東京大学 理系 2026年度 第5問 解説
問題編
問題
複素数平面上の原点を中心とする半径 $1$ の円を $C$ とする。複素数 $\alpha$ と $C$ 上の点 $\mathrm{P}(z)$ に対し、 $w=(z-\alpha)^3$ とおく。 $\mathrm{P}$ が $C$ 上を動くときの点 $\mathrm{Q}(w)$ の軌跡を $D$ とする。
(1) $\alpha=-3$ とし、 $w$ の偏角 $\theta$ とおく。 $\mathrm{P}$ が $C$ 上を動くとき、 $\sin\theta$ がとりうる値の範囲を求めよ。
(2) $\alpha$ が次の条件を満たすように動く。
条件: $D$ は実軸の正の部分および負の部分の両方と共有点を持つ。
複素数平面上の点 $\mathrm{R}(\alpha)$ が動きうる範囲の面積を求めよ。
考え方
(1)は最終的な図形がどういうものかはわからなくても、 $\sin\theta$ だけを考えればいいので、必要なものだけに集中しましょう。
(2)は少し見方を変えましょう。 $\alpha$ を決めて、 $D$ の条件を満たすか、と考えるよりも、 $D$ の条件を満たすのは $\alpha$ がどういうときか、とするほうが考えやすいでしょう。とはいえ、難しいです。
解答編
問題
複素数平面上の原点を中心とする半径 $1$ の円を $C$ とする。複素数 $\alpha$ と $C$ 上の点 $\mathrm{P}(z)$ に対し、 $w=(z-\alpha)^3$ とおく。 $\mathrm{P}$ が $C$ 上を動くときの点 $\mathrm{Q}(w)$ の軌跡を $D$ とする。
(1) $\alpha=-3$ とし、 $w$ の偏角 $\theta$ とおく。 $\mathrm{P}$ が $C$ 上を動くとき、 $\sin\theta$ がとりうる値の範囲を求めよ。
解答
(1)
$z$ は 原点を中心とする半径 $1$ の円周上を動くので、 $z-\alpha=z+3$ が描く軌跡は、 $3$ を中心とする半径 $1$ の円である。

よって、この $z+3$ の偏角を $t$ で表すことにすると、 $\sin t$ は、 $-\dfrac{1}{3}$ 以上 $\dfrac{1}{3}$ 以下の値をとることがわかる。
$w=(z-\alpha)^3$ なので、 $w$ の偏角 $\theta$ は $3t$ と書けるから
\begin{eqnarray}
\sin \theta
&=&
\sin 3t \\[5pt]
&=&
3\sin t-4\sin^3 t \\[5pt]
\end{eqnarray}と書ける。ここで、 $-\dfrac{1}{3}\leqq s\leqq \dfrac{1}{3}$ における、 $f(s)=3s-4s^3$ がとりうる値の範囲を考える。
\begin{eqnarray}
f'(s)=3-12s^2=3(1-2s)(1+2s)
\end{eqnarray}であることから、 $f(s)$ は単調増加だとわかり
\begin{eqnarray}
f\left(-\dfrac{1}{3}\right) &=& 3\left(-\frac{1}{3}\right)-4\left(-\frac{1}{3}\right)^3=-\frac{23}{27} \\[5pt]
f\left(\dfrac{1}{3}\right) &=& 3\left(\frac{1}{3}\right)-4\left(\frac{1}{3}\right)^3=\frac{23}{27} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
よって、 $-\dfrac{23}{27} \leqq \sin\theta \leqq \dfrac{23}{27}$ …(答)
解答編 つづき
問題
(2) $\alpha$ が次の条件を満たすように動く。
条件: $D$ は実軸の正の部分および負の部分の両方と共有点を持つ。
複素数平面上の点 $\mathrm{R}(\alpha)$ が動きうる範囲の面積を求めよ。
解答
(2)
$z$ は 原点を中心とする半径 $1$ の円周上を動くので、 $z-\alpha$ が描く軌跡は、 $-\alpha$ を中心とする半径 $1$ の円である。
$w=(z-\alpha)^3$ が実軸の正の部分と共有点をもつことは、「 $w$ の偏角が、整数 $n$ を使って $2n\pi$ と書けることがある」ことと同値である。さらに、「 $z-\alpha$ の偏角が、整数 $n$ を使って $\dfrac{2n\pi}{3}$ と書けることがある」ことと同値である。
これは、さらに、円 $|z-\alpha|=1$ が、偏角が $0,\dfrac{2\pi}{3},\dfrac{4\pi}{3}$ の半直線のどれかと共有点をもつこと同値であることがわかる。
円 $|z-\alpha|=1$ が偏角 $0$ の半直線と共有点をもつ場合とは、 $-\alpha$ と偏角 $0$ の半直線との距離が $1$ 以下の場合のことであり、 $\alpha$ と偏角 $\pi$ の半直線との距離が $1$ 以下の場合のことだから、以下のような領域となる。

ただし、偏角が $0$ の半直線には原点は含まれないので、 $x\geqq 0$ における境界線上の点は含まない。
円 $|z-\alpha|=1$ が偏角 $\dfrac{2\pi}{3}$ の半直線と共有点をもつ場合とは、 $\alpha$ が偏角 $-\dfrac{2\pi}{3}$ の半直線との距離が $1$ 以下の場合のことだから、以下のような領域となる。

なお、偏角が $\dfrac{2\pi}{3}$ のときの領域は、偏角が $0$ のときの領域を、原点を中心に $120^{\circ}$ 回転した領域となる。
同様にすると、円 $|z-\alpha|=1$ が偏角 $\dfrac{4\pi}{3}$ の半直線と共有点をもつような $\alpha$ の領域は、さらに $120^{\circ}$ 回転した領域となる。なので、重ね合わせると、以下のようになる。

ここで、原点を中心とする半径 $1$ の円は3方向に延びる帯状の領域に含まれる。よって、円 $|z-\alpha|=1$ が、偏角が $0,\dfrac{2\pi}{3},\dfrac{4\pi}{3}$ の半直線のどれかと共有点をもつように $\alpha$ が動く領域は以下のようになる。

次に、$w=(z-\alpha)^3$ が実軸の負の部分と共有点をもつ場合を考える。ここまでと同様にすれば、「 $w$ の偏角が、整数 $n$ を使って $(2n+1)\pi$ と書けることがある」ことと同値であり、これは、さらに、円 $|z-\alpha|=1$ が、偏角が $\dfrac{\pi}{3},\pi,\dfrac{5\pi}{3}$ の半直線のどれかと共有点をもつこと同値である。よって、同様に考えれば、上の領域を原点を中心に $\dfrac{\pi}{3}$ だけ回転したものとなる。

$\mathrm{R}(\alpha)$ の動きうる範囲は、この2つの領域の両方に含まれる領域なので、以下のようになる。

6分割して、6個のひし形と考えると、面積は\[ 6\times\frac{2}{\sqrt{3}}\cdot 1=4\sqrt{3} \]となる。…(答)





