【基本】恒等式
ここでは、恒等式について見ていきます。今後、等式の証明を行う上でも、基本的なものとなります。
恒等式
今まで、「方程式 $2x+3=4$ を解きなさい」というような、方程式をたくさん解いてきました。この「方程式」とは、変数の値によって、成り立ったり成り立たなかったりする等式のことです(等式とは、イコールで結ばれた式のことです)。成り立つことも成り立たないこともありうるので、「では、どういうときに成り立つのだろう」というのが興味の対象となります。
一方、今までに出てきた等式には、次のようなものもありました。\[ (a+b)^2=a^2+2ab+b^2 \]これは、変数がどんな値でも成り立つものです。このような等式には、恒等式 (identity) という名前がついています。
今後、「この等式が成り立つことを証明しなさい」といった問題がよく出てきますが、それは「変数の値が、特定の値ではなく、どんな値であっても成り立つことを示す」ということです。つまり、恒等式を扱っている、ということです。
どのようなものが恒等式か
「恒等式」という難しそうな名前がついていますが、中身はそれほど難しくはありません。というのも、知らないうちに、今までたくさんの恒等式を扱ってきているからです。
例えば、展開・因数分解の公式は、すべて恒等式です。\[ a^3-b^3 = (a-b)(a^2++ab+b^2) \]は展開・因数分解で出てきた公式ですが、これは a, b がどんな値であっても成り立ちます。なので、恒等式です。
また、三角比では、次のような公式も出てきました。\[ \sin^2\theta + \cos^2\theta = 1 \]これも、 $\theta$ の値は何でもいいので、恒等式です。
もっというと、通常の式変形による等式は、恒等式です。変数がどんな値でも成り立つから、その式変形ができるわけですからね。特別な値でしか成り立たない変形は、正しい式変形ではありません。
おわりに
ここでは、恒等式について見てきました。今まで扱ってきた、式変形の多くは恒等式だったんですね。名前からは難しそうな印象を受けますが、難しく考えないようにしましょう。