすると、実は、もとの命題とその対偶の真偽は、常に一致します。つまり、もとの命題が真なら対偶も真だし、もとの命題が偽なら対偶も偽となります。また、逆と裏の真偽も一致します。これらについては、別の記事(【基本】対偶証明法)で取り上げることにします。

また、もとの命題が真でも、逆や裏が偽になることがある、ということもおさえておきましょう。

おわりに

ここでは、命題の逆・裏・対偶について、見てきました。最後に、記号を使ってまとめておきます。記号で書くとすっきりしますが、抽象的過ぎてわかりづらいという人は、上で書いたように文章で理解するようにしましょう。

逆・裏・対偶
命題 $p\implies q$ に対し、
  • $q\implies p$ を もとの命題の
  • $\bar{p}\implies \bar{q}$ を もとの命題の
  • $\bar{q}\implies \bar{p}$ を もとの命題の対偶
という。

文中でも書きましたが、もとの命題とその対偶の真偽が一致します。なので、上の3つの中では、対偶が一番重要なんですね。対偶については、【基本】対偶証明法でより詳しく取り上げます。

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