【基本】等比数列の和
ここでは、等比数列の和について見ていきます。
等比数列の和(実験)
等比数列の和について考える前に、ちょっと次のような数について考えてみましょう。\[ 10^n-1 \]n に自然数を入れていくと、 $9$, $99$, $999$, $9999$ というように、順番に $9$ が増えていくことがわかります。
この $9999$ という数字について、見方を変えて、次のように分解してみましょう。\[ 10^4-1 = 9999=9+90+900+9000 \]このように分けると、 $9999$ という数字は、初項が $9$ で公比が $10$ で項数が $4$ の等比数列の和になっている、と見ることができますね。
他の数字も同様に、考えることができます。例えば、 $99999$ なら、項数が $5$ の場合に対応していますね。
項数が $4$ や $5$ というように小さい場合はいいのですが、項数が $100$ とか $10000$ とか大きい数になってくると大変です。しかし、 $10^n-1$ のような形で書ければ、( $10^n$ をどうやって計算するんだという問題はありますが)和をスッキリとした式で表すことができます。
$10^n-1$ の $10$ は公比で、 $n$ は項数に対応しているようですね。これを踏まえて、等比数列の和を考えてみましょう。
等比数列の和(具体例)
上で見た「初項が $9$ で公比が $10$ で項数が $4$ の等比数列の和」について考えてみましょう。具体的に書けば、次のようになります。\[ 9+90+900+9000 \]上で見たことから、これが $10^4-1$ と書けるだろうと予想できるわけですが、この式から、 $10$ 倍することが関係してるんじゃないかと考えられます。実際に10倍してみると、次のようになります。\[ 90+900+9000+90000 \]$10$ 倍しただけでは何も変わらないような気もしますが、よく見てみましょう。上下を比較するのではなく、次のように一つずらして比較してみます。
\begin{array}{r}
S &=& 9 &+90+900+9000& \\[5pt]
10S &=& & 90 +900 +9000 &+90000 \\[5pt]
\end{array}下が10倍したものだとわかりやすいように、上を $S$, 下を $10S$ としています。こうすると、中央の部分は一致しています。なので、下の式から上の式を引くと
\begin{eqnarray}
9S &=& 9(10^4-1) \\[5pt]
S &=& 10^4-1 \\[5pt]
\end{eqnarray}となり、「初項が $9$ で公比が $10$ で項数が $4$ の等比数列の和」が $10^4-1$ となることがわかりましたね。冒頭では、 $10^4-1$ が等比数列の和だ、と見ましたが、逆に、等比数列の和から $10^4-1$ が出せました。
公比を掛けて、中央部分を一致させる、というところがポイントです。これを踏まえて、一般の場合を考えてみましょう。
等比数列の和(一般の場合)
初項が a で、公比が r で、項数が n の等比数列の和を求めてみましょう。これを $S_n$ と書きましょう。 n は項数に対応しています。
具体的に書くと、 $S_n$ は次のようになります。\[ S_n = a+ar+ar^2+\cdots+ar^{n-1} \]上で見た内容を踏まえ、この両辺に公比 r をかけてみましょう。\[ rS_n = ar+ar^2+\cdots+ar^{n-1}+ar^n \]この2つを比較すると、 $ar$ から $ar^{n-1}$ までが両方に出てきています。なので、 $rS_n-S_n$ を計算すれば、この部分が相殺されます。その結果、次のようになります。
\begin{eqnarray}
rS_n-S_n &=& ar^n-a \\[5pt]
(r-1)S_n &=& a(r^n-1) \\[5pt]
\end{eqnarray}$S_n$ の右辺の1項目と $rS_n$ の右辺の最後の項だけが残るので、このような式になります。
ここで、求めたいのは $S_n$ でしたね。両辺を $r-1$ で割りたいところですが、それができるのは $r\ne 1$ のときだけ、ということに注意しましょう。 $r\ne 1$ のときは\[ S_n=\frac{a(r^n-1)}{r-1} \]となります。
$r=1$ のときは、そもそも\[ S_n = a+ar+ar^2+\cdots+ar^{n-1} \]だったことを考えると、 $S_n=an$ となることがわかりますね。
まとめます。
また、 $r=1$ のときは、等比数列の和は $an$ となる。
おわりに
ここでは、等比数列の和について見てきました。等差数列のときは足す順番を逆にする、というテクニックを使いましたが、等比数列では役に立ちません。等比数列の場合は、公比を掛けて横にずらす、というテクニックを使います。これにより、たくさんの項が相殺される、というところをおさえておきましょう。