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【基本】同様に確からしい

確率を考えるときには、「同様に確からしい」という考えが重要になってきます。ここでは、この「同様に確からしい」について見ていきます。

📘 目次

球を取り出す

袋に、10000個のボールが入っているとします。赤いボールが1個で、他はすべて白いボールであり、手で触っても区別はつかないとします。この袋から適当に1個のボールを取り出したとき、それが赤いボールである確率はいくらでしょうか。

このときに、「赤か、白か、の2通りだから、赤である確率は $\dfrac{1}{2}$ だ」という人はいないでしょう。【基本】確率の基本事項では、「確率は、"その事象が起きる場合の数" を "起こりうるすべての場合の数" で割って求める」と書きましたが、 $\dfrac{1}{2}$ は明らかに変です。この考え方は正しくありません。

「赤いボール」と「白いボール」では、状況が同じではありません。数が全然違うので、「赤いボールを取り出す確率」と「白いボールを取り出す確率」は異なると考えるのが自然です。

もし、各ボールに、1から10000までの番号がふってあったとしましょう。1が赤で、2から10000までは白とします。このとき、1も2も10000も、個数は1個なので、どれも同じ状況です。だから、それぞれを取り出す確率も同じだと考えられます。よって、1番の赤を取り出す確率は $\dfrac{1}{10000}$ となります。

番号を書くかどうかで確率が変わるはずはないので、最初の例「袋から赤いボールを取り出す確率」も、 $\dfrac{1}{10000}$ となります。

こんなめんどくさい考え方をしなくても、はじめから $\dfrac{1}{10000}$ だとわかってたよ、という人もいると思いますが、ここで考えた内容はとても重要です。

同様に確からしい

さきほどの例では、「赤いボールを取り出す」と「白いボールを取り出す」の確率は異なること、「1番のボールを取り出す」と「2番のボールを取り出す」と「10000番のボールを取り出す」の確率は同じになること、を見ました。

今後、確率を考えていくうえでは、後者のように、「事象を細かく分け、分けた各事象の確率が同じになるようにしてから考える」ことが重要になってきます。さきほどのボールの例でいくと、もともと白いボールは区別できなかったんだけど、「区別できるものとして」考えることで、同じ条件・同じ確率にすることができました。このように、本来区別できなかったものを、区別して考えないといけないケースが出てきます。

このように分けた事象、もうこれ以上細かくは分けられないように細かく分けた事象のことを、根元事象(elementary event, atomic event) といいます。そして、この根元事象の発生する割合が同じだと期待できる場合、これらの根元事象は、同様に確からしい(equally likely)といいます。

また、すべての根元事象が同様に確からしいとき、事象 A の確率 $P(A)$ は、「"事象 A が起きる場合の数" を "起こりうるすべての場合の数" で割ったもの」となります。

基本的に、これから扱う確率では、同様に確からしい根元事象に分割できるものだけを扱っていきます。

コインを2枚投げる

最後に、シンプルだけど間違いやすい例を紹介したいと思います。

「10円玉2枚を投げたとき、2枚とも裏になる確率」を考えてみましょう。

よくある間違いは、「2枚とも表、1枚だけ表、2枚とも裏、の3通りだから $\dfrac{1}{3}$ 」と答えてしまうケースです。これは、次のように考えると間違っていることがわかります。

10円玉1枚と100円玉1枚を同時に投げたとき、2枚とも裏になる確率」ならどうなるでしょうか。起こりうる全てのケースを考えると、10円玉は表・裏の2通り、100円玉も表・裏の2通りなので、全部で4通りです。このうち、2枚とも裏になるのは1通りなので、 $\dfrac{1}{4}$ となります。

「2枚のコインを投げて2枚とも裏になる確率」が、「10円玉2枚」のときと「10円玉1枚、100円玉1枚」のときで変わるはずがありません。つまり、「10円玉2枚」のときも、2枚とも裏になる確率は、 $\dfrac{1}{4}$ になります。

少しややこしいですが、2枚の10円玉は、「区別できる」として考えます。10円玉2枚を、「10円玉Aと10円玉B」と考え、Aが裏・表、Bも裏・表の2通りがあると考えます。こうして、同様に確からしい根元事象を考えることになります。

「2枚とも表」「2枚とも裏」と「1枚だけ表」は同じ確率ではないため、根元事象がこの3つになることはありません。「1枚だけ表」は「2枚とも表」より条件が緩いので、異なる確率になってしまいます。

おわりに

ここでは、「同様に確からしい」について見てきました。同じ確率になるように根元事象で考えることがポイントでした。そのために、区別できないものを区別できるものとして考える必要があるケースを見ました。ここが、場合の数と違うところであり、混乱が生じやすいところでもあります。これからいろんな問題を解きながら、見ていくことにしましょう。

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